【2024年】オーストラリアの学生ビザ変更点まとめ
コロナショックで留学業界は大きく激変しました。
そのため、コロナの前と後では各国のビザや移民政策が大きく変わっている事も珍しくありません。
その中でも、特に移民局の方針転換、動きが大きかったのがオーストラリアの学生ビザ制度になります。
そこで、このコラムではオーストラリアの学生ビザがどのように変わったのか、以前と何が違うのかというのを解説していきます!
・2024年5月10日から必要な資金条件が変更(24,505ドル→29,710ドル)
オーストラリア移民局の動き
まずオーストラリア移民局の大きな動きを見ていきましょう。
オーストラリア政府は「2023年10月から学生ビザに関してのルールを厳しくします!」という発表を行い、実際にESOS(Education Services for Overseas Students)法の改定を行いました。
※ESOS法とは「留学生のための教育サービス法」の事で、オーストラリアが国や政府としてどのように留学生を受け入れるのかという一番重要な法律になっています。
そのESOS法の改定で大きく変わったのが下記の6点になります。
ひとつひとつ見ていきましょう!
1)資金証明の金額が増額
→ 最初に学生ビザ申請時に留学生が移民局へ提出する残高証明書の金額がアップしました。
留学生は学生ビザ申請時に資金証明
・12ヶ月の生活費:29,710ドル/年
・旅費:2,000ドル(日本からの申請、1人あたり)
・学費:1年分(1年未満の場合には全額)
→ 31,710ドル+学費(1年以上の場合には1年分、1年未満の場合には学費全額)が必要な金額です。ただし、上記はあくまで最低金額になりますので、できるだけ多めの残高証明書が理想です。
移民局の本音を分かりやすくするとこんな感じです。
ちなみに、日本国籍の場合には学生ビザ申請時に上記資金証明の提出は義務ではなく、あくまで任意での提出となっています。
しかし、2024年に入って一般的にビザ申請に非常に強い日本人のパスポートであってもビザ却下が相次いでいるため、ルール上は任意ではありますが実質はほぼ義務として考えて頂く方が良いでしょう。
2)学生ビザが取得できる教育機関の登録条件が厳格化
次は、学校ビザが取得できる教育機関の登録条件が厳しくなったという点です。
実は、オーストラリアでは海外からの留学生を受け入れるためには、どんな学校でもOKというわけではなく、「政府から認められた学校」じゃないといけません。
例えば「私は、個人経営の小さな料理教室で留学したい。だから、その料理教室での留学生ビザを出してください!」といっても移民局は学生ビザを出してくれないんですね。
オーストラリア政府が定めるルールや基準に則った学校だけが、学生ビザで通える教育機関となるのです。
そして、今回の改定では政府が教育機関を認める時のルールや基準が厳しくなったという事になります。
移民局の本音を分かりやすくするとこんな感じです。
3)学校(教育機関)側の遵守事項を強化
3つ目は、オーストラリア政府に認められた後に学校(教育機関)が守るルールが厳しくなったという点です。
政府が「あなたの学校は、学生ビザ所持の留学生を受け入れても良いよ」と一度認められた後でも、実は学校側はその登録を維持するため守らなければいけないルールがたくさんあるのです。
また、既に登録されている学校に対しても移民局側では同一な対応を取るのではなく、3段階で評価(1が優良、2が普通、3が不良)をしています。(当然3のような評価がされている教育機関での学生ビザ申請は移民局からも厳しいチェックが入ります。)
そして、移民局の本音を分かりやすくするとこんな感じです。
4)教育機関が留学代理店を選ぶように!
4つ目は、教育機関(学校側)が留学代理店(留学エージェント)を選べるような仕組みが導入されたという点です。
具体的には、学校側がその留学代理店を使った留学生が「全体の何割くらいがきちんと卒業できているのか」、「途中で退学をしたケースはどれくらいか」、「どれくらいの確率で学生ビザを確率で取得できているのか」」というデータにアクセスができるようになりました。
移民局の本音を解説するとこんな感じになります。
5)必要書類(GTE)の廃止
5つ目は、これまで学生ビザ申請時に必要だったGTE(Genuine Temporary Entrant)という書類の廃止です。
GTE(Genuine Temporary Entrant)とは、簡単に言うと「今回申請している学生ビザは、あくまで一時的なオーストラリア滞在ですよ。学習(卒業)したら、オーストラリアからちゃんと出国しますよ」という証明の事です。
Genuine(正真正銘の)、Temporary Entrant(一時的な入国者です)という意味ですね。
これまでは学生ビザ申請時に「学校を卒業したらオーストラリアからちゃんと出国しますよ」という内容のGTE Letterを提出していたのですが、2024年3月からはGST(Genuine Student Test)という書類へと変更になりました。
こちらはGenuine(正真正銘の)、Student(留学生です)という意味になり、学生ビザ申請時には「オーストラリアに渡航する目的は就労や観光ではなく留学です」ということを証明する書類(GS Letter)の提出が必要という形になってます。
具体的には、GS Letterには下記のような内容をしっかり書いて提出をします。
ちなみに、GS Letterにどんなに良い事が書いてあったとしても、GS Letterに付随して記載内容にして提出できる書類がないと移民局の方でも印象が逆に悪くなってしまうため注意しましょう。
これは「文章であればどれだけでも良い事を書く事は誰にでもできるため」です。
文章に書いた事をきちんと裏付ける証拠(書類)も合わせて提出する事が重要となりますので、これまで取得した学歴の卒業証明書や修了証明書、成績証明書、日本やオーストラリアでの職歴情報、履歴書などもサブ資料としてしっかり準備をしていきましょう。
6)ビザ申請時の必要な英語力が高くなった
そして、最後は学生ビザ申請時の必要な英語力が高くなったという部分です。
これまで専門学校や大学へ進学予定の人は、語学学校とセットであればどんな英語力であってもまとめての学生ビザ申請(パッケージ申請)ができていました。
しかし、今回の改定では専門学校や大学へ進学予定の人は最低IELTS 6.0のスコアを持っていないとまとめての学生ビザ(パッケージ申請)が申請できなくなっています。
ただし、下記のようなケースであれば「語学学校+専門学校(大学)」でのパッケージビザ申請が可能です。
そのため、もし上記のようなケース以外で専門学校や大学へ通いたいという場合には、「語学学校で1回学生ビザ申請→進学先で2回目の学生ビザ申請」と2回に分けて申請をして行く形になります。
オーストラリア移民局のこれまでは?
上記6つの変更点は実はオーストラリアの留学業界ではものすごく大きな制度変更となっています。
なぜなら、今回の6つの制度変更をそのままひっくり返すと…「今まではどうだったのか?」という状況も見えてくるからです。(笑)
> 今までのオーストラリア移民局の態度
どうでしょうか?これまでオーストラリア政府は上記のように結構緩いルールや対応を取っていたんですね。
ではなぜ「1人でも多くの留学生がオーストラリアに来てくれればオーストラリア経済が潤うから、ぜひどんどん外国から留学生が来て欲しい!」という考えが、急にガラッと変わったのでしょうか?
なぜオーストラリア政府は方針転換をした?
一番大きな転換点はやはりコロナウイルスの影響です。
2020年コロナウイルスによる国境閉鎖で、オーストラリアの基幹産業である留学産業は多大な影響を受け、学校に在籍する留学生がまず大きく減少しました。
また、留学生だけではなく国境閉鎖でワーキングホリデーの人数も激減しました。そしてしばらくするとコロナウイルスの影響が少なくなります。
オーストラリアも他国と同じように国境を開放し冷え切った国内の経済活動を盛り上げようとしたのですが…オーストラリア国内はどこも人手不足で思うように経済が回りません!
なぜなら、これまで国内でたくさん働いていた各国の留学生&ワーキングホリデーメーカーが激減して、国内の働き手が非常に少なくなっていたからです。
そこで、オーストラリア政府は「国内経済を復活させるために留学生、ワーキングホリデーのような外国人(移民)」を増やそう!と移民を増やすような舵取りをします。
具体的には、人手不足を解消すべく「学生ビザでもフルタイムで仕事が出来る」、「滞在が仕事目的の人に臨時で長期滞在ができるコロナビザ制度の新設」という対策です。
そして、その成果として実際に2023年にはオーストラリアで史上最高の移民数を記録し、さらに2024年に入っても2023年をさらに上回る数の移民数を記録してオーストラリア国内の外国人(移民数)はかつてないほど増加しました。
しかし、一方で別の問題が出てきます。
オーストラリア国内へ流入する外国人があまりに多くなりすぎて…もともと住んでいるオーストラリア人が住まいで困る事態が出てきたのです。
あまりに多くの外国人(移民数)がオーストラリア国内に溢れ、住まいの空き物件が減少してしまいました。
この空き物件の減少によって家賃が高騰し、現地オーストラリア人も困ってしまったという流れです。
オーストラリア現地人が政府に「外国人(移民、留学生、ワーキングホリデー)があまりに多すぎるから住居の高騰なんかが起こるんだ!」とものすごく怒ってしまいました。
こうした流れや背景があったため、オーストラリア政府は「留学生や外国人の受け入れをこれまでよりも厳しくして、数を押さえよう」という方針に切り替わり、今回のルール変更が出てきたんですね。
ビザ取り学校の規制
基本的に今回のルール改定においては、上記のような住居問題に対するオーストラリア国民の声が一番大きいと考えられます。
実はこれに加えて「アフターコロナではオーストラリア政府が望むような留学状況となっていなかった」という所も後押しが大きかったりします。
具体的には下記のような状況です。
実は、オーストラリアには非公式に「ビザ取り学校」と呼ばれる学校があり、このビザ取り学校とはいわゆる「授業日数が少なかったり、課題の提出がなかったり、またあっても査定が緩かったり、全く出席しなくても良い学校などのこと」を指します。
オーストラリアの学生ビザはアメリカなどと異なり、現地での就労(アルバイト)が認められています。
そのため「ビザ取り学校で学生ビザ取得」→「授業日数が少ないので、空き時間にガンガンアルバイトなどをしながら出稼ぎ状態でオーストラリアに滞在している」という外国人が特にアフターコロナでものすごく増えてしまいました。
しかし、こうした形はオーストラリア政府の望むものではありませんので…
「資金証明が出せないような出稼ぎ目的の人は学生ビザを出さないようにしよう」
「ビザ取り学校として運営しているような学校は極力減らしていこう」
「出席率が悪い、中退が多いような留学代理店が学校と付き合うのをできるだけ阻止しよう」
という事で今回のルール変更が行われているんですね。
また、今後はエージェントや学校側でも申し込みをする生徒さんの過去の経歴を事前確認して申し込みを受け入れるかどうか判断する傾向が見られるかと思います。
両者とも、結果的にビザ申請が却下される可能性が高い生徒さんの対応をするのはとてもリスクが高くなると捉えるからです。
実際に大学によっては上記のような該当留学生の申し込みをキャンセルするケースも発生しています。
結果的に留学生側も真面目に勉強する目的でなければならない状況になりますので、自然に不真面目な学生さんは今後減っていくでしょう。
ちなみに、GTE(一時滞在の証明)から、GST(留学生の証明テスト)に移行をしたのは「オーストラリアで留学をしてオーストラリアの国に役立つ知識や技術を持っている人は永住権を申請してオーストラリアに残っても良いよ」という意味でもあります。
これまでは「学校を卒業したらオーストラリアから出て行ってね(GTE)」という対応でした。
しかし、優秀な人材はオーストラリアも国としてぜひ受け入れたいため「この人がもし学校卒業後にオーストラリアに永住する事になったら国としてプラスになるかどうか」というのをきっとしっかり見極めたいのだと思われます。
ただ、このGST制度になったからといって、オーストラリア永住の道が簡単になったわけではありませんので、永住権を出すかどうかというのは政府もこれまで通り慎重な審査を行っています。
新制度で学生ビザを申請する時に注意すべき点
そして、最後にこの新しい新制度で学生ビザを申請する時に注意する点もまとめてみたいと思います。
1)しっかりとしたGST(Genuine Student Test)の準備
→ まず何よりも重要なのが、GST(Genuine Student Test)です。
前述したようにオーストラリア移民局は「オーストラリアという国にとってプラスになるような真面目な留学生だけを受け入れたい」と思っています。
そのため、GS Letterでは「オーストラリアという面接官にしっかりアピールできるような内容の記載」が理想です。
オーストラリアという面接官(移民局)にしっかり納得してもらえるように、ご自身の留学国やコース選びの理由、自分のキャリアプランなどをしっかり記載していきましょう。
この作文の内容次第であなたのビザ結果が大きく左右されますので、アドバイスやサポートを受けながら準備していけると良いですね。
2)規定金額以上のしっかりとした残高証明
→ 次に重要なのが、オーストラリアに限らず海外の移民局が一番気にするのが残高証明の金額になります。
どれだけ他の申請内容が良くても、もし残高証明書がギリギリとなれば、移民局の方でも「本当にこの人は留学生活が遅れるのかな…」と心配されます。
資金面での不十分や不足はビザ発給の上で大きなマイナス評価となりますので、規定金額以上の余裕を持った残高証明書を準備していきましょう。
3)事前に高い英語力を付けておく
→ 専門学校や大学進学時には求められる英語力が高くなりましたので、特に進学目的の方は英語力の面でもしっかり準備をしていきましょう!
海外で生活する際に英語力はどれだけあっても邪魔になる事はありませんので、日本でコツコツ勉強するプラン、2ヵ国留学などで集中的に英語力を身につけるプランも有効です。
とにかく短期集中で費用もできるだけ押さえて2ヵ国留学したいという方には、以下の記事もオススメです。
上記3点の書類準備や作成、英語力を身につけるプランについても留学ドットコムではしっかりアドバイス、サポートをしておりますのでご安心ください!
2024年7月の改定について
オーストラリアの会計年度は毎年7月ですので、7月1日から新年度として国のルールが変わる事が多いです。(日本も「4月1日の新年度から〇〇が変わります!」というのが多いのと同じですね)
そして、2024年7月1日には下記の2つのルール改定がありました。
1)現地での観光→学生のビザ切り替え禁止
これまでは「観光ビザでオーストラリアに入国してから、オーストラリア現地で学生ビザに切り替えよう!」という事ができていたのですが、そうした事ができなくなりました。
オーストラリア移民局としては「とりあえずオーストラリアに入国してから学生ビザに切り替えるかどうか考えるような計画性がない行動はしないでください」、「学生ビザを申請するなら国外でしっかり準備をしてから申請して、入国してください」という事なんだと思います。
また、正確には現地でのビザ切り替え(visa hopping=ビザホッピング)で規制されるのは観光ビザだけではなく、オーストラリア現地の大学や専門学校を卒業した人が貰える卒業生ビザ(Temporary Graduate Visa)も含まれています。
オーストラリア移民局としては「あなたは大学(専門学校)を卒業して、十分な滞在期間がある卒業生ビザ(Temporary Graduate Visa)も受け取ったんだから、オーストラリア現地でビザを切り替えてさらに別の学校に通うような事はしないでね。もし再度学校に通いたいならいったん帰国してから学生ビザ申請してね」という事なんだと思います。
2)申請費用の値上げ
これまで学生ビザの申請費用はこれまで710ドルでしたが、今回の値上げ幅は非常に大きく、申請費用はなんと2倍以上の1,600ドルとなっています。
この値上げで学生ビザの申請ハードルがさらに上がる事になりましたので、オーストラリア移民局としては「学生ビザ申請する人は極力減らしたい」という事なんだと思います。
ちなみに、オーストラリア国内でビザを2回以上申請する場合には、Subsequent temporary application Charge(STAC)という費用(700ドル)が追加で掛かります。
※Subsequent Temporary Application Chargeとは、日本語に直すと「以前申請したビザに続いて追加でビザを申請する時の費用」という感じです。
例えば、もしセカンドワーキングホリデービザを所持している人が現地で学生ビザを申請したいという場合にはこんな形で700ドルの追加費用が発生します。
1.日本でワーキングホリデービザを申請(カウントなし)
2.オーストラリア国内でセカンドワーキングホリデービザ申請(国内で1回目)
3.オーストラリア国内で学生ビザを申請(国内で2回目なので700ドル必要)
上記の改定は「オーストラリア移民局が学生ビザのハードルをさらに上げて、学生ビザの発給数や留学生をできるだけ減らしたい」という流れになります。
今後はオーストラリアへの学生ビザ留学を考えている方はさらにしっかりとした準備が必要になりそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
記事内容を見てみると、オーストラリア政府のルール変更の背景やオーストラリア政府の希望がなんとなく見えたのかな?と思います。
オーストラリア政府が現在の方針を買えない限りは、少なくとも数年はおそらくこのまま学生ビザのハードルが高い状況は続く事でしょう。
2024年の改定で、これまでできていた「ビザ取り学校で、滞在期間を延ばしながらだましだましオーストラリアに滞在する」、「ビザ取り学校に通いながらアルバイトメインでオーストラリアに滞在する」という事は実質不可能となりました。
もしあなたがオーストラリアでの第一目的が就労の場合には、学生ビザではなくワーキングホリデービザを上手に利用していきましょう!
また、学生ビザを検討されている方は、今後は安くて就学時間が短いビザ取り学校を選ぶのではなく、日本帰国後のキャリアアップやオーストラリア滞在に繋がる学校選びをしていくのが重要です。
オーストラリア側で求められている人材での勉強や留学プランがあなたの将来へと繋がりますので、以下のような留学プランも一度検討してみましょう。