【オーストラリア看護留学】アシスタントナースを目指してTAFEで学習 ~授業編~
オーストラリアでアシスタントナースとして、海外の医療現場を体験してみたい方は増えています。
私はオーストラリアの専門学校TAFEでCertificate Ⅲ in Health Services Assistance (HSA)を専攻し、アシスタントナースになりました。
今回は、実際の授業内容について、日本と似ている点や異なる点なども含めてご紹介します!
授業は日本の看護学生の1年目をギュっとまとめた感じ
タイムテーブル(時間割)は週に2〜3日で、講義形式の座学とLabo Day(実技練習)に分かれています。半日だけの日や、グループに分かれて実技演習する時は、他のグループは自宅学習なんて日もありました。
看護学生あるあるですが、毎回課題の量が半端なく多いです。英語での課題のため、余計に時間がかかるので、学校にほとんど行かない週でもほとんど毎日勉強しっぱなしでした。
座学の内容ですが、最初はオーストラリアの看護制度や法律、アボリジニというオーストラリアの先住民族について学びました。ここで、アボリジニの人々が未だに社会、経済、教育などにおいて差別を受けている実態を知り、ちょっとショックでした。
その後は、解剖生理学に入ります。看護師経験者としてはお得意の分野のはずですが、身体の部位や内蔵、疾患名を全て英語で覚えるのがとても大変でした。先生の言っていることは理解出来るのですが、聞いただけではスペルがわからないので覚えられない…ということが何度もありました。
そこで、私がとった策は、講義で使用されるパワーポイントの資料を事前に見て、すべてノートに手書きするということ。特に長くて難しい単語は手が慣れるまで何度も何度も繰り返し書くこと。
お陰で何とか授業についていく事が出来た上に、医療英語のテストはネイティブの生徒を差し置いて1番になりました!実際のところ、医療英語はラテン語から由来する言葉が多いので、英語が母国語のネイティブでも知らない単語ばかりなんだそうです。
解剖生理学の後半の授業では、グループワークによるプレゼンテーションがありました。これもテストのうちの1つです。
10代のクラスメイトに混じって、図書館で打ち合わせや調べものをしたり、グーグルドライブやドキュメントを活用したりして、グループワークをこなしました。
私は機械が苦手なので、知っている限りの知識の提供に専念しました。他の若いメンバーが素晴らしいパワーポイント資料をつくってくれて、発表もなんとかこなし無事に合格をもらいました。
実技演習はテスト漬けの日々。実習に向けてみんな必死!
実技練習の教室には、日本の看護学校のように病院を模してベッドや点滴台、小灯台が並んでおり、数体のマネキンも置いてあります。
日本との違いは、マネキンの肌の色や髪の色が多種多様で、さすがは多文化の移民国家ですね。
定期的に実技のテストがあり、それに全て合格しないと病院や施設での実習に行けないルールになっています。また、そのテストに2回落ちると、その項目だけを次の年に受けないといけないのです。
そうなると実質、6ヶ月でのCertificate修了は困難という訳です。悲しいことに、実際にドロップアウト(単位を落とす)してしまったクラスメイトは、最終的に半数近くいました。
これは、実技テストだけが理由では無いですが、看護や介護の現実を知って辞めてしまう子が多かったのです。
実技テストの内容ですが、学生同士で患者役とアシスタントナース役になり、ロールプレイの中でアシスタントナース役の学生が課題をこなすといったものです。
まずは課題の書かれた用紙を読み、もう一枚の紙に計画を立てます。(看護師は行動計画が命ですもんね!)それを先生に渡して計画内容の確認をし、内容に問題がなければ実際のロールプレイに入ります。
ロールプレイの中で、患者の確認は正しくできているか、バイタルサインは正しく測れているか、安全に患者を移乗できるか、感染管理はできているか、正しく血糖値測定が出来ているか、正常値を理解しているかなどがテストされます。
これらも、看護師経験者であればお得意分野なので、テストには全て一発合格でした。しかし、ちょっとしたコミュニケーション上の表現がわからず、これもまたすごく苦労しました。
デモンストレーション中の先生や練習中のクラスメイトが言っている言葉をよく聞いて、それを真似して自分のものにするということを繰り返していました。
ちなみに、課題は実技練習で一通りデモンストレーションを見て学び、実際に練習して身につけるのでぶっつけ本番ではありませんよ!
実技演習で学んだ日本とオーストラリアの看護の違い
実技演習では、日本とオーストラリアの看護の違いを多く学びました。
その① 患者さんの自立度の表し方
カルテなどに記載されている、患者さんの自立度の表し方があります。これを元にして、シャワー介助の優先度を決めていきます。
「A」はアシスタント、×数字で何人のアシスタントが必要かを指します。
「I」は自立(independent)、アシスタント不要、Stand by、Superviseなどは見守り必要といった感じです。
その下のMobilityは、利用者さんが何を使ってどの位動けるのかを指します。介護施設では多くの利用者さんが歩行補助具を使用しているので、この用語がよく見られます。
Weight bareは体重負荷で、術後などの理由で体重がかけられるかどうかを指します。
これらを覚えておくと、利用者さんや患者さんに会う前にどの位動けるのか、何人介助が必要なのかを把握することができるため、安全に介助が出来ます。
その② ベッドメイキング
看護学生の実技演習の第一歩は、お馴染みのホスピタルコーナー。(三角コーナーとも呼ぶ?)クラスメイトが私のベッドメイキングを見て、「その三角どうやって作るの?教えて!」と言った感じで関わる様になり、そこから仲良くなれました。
ベッドメイキングの違いは、オーストラリアでは欧米のベッドスタイルのため、トップシーツというものがあります。ホテルのベッドメイキングと同様になり、もう1枚のシーツを、敷いたシーツ(Bottom Sheets)と布団の間に挟みます。日本でいうタオルケットの役割です。
クラスのみんなや先生からは、「タオルケットなんて聞いたことないわ!」と笑われてしまいました。(笑)タオルケットの方が寝心地が良いと思うのは私だけでしょうか!?
その③ No Lifting Policyの徹底
介護者に身体の負担を掛けないために、絶対に患者さんを持ち上げないというルールがあります。これについても筆記や実技で何度もテストされますし、実際に働き出してからも耳にタコができるほど言われます。
日本でもボディメカニクスやマニュアルハンドリングといって、身体に負担をかけない方法について学びましたが、オーストラリアでは、これがとことん徹底されているのが驚きでした。
ホイストという、患者さんを完全に持ち上げる機械などは、日本より断然ポピュラーに使われています。日本でも職業病として腰痛持ちの看護師や介護士は多いので、こういった機械やポリシーが浸透したら良いのにな…と思います。
その④ 血糖値の単位、測り方
日本では、血糖値の単位(Unit)は、mg/dlで表記されますが、オーストラリアではmmol/Lで表記します。イギリス、ニュージーランドなども同様だそうです。はい、正常値を含め覚え直しですね…。
測定方法の違いは、日本ではアルコール綿で血液を採取する部分(指先)を消毒していましたが、オーストラリア(少なくともTAFE)では、石鹸と流水で洗浄するのみでした。「日本ではアルコールで消毒するんだけど…。」と先生に言ったら、「アルコールの糖分の影響で正常な血糖値が測れないことがあるので、最近は使っていません。」とのこと。
なるほどですねー。日本の看護もそうなっているのでしょうか?
その⑤ 血圧の報告の仕方
記載の仕方や単位は同じで、例えば120/80と書きます(単位はmmHg)。口頭では、日本語の場合は例の血圧を「120の80ですね。」などと言いますが、英語では ”120 over 80.” と言います。
これもわざわざ教えてくれる訳ではないので、先生や予習用のデモンストレーション動画から盗んで得た知識です。
以上がTAFEでの授業内容になります。ちょっとした表現や言い回しを先生や他の学生から聞いたり真似したりしたと書きましたが、授業はそれらの英語表現がわかっている前提(ほとんどネイティブなので)で進められます。
誰もわざわざ時間をとって逐一教えてはくれません。難しい医療用語や疾患、身体の仕組みでなければ、先生も詳しく説明をしてくれませんので、慣れるまでは大変な日々でした。
絶対に迷子になりたくなかったので、それまで受け身だった授業態度が、自分から発言したり英語を真似たりなど能動的になれました。クラス全体が授業に能動的だった影響はかなり大きかったと思います。
キャンパスの中を紹介
せっかくなので最後に、私が学んでいたUltimoキャンパス内を少しだけご紹介します。
キャンパス内施設として、講義用施設の他にはカフェテリア、本屋、図書館、そしてなんとママさん学生用の託児所まで併設しているのです!カフェでゆっくりしながら、子供たちが遊んでいる様子を見るのも癒しの時間でした。
本屋では、教科書や勉強道具だけではなくユニフォーム、聴診器、看護ウォッチなども購入できます。
図書館は3階建になっており、とても広々とした環境です。コンピューターもたくさんあり、課題をこなすには問題ありませんでした。
学生であれば、課題に関わる印刷は無料で出来ました!私の出身大学は有料だったので、夢のようでした。
図書館内にはグループワークができる個室の貸し出しもしており、そこで周りを気にせず、ディスカッションをしたり、バイタルサイン測定の練習をしたりしました。
TAFEでの授業内容についてなんとなくイメージはできたでしょうか?
次回はいよいよ病院での実習について書きます!