【オーストラリア】デモに参加するってどんな感じ? ~パレスチナに自由を!~
こんにちはまゆみです。
みなさんはパレスチナのガザ地区でのジェノサイド(Genocide: 大量虐殺)が進行中であることをご存じでしょうか?ニュースで見たことがある方も、積極的に情報を収集されている方もいるかと思います。
2023年10月7日、イスラエルへのハマスの攻撃を発端として始まったこの惨事ですが、(実際にはこの戦争は75年間も続いている。)ガザに住む3万2千人以上のパレスチナ人が爆撃・人為的な飢えなどで亡くなっています。
過激な例えをするならば、オーストラリアに住む日本人の約3人に一人はこの半年で亡くなっている。
しかも、それが大きく取りあげられることはないと言えば、恐ろしさが伝わるでしょうか?(在豪邦人数:99,380人 外務省海外在留邦人数調査統計 令和6年3月5日データより)
私は、今オーストラリアはタスマニアの州都、ホバートに住んでいます。
パレスチナのガザで起こっているジェノサイドに反対する意志を表明するため、ホバートで行われるデモに可能な限り参加しています。
世界各地で行われているデモの規模
日本では消極的な報道であまり話題になりませんが、世界各地で数千人、数万人規模の抗議デモが続いています。以下に例を挙げます。
アフリカ
・イエメン首都サヌア 数百万人(2023年12月01日)【国際通信イランプレス】
・南アフリカ、ケープタウン 数万人以上(2023年11月11日)【Africanews.】
・モロッコ 数千人(2023年12月24日) 【アルジャジーラ】
・ナイジェリア 5万人(2023年10月21日)【Africanews.】
その他…アルジェリア、ガーナ、ケニア、セネガル、チュニジア
アジア
・インド 20万人(2023年10月26日)【アルジャジーラ】
・インドネシア、ジャカルタ 数千人(2024年1月13日)【Middle East Eye】
・日本、東京 1,500人(2023年11月19日)【朝日新聞】
※東京だけでなく各地方都市にてデモが行われています。
・フィリピン、ミンダナオ 1万2千人~2万5千人(2023年10月10日)【Rappler】
その他…アフガニスタン、バングラディシュ、マレーシア、パキスタン、韓国、シンガポール、スリランカ
ヨーロッパ
・イギリス、ロンドン 約7万人(2023年10月28日)【ロイター通信】
・ロンドン 約30万人~80万人(2023年11月11日)【ロイター通信】
・フランス、パリ 約十万人(2023年11月12日)【ロイター通信】
・バルギー、ブリュッセル 約2万人(2023年11月11日)【ロイター通信】
・オランダ、アムステルダム 約1万5千人(2023年10月15日)【アルジャジーラ】
その他…アルバニア、オーストリア、デンマーク、ドイツ、アイルランド、イタリア、スウェーデン、ノルウェー、ポーランド、ロシア、スペイン、ウクライナ
中東
・トルコ、イスタンブール 数万人(2023年10月28日)【AP通信】
・エルドアン大統領が大規模デモで演説。(2023年10月28日)【AP通信】
・ジョーダン 数千人(2024年3月27日)【Middle East Eye】
その他…エジプト、イラン、イラク、レバノン、シリア、カタール、イエメン
北アメリカ
・カナダ、オタワ 約2万人(2023年10月28日)【CBC】
・アメリカ、ニューヨーク 少なくとも3000人(2023年10月28日)【ABC7】
・ニューヨークのグランド・セントラル駅 ユダヤ人団体「平和へのユダヤ人の声(Jewish Voice for Peace)」 が数百人規模のデモ(2023年10月27日)【AP通信】
・サンフランシスコ 約1万5000人(2023年10月28日)【サンフランシスコ・クロニクル】
・ロサンゼルス 数千人規模(2023年10月28日)、【ロサンゼルス・タイムズ】
・ワシントン 約2万人~40万人(2024年1月13日)【The Guardian】
その他…キューバ、メキシコ
南アメリカ
・ウルグアイ、約3千人(2023年10月11日)【NBC news】
その他…アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ベネズエラ
オセアニア
・オーストラリア、シドニーでは約5万人(2023年10月28日)【シドニー・モーニング・ヘラルド】
その他…ニュージーランド、クックアイランズ
国際的な非難、プレッシャーがイスラエルに向けられていますが、残念ながらジェノサイドは175日以上続いています。
皮肉のように言われているのは、「ガザの人々は二つの死に方ができる。それは爆弾で死ぬか飢えで死ぬかだ。」とのこと。
世界中で最も人口密度の高いエリアと言われるガザ。封鎖された空間に閉じ込められ、水と食糧は止められ、攻撃は病院であろうと難民キャンプであろうとどこにでも爆弾が落とされる異常な状況です。
そもそもデモってなんだ?
街中を歩いているとたまに見ることがあるマイクを使って演説をしている光景で、「〇〇を認めない!〇〇をやめろー!」などと強い主張をしていて、なんだか怖い…?
日本では大規模なデモが起こりにくいですが、海外では大きなものでは数万人から百万人の人々が参加して公の場で集団にて自分達の意思や主張を示しています。
世界標準の考え方では、デモを行うことは民主主義の国では当たり前の行為です。デモを行うことで得られるメリットは、以下の通り。
“デモ活動(デモかつどう、英語: demonstration, street protest)は、ある特定の意思・主張をもった人々が集まり、集団でその意思・主張を他に示す行為である。「デモ」とはデモンストレーションの略であり、示威運動、示威行為、あるいは単にデモとも呼ばれる。その活動内容によってデモ行進、デモ集会ともいう”(Wikipedia より抜粋)
「デモ」以外の言い方もある
そういえば、日本ではデモ(Demonstration: 抗議運動・行進)という言葉を使われますが、実際にオーストラリアでデモに参加した際や、英語の情報を読んでいると他の表現が使われていることに気付きます。
・ソリダリティ(Solidarity: 連帯、結束、団結)
目的や興味、共感のために一つになる。という意味。個人的にこの言葉からは優しさがイメージできます。例えば、以下のような感じです。
その他にもBond、Union、Togetherなどの言葉がイメージできます。SolidarityはSolid(硬い、一つにまとまった)と言う言葉からできているようです。イメージしやすくて覚えやすいですね。
・プロテスト(Protest: 抗議、不満、主張)
Solidarityは寄り添うように同じ方向を向かっているイメージでしたが、こちらは何か対象に向かってネガティブな感情があります。
・マーチ(March: 進行する)
こちらは、Walking around with some reason.(何かの理由とともに歩いてまわる)こと。世界中の主要都市でパレスチナのためのデモが次々と行われています。
数万人の人々が集まった英国のデモはNational March for Palestine in London.、アメリカのワシントンでのデモはMarch on Washington for Gazaと表記されています。
・ラリー(Rally: 集結する、集会)
さまざまな意味があげられますが、基本的にはGethering、グループの人々について。プロテストは一人でできるけどラリーは一人でできないイメージ。
このパレスチナへの連帯については、プロテストとかなり類義語、a political mass meeting(政治的な大きな集会)と捉えて良いでしょう。
ちなみにパレスチナ(Palestina)、英語ではパレスタインという発音になります。
どうやってデモに参加した?
デモに参加するのに事前の申し込みなどは必要ありません。主催者は誰なのか、集合場所や時間を確認し、何かわからないことがあれば主催者に直接確認します。
私の場合はデモの予告ポスターをホバート市内で見つけました。そこから主催者のインスタグラムのアカウントにて、日時・場所の情報を得ました。あとは自分たちでプラカードを作り、当日デモに参加しました。
デモの情報はフライヤー、イベントカード、口コミ、Twitter(X)、Facebook、InstagramなどのSNS、イベント告知サイトなどから知ることができます。持ち物なども特に必要ないと思いますが、各デモの詳細を確認すると良いかと思います。
参加するには何かルールはある?
まずは参加するデモと自分の主張が合っているかは確認しておきましょう。また、デモは民主的・平和的に行われるものなので、暴力や暴言に訴えないということはとても大事です。威圧的な態度や攻撃的な言動は有効な手段ではありません。
そのデモ自体に不信感・嫌悪感が起こり、逆効果を生む可能性もあります。また、ポイ捨てしないなど最低限のマナーを守りましょう。基本的なマナーを守れないこともデモ全体への悪いイメージに繋がります。
そして様々なバックグラウンドを持った人々が同じ主張のもとに参加します。国籍・宗教・見た目・ジェンダーなどで参加者同士の差別はせず、同じ目的に向かって、優しさを持って活動したいものですね。
また数時間に渡って行われることが通常でしょう。水分補給も忘れずに、立ち続けるのが疲れたら座って休む…など、無理はしないで参加されるといいでしょう。
私も時間が合わなければ遅れて参加する、喉が渇けばコールの途中でも水分補給を優先させています。基本的にいつ来ていつ帰ってもいいと思います。
デモの様子はSNSに上げることが多いですが、プライバシーに配慮することも必要でしょう。
参加してどうだった?
私が参加したのはTPAN(Tasmanian Palestine Advocacy Network)が毎週土曜日に主催するプロテスト。観光客で賑わう港湾施設の目の前、車通りも多い道の両脇に立ち、プラカードを持ってコールします。力強いドラム、パレスチナの旗がゆらゆらと大きく揺れます。
プラカードを持ち、声を上げ始めると、「なんでこんな当たり前のことを叫ぶ必要があるのか」、「どうして人の命がこんなにも軽く扱われるのか」と、止めたいのに止められない現実に悔しくて涙が出てきます。
“HONK for GAZA”(ガザのためにクラクションを鳴らして!)というサインもあり、たまたまプロテストの前を車で通った人たちも気軽に意思表示ができます。またその力強いクラクションの音がプロテストに参加する人々の士気も上げていて、良い効果を与えています。
目の前を通る車も巻き込むデモのスタイルで、興味深かったのは車に乗っている人たちの反応です。
好意的に受け止め力強くクラクションを鳴らす、手を振ったり、ガッツポーズをしたりする人。
誰かがクラクションを鳴らし始めると、それにつられてクラクションを鳴らし始める人、できるだけ視界に私たちが見えないようにする人。少数ではありますが、車の窓を開けて中指を立てたり、罵ったり、アグレッシブな運転や破裂音を立てて威嚇をする人もいました。
どれだけの人が強く共感を示し、問題を見て見ぬふりをしたい人がいるのか、それとも馬鹿げたことだと思う人がいるのか…。
世界の片隅、タスマニアの一部での出来事ですが、それでもそのまま社会の反応を見ているようでした。目が合ったドライバーに笑って手を振ると、手を振り返してくれる人もいます。
私たちが積極的に動けば、自分からはアクションを起こせない人も、背中を押されたようにポジティブな方向へ動いてくれるというのも希望が持てる反応でしょう。
さて、メインテントエリアではZINEやバッチ、Tシャツなどが売られています。その他フリーのパンフレット、ステッカーの配布、サンスクリーンや水の補給、プラカードの貸出が行われています。
プロテストの最後には、メインベースに集まって見識のある人によるスピーチが毎回15分ほど行われます。実際にガザで働いていた人、政治家、アーティスト、パレスチナ人としてのルーツがある人、ヴィーガン、LGBTQ…異なる視点から語られる思いや体験談など興味深いものもあります。
実生活の中で私は、パレスチナで起こっている悲惨なジェノサイドについて、職場の同僚や友人となかなか話せる機会がありません。そのため、まるで一人で悩んでいるような気分になり、また事実を知りながら、何もできないという罪悪感や無力感を抱くことがありました。ですが、デモに参加することで「一人ではない」ということがはっきりします。
もちろん世界の片隅で起きている小さなアクションの一つに過ぎません。それでも集団を作り上げる「一人」として参加して、この現状を変えるために行動を起こしている…変えてみせる!と最終的にはポジティブに思えました。悲観的な気持ちから前向きな気持ちになれること、シンプルなことですが継続的な活動を続けるには大事なことだと思います。
プラカードに想いを込める
ついつい溢れる気持ちをプラカードに込めたくなりますが、実際目に止まるのは大きな板に大きな文字、シンプルな言葉や強いメッセージでしょう。遠くから見ている人や素通りしていく人にもスッと入りやすい情報は、世の中にその問題を明らかにするという点で有効です。
主催者側が予備のプラカードを用意してくれていることもあるので、用意が難しい方は使わせてもらうといいでしょう。
以下はパレスチナのためのデモでよく目に付いた言葉です。
その他、シンプルにスイカのマーク(長年パレスチナのシンボルとして使用されている)を掲げている人、パレスチナのフラッグカラーやスイカデザインのアクセサリーを身にまとう人、Kafiyyeh(カフィーヤ)と呼ばれるパレスチナのスカーフを巻いている人もたくさんいました。
上の写真は私が2024年3月2日のデモに用意したものです。同年の2月29日、小麦粉などの援助物質を待っていた市民をイスラエル軍が無差別銃撃を行いました。
死者は150人、負傷者は1,000人以上に上り、SNSには#Flourmasacre(小麦粉大虐殺)というハッシュタグとともに倒れた人と血で赤く染まった小麦粉の袋、戦車に踏まれてペシャンコになった人の画像などショッキングな映像が広がりました。
その週末のデモにて、その残忍さと姑息さを非難するために『血が飛び散った食糧支援ボックス』を自作してデモに参加したのです。
デモ活動に意味がないという人へ
「そんなことしたって意味がない」「無駄」「偽善」と言う言葉をSNS上で見かけます。
本当にそうなのでしょうか?意味がないと言い切ってしまうことは、考えること・行動することを完全に放棄しています。デモのメリットをもう一度確認しましょう。
残念ながら力を持った人は、自分達の都合が良いように世界を動かそうとする傾向にあります。だから私たちはその様子を注意深く観察し、問題があれば声を上げ、修正する必要があるのです。
例えるならば、包丁の切れ味が悪くなるから包丁を研いでスムーズにする。金属パーツの滑りが悪くなればオイルを足す。デモは、社会のためのメンテナンスのように思います。
さて、実際にデモなどを通して日本で大きく効果があった出来事を紹介します。
2024年2月、伊藤忠商事の子会社がイスラエルの軍事企業との協力を打ち切りました。日本の有名企業である伊藤忠に対して、「パレスチナを生きる人々を想う学生若者有志の会」が東京都内で学生抗議デモを継続的に行いました。
その他にも、10月から署名を集め続け、関連会社での消費をボイコットする(BDS運動)といった活動もされていましたが、それも「意味のないもの」と切り捨てなかった市民の勝利です。
以下、Change.orgから詳細が確認できますのでお時間がある方は是非以下のペティションのページを読んでみてください。
また、2023年の10月から、毎日一人で東京にてスタンディングデモを続けている日本人が海外で話題になっています。
彼はInstagram上で8万人以上のフォロワーを獲得し、彼のたった一人の活動はたくさんの支持を集めることに成功しました。
また世の中に問題を突きつけると言う点でも、継続的な活動で多くの行き交う人々にメッセージを届けられたはずです。
私は諦められない
今パレスチナで起きていることから目を背けること、週一回のデモに参加しないことは、パレスチナ人が虐殺されること、女性たちがレイプされ、子供たちが苦しみ、民族浄化されていくことを良しと認めることになる。
今パレスチナ人の虐殺を世界が見て見ぬふりをしてしまえば、それはまた時間と場所を変えてどこででも起こる可能性があります。
それに将来、「なぜこんな酷いことをみんな無視していたの?」なんて聞かれて、恥ずかしい答えなんてできないじゃないですか。
175日以上というとても長い長い日数が経っています。世界中が出来ることを続けましょうよ。「私たちは見ているぞ、許さないぞ。」と。使い古された言葉のようですが、世界を変えるために一人一人の力を合わせる必要があるんです。
諦めたら無力です。皆が諦めなければ、変わることもあるんです。同時に「世界は、私たちは、あなたたちを見捨てはしない。」という気持ちをパレスチナの人々に向けて送り続けます。どうかこの記事がパレスチナを支える一つの記事になりますように。
Free Palestina!!