【オーストラリア・ノーザンテリトリー】知っとこ!カカドゥ国立公園とアボリジナルカルチャー
ノーザンテリトリーの州都であるDarwinから、車で東に3時間ほど先にあるKakadu(カカドゥ)国立公園はアボリジナルの土地です。
20,000スクエアキロメーターの規模を誇るユネスコの複合遺産(文化的側面と環境的側面を有する)として世界遺産でもあります。
アボリジナル(Bininj/Mungguy)の人々はカカドゥの土地との精神的なつながりがあり、1万年以上世代を超えてこの土地に住み、土地の世話をしてきました。Kakaduに行くならば、アボリジナルの人々と土地のつながりも理解したいものです。
Kakaduとその土地に住む人々
Kakaduとは、20thのはじめにKakaduの北の土地で話されていたGagudju、アボリジナルの湿地帯の言葉からきます。GagudjuとLimilnganは現在ではあまり話されることはありませんが、子孫となる言語、Kunwinjku(北東部)、Gun-dijeihmi(中央部)、Jawoyn(南部)はいまだKakaduで使われています。
Kakaduに住むアボリジナルの人々は、Bininj(ビニンジ)/Mungguy(ムングイ)と呼ばれる人達です。Bininj/Mungguyとは、それぞれ英語のmanに近い意味を持ち、内容によってmanの意味の時もあれば、male、personまたaboriginal peopleの意味となります。
ちなみにBalandaとはaboriginalではない人を指します。Bininjは、KunwinjkuとGun-dijeihmiの言葉でMungguyはJawoynの言葉です。
Creation time
Creation timeはDreamtime としても知られています。アボリジナルの言葉、伝統的な儀式、土地とのつながりなど全ては文化的な責任として、Creation timeという時代から世代を越えて代々受け継がれてきました。
Nayuhyunggi(始まりの人)として知られている重要な先祖が、Creation timeに土地をまたいで旅をして、特徴的な地形・動植物・Bininj/Mungguyの人々が創造されたと信じられています。
The rainbow Serpent(虹色の大蛇)
虹色の大蛇は有名な創生主の一つです。彼女はKakaduの岩の通り道や水溜り、それから岩の表面を割って広い丘を作り、またすべての生き物のための生息地を形作ったとされます。
伝統的な図として描かれていたものがKakaduのナショナルパークのロゴにもなっています。この大蛇はKakaduのたくさんの一族と言葉の中で文化的に一貫性のある象徴で、この絵は、しばしばその力と土地の特徴を人々に思い起こさせます。
さらに彼女はBininj/Mungguyの管理人である者と、その次の世代に彼らの土地の世話をする責任を思い起こさせるといいます。
また、この大蛇は動植物の命のサイクルの一部であり、季節も変化させます。アボリジナルのたくさんの話と場所で大蛇は関連しており、特に「水」は彼女が旅をした場所がリンクしています。
彼女は未だ生きていると信じられていて、休んでいるのを決して邪魔をしてはいけないとされています。Kakaduだけでも、この大蛇はたくさんの名前があります。北部では彼女はGun-djeihmiと知られ、gagudjuではnama’rdeedjurr、さらに南のJawoynを話す人々はBolung、北西のLimilnganではlulydjudjanとして知られます。ちょっと混乱しますね。
その他にも様々なスタイルの重要な創造主がいて、Bula(Jawoyn Ancestor)、Namarrgon(Lightning Man)そしてWarramurrungundji(Earth Mother)などがあるそうです。
ロックアート
精霊ミミの魂は、はじめて創造主たちが岩に描いたものです。彼らはBininjのいくつかの人々にどうやって描くか、そして他のBininjは精霊ミミのアートを真似することで描くことを学びました。
彼らの旅の終わりに、いくつかの創造主たちは彼ら自身を岩の壁に絵として残し、djang(夢見る場)となりました。いくつかの絵はandjamun(神聖で危険なもの)で年長者の男性か女性のみ見ることができませんが、他のものはすべての人が見ることができます。
Bininj/Mungguyのアーティストたちは木の皮、紙、キャンバスや布に描き続けています。絵を書くことはアーティストたちを創造主たちとの通じさせる、力強い経験であるとされています。
Kakaduのロックアート(gunbim)は世界で最も長い歴史的な記録でもあり、50,00以上のアートが創造主と1,000年以上の時を越えて景観を伝えています。
実写的な動物の絵・レントゲンアート、それからヨーロッパ人と初めて出会った絵などがあります。
ペインティングをすることは絵そのものよりも重要なこととされているため、しばしばの古い絵は若い絵に覆われています。
Kakaduの景観と生息地
広大なkakaduには6つの地形があり、それぞれユニークな地形と生息地からなる沢山の動植物がいる。生物多様性を楽しむための6つの地形をご紹介します。
Savanna woodlands
Kakaduの80%が森林地帯。たいていがユーカリプスと背の高い草でパッとみるとまるで当たりは何もないように見えるけれども、Kakaduの中で最もたくさんの種類の動植物が生息する土地です。
Monsoon forests
熱帯雨林は小さく孤立した部分です。ここでは果物を食べる鳥とこうもりが植物の花粉と種を巻き散らす大事な役割を果たしています。
Southern hills and ridges
丘と100万年前の土壌の浸食によって壊れた山陵が南のkakaduに連なり、それらが他にはみられない存在感のある動植物の生物多様性を生む。
Stone country
砂の石の層崖が目立つエリア。北のKakduにあるArnhem landのエリアではその層壁は高さは30mから300mまであり、岩のシェルターとロックアート(UbirrとNourlangieのロックアートのエリアから離れたもの)を含む。いくつかのエリアでは層崖が1千年毎に1m侵食されているとのこと。
Tidal flats and coast
約500スクエアキロメーターの海岸と満ち引きのある川のエリア。マングローブとたくさんの魚、バラマンディを含む稚魚が育つ重要な場所です。
Kakaduのfloodplains(洪水時に氾濫する範囲)やbillabongs(流れのない水溜り)、川と海岸を含む湿地帯は国際的に重要な移動性の鳥たちの生息地です。
Floodplains and billabongs
季節によりドラマティックに変化する場所です。洪水の雨季のシーズンには、平野に100スクエアキロメーターに水が広がります。乾燥し始めると水鳥とクロコダイルがyellow waterなどの残った湿地帯に避難します。
Kakaduの6つのシーズン
大きく分けてざっくり雨季と乾季という2つの季節があって、雨季は観光ができません。アボリジナルの人々は、6つのほのかに移り変わる異なる季節を認識しています。
DRY Season(5月~10月半頃)
【Yagge】涼しい季節5~6月
湿地帯はハスの花で覆われます。乾燥した風とDarwin Woollyingbutt(ユーカリプスの一つ)がBininj/Mungguyの人々に新しい自然の成長のために森林を焼く時期を伝えます。
【Wurrgeng】ドライシーズンの初め6月~8月
大抵の入江や小川は洪水が止まり、大地はすぐに乾き出す。数週間後にはMagpie(鳥)が大量の食物で太って重くなり、小さくなるBillabongに群がります。
【Gurrung】暑いドライシーズン8月~10月
File snake(水へび)とクビナガガメの狩りの季節。モリツバメは雷雲を作られる時期に到着する。Gunumelengに戻る合図です。
WET Season(11月~4月半頃)
【Gunumeleng】モンスーンの季節の前10月~12月
風は走り、水鳥は水面に広がり始め、新たな成長が広がります。バラマンディは水穴から下流へ移動し、繁殖のために入江へ向かいます。
【Gudjewg】モンスーンの季節12月~3月
この時期の熱と湿度は植物と動物たちの成長を引き起こします。細長い草は2mを超えて成長して澄んだ緑は急ぐように森林に広がります。
【Banggerreng】実りの季節4月
クリアな空が広がる。広がった洪水は減少して、川の流れはクリアに流れ始めます。たくさんの木々が実をつけ、動物たちは子供たちの世話をします。
Kakaduにおける火の役割
ノーザンテリトリーを回っていると気付くのがあちこちから煙が出ており、たくさんの土地が真っ黒に燃えた痕跡があります。
実はこれは伝統的な土地の管理方法。アボリジナルの人々は先祖代々1万年以上、その土地を燃やしてきました。これは土地を管理し、整えるという文化的な責任であり、その責任は世代を超えて受け継げられてきました。
自然はアボリジナルに土地を燃やすタイミングを伝え、最低限の損害で土地に大きな利益を与えてきました。
実際にオーストラリアではブッシュファイヤーが近年深刻化しているとニュースになっていますが、アボリジナルの伝統的な土地のコントロールを否定していた場所で重大な損害が見られました。
長らく否定されてきたこの伝統的な土地のマネジメント方法でしたが、Balanda(アボリジナルではない人)は今ようやくアボリジナルの古い知識を気づき始め、Kakaduの世界遺産のリストで評価されています。
近年では、伝統的な土地を燃やす行為が戻ってきて、土地はその土地の植物と動物たちで豊かになりました。自然保護のマネジャーも、涼しい時期に起こるwildfireを防ぐため、土地を修復するため、そして生物多様性を促すために、部分的に土地を燃やす伝統的な方法を採用しています。
Kakaduのウラン鉱床
魅力あふれるKakaduですが、個人的に一つ覚えておきたいことがあります。それは天然資源のウランについてです。カカドゥ国立公園の地中にはウラン鉱床があり、世界遺産登録と同時期に掘削が始まりました。
掘削に伴う景観破壊、放射能汚染を危惧し、1998年には世界遺産委員会で遺産の資源利用問題として議題に取り上げられます。
Kakadu国立公園内に汚染水が流れ込んでいるとの指摘もあり、長きにわたる採掘の反対運動がありました。
2011年には大量にウランが眠っているというKoongarra地域がKakaduの世界遺産に組み入れられることが決まり、この土地は守られることになりました。ただし、Kakaduとの境界線での掘削は未だ続けられているとのことです。
オーストラリアのウラン鉱山会社にとって、福島原発を運営する東京電力も主要な顧客であったといいます。
福島での原発事故の際には、Kakaduから採掘されたウランで日本が大変な目にあってしまったとアボリジナルの人々は心を痛めました。
最後に
どうでしたか?聞き慣れないアボリジナルの言葉、スピリチュアルな土地とのつながり、私はとても興味深いと思いました。その世界をきちんと理解したいものです。オーストラリアに来れば、どの図書館にもアボリジナルに関する本は必ずありますし、映画もありますのでお時間があれば理解を深めましょう。
シンプルにKakaduを楽しむのはもちろん、自然破壊が過ぎてしまった現在こそ、今一度立ち止まって自然と共存する彼らの知恵を聞き、自然の理解を深めることで何か別の道が開けるのかも…。
Kakaduに来られた際は壮大な大地、たくさんの生物、そしてアボリジナルカルチャーを存分に楽しんでくださいね。
https://parksaustralia.gov.au/kakadu/
https://en.wikipedia.org/wiki/Kakadu_National_Park
https://en.wikipedia.org/wiki/Uranium_mining_in_Kakadu_National_Park