タイ料理レストランでのアルバイト体験と帰国後の交流
前回は、「ワーキングホリデーで現地の就職活動をするための3ステップ」を紹介させて頂きました。アルバイト探しで大事なことは、積極的な行動はもちろんですが、「運」や「タイミング」も大きくかかわってきます。
その「運」を引き寄せられるかどうかは、積極的に情報収集する自らの姿勢によっても変わってきます。自分が「コレだ!」と思ったやり方だけを頑なに信じることが正解ではありません。複数の媒体から情報収集をしていたことによって、私が理想としていたタイ料理レストランの仕事を見つけることができました。
今回のコラムでは、実際のアルバイトした時の体験談や1日のスケジュールなんかをご紹介したいと思います。そして、カナダ留学を終えて、帰国後の交流についても触れたいと思います。
※冒頭写真は母とバンクーバーを再訪した時の店長との3ショット。(店長は右側)
緊張の初出勤
短期集中型のアルバイト探しを終え、念願のタイ料理レストランでの内定を得て満足感に浸っていられたのも束の間。初出勤は4日後。面接時に伝えられたユニホーム(制服)の購入や初めての飲食店でのアルバイトに向けて、準備に追われておりました。
「白のポロシャツに黒いパンツ」が面接時に指定されたユニホームでした。エプロンは無料で貸与してもらえますが、ユニホームに関しては自費です。また、バンクーバーでのアルバイトは自宅から勤務地までの交通費は支給されません。これは日本とは違う点なので戸惑う方も多いでしょう。
4日後の初出勤(かつ、はじめての飲食店勤務!)に向けて、「自宅でできることは何だろうか?」、「はじめての経験だから、使い物にならなければクビになってしまうかもしれない?!」とソワソワした私が行ったこと。
それは、とにかくメニューを覚える!ということでした!
レストランのホームページにメニューの一覧が載っているので、とにかく名前を覚えました。日本の飲食店ですら、料理と名前を完璧に一致させるには時間が必要だと思います。英語とタイ語で覚えなければならないので、ひと苦労であることは間違いありません。
グリーンカレーやパッタイ(タイ風焼きそば)であれば覚えやすいのですが、タイ料理好きな私でも知らないタイ料理が出てくること、出てくること…。
また、一つの料理(例えばグリーンカレー)でもメインの食材は「鳥、豚、牛、海老、野菜」の中から選択することができます。必然的に、1つの料理でもメイン食材で料理名は変わってきます。英語名の料理もあれば、タイ語での料理もあります。
「好きこそ物の上手なれ」精神のおかげか、アルバイト開始前にメニューはだいたい覚えられたと思います。現地の飲食店での就労を希望されている方は、事前に現地名でメニューを覚えるようにしましょう。お店からの印象も当然良くなるのは間違いありません!
あっという間に4日間が過ぎ、初出勤の日がやってきました。指定された時間の1時間前に出勤して、まずはやる気をアピールしました。慣れない環境ではありますが、とにかく一生懸命さとやる気をアピールして、「みんなに認めてもらおう!」という私なりの作戦でした。最終的に最後まで1時間前出勤を貫き通しました!
レストランのスタッフの名前、これから朝来たらすること、物の配置等をマネージャーに教わりました。とにかく初めての飲食店勤務。英語での説明を一生懸命聞き、メモをしながら必死に仕事を覚えていきました。
忙しかったですが、とても親切なメンバーのおかげで、何とかワーキングホリデー中、タイ料理レストランでの仕事を続けることができました。
タイ料理レストランでの1日の流れ
ここでは、私の1日の仕事について簡単にお話しいたします。ワーホリでこれから出発を控えている方にとっては、1日の生活の流れは気になるところだと思います。
ワーホリは語学学校に通ってる期間、アルバイト中、アルバイト後の旅行、など各ステージで1日のスケジュールが変わります。誰にとっても一番長いステージとなるのが、アルバイトしている期間となるはずです。
10時: レストラン到着・1日の仕事の始まり(通勤時間はバス1本 / 片道30分)
オープン前にテイクアウト用の器の補充、ランチメニューのサラダやスープの準備(包丁を使う作業もあり)、足りない食材やトッピングの補充、店頭の掃除などを行います。
11時: レストランのオープン時間
続々とお客さんがお見えになります。席に案内し、冷水か温水どちらがいいか一人ひとり確認し、飲み物を運びます。ランチタイムは時間との勝負!オーダーを取ると同時にランチサービスのサラダ又はスープのどちらを希望するか確認し、素早くかつ間違いなくお客さんのもとへ運びます。
バンクーバーは食事のテイクアウトも頻繁に行われます。店頭のお客さんに加え電話でのオーダーも受け付けますので、お店はてんやわんや!(ちなみに私は電話に出る英語力が無かったので、基本的には電話には出させてもらえませんでした。)
12時: ランチタイムは忙しさのピーク!
正確にかつ迅速にお客さんのもとへ食事を運びます。忙しい中でも、テーブルの客層を確認し、男性の方や学生さんにはライスは少し多めに、女性の方へは少し少なめにと、気遣いをすることも教わりました。(簡単そうに見えて中々難しく、何度も注意されましたね。)
お客さんは次から次へとやってくるのに、「満席!」なんてことも日常茶飯事。お客さんが帰られてからの後片付けも大事な仕事に一つ。重たいものを持つことが苦手な私は、店内を何往復もして片づけをしていました。
15時: ランチタイムの営業終了
店内と厨房を一旦片付け、お待ちかねのまかない料理でエナジーチャージ!まかない料理のメニューは毎日変わります。タイ出身のシェフが作る、本場のタイ料理。本当に毎日楽しみでした。
私のお気に入りはヌードル系のまかないでした。パクチーをたっぷり入れて食べます。まかない料理は、スタッフ全員でコミュニケーションを取りながら食事をします。おかわりは自由なので、たくさん食べてディナータイムに備えます。
16時: 休憩時間
店内で仮眠を取ったり、近くのスターバックスに行ったりと、少し休憩を取ります。(とにかくバンクーバー内にはスターバックスが多いです!)
17時: ディナータイムの営業開始
ディナータイムの開始は、ほぼテイクアウトのオーダーです。17時になると、次から次へとテイクアウトのオーダーの電話が入ります。ディナー用のテイクアウトですので、どのお客さんもたくさん料理を注文します。似たような注文が多くて間違えそうになりますが、注文が入り混じらぬよう、細心の注意を払いテイクアウト用の料理を準備します。
ディナータイムは、ランチタイムよりもメニューの幅が広がります。ランチタイムでは注文されないメニューも多く出ます。少しでも手が空いている時には、常にメニュー表を見て、料理の名前を必死に覚えていました。
バンクーバーには食べきれなかった食事は残すのではなく、ドギーバッグ(持ち帰りの容器)に入れて持ち帰るのが主流です。ディナータイムは一品あたりの量が大幅に増えるので、残った食事をドギーバッグに包むという作業も重要な仕事でした。
私の働いていたお店は人気店なので、平日の夜でも大盛況。特に金曜日と土曜日の夜は、常に店内を走り回っていました。
22時: 営業時間終了
片付けと、店内やトイレの掃除をして一日の業務は終了です。平均して22時30分にお店を出ていました。お客さんが少ない日であればこれよりも早く帰る日こともありましたし、業務が終わらなければこれ以上残ることもありました。
簡単な1日の流れは以上になります。私はこの勤務を週4日間、または5日間行っていました。まさにアルバイト中心の生活となります。
海外だからと言って、仕事に対して「緩い」ということは一切なく、とても細かい部分までこだわっているレストランでした。その丁寧さが現地の人にも好評なのだと思います。
アルバイトの賃金について
お給料は時給制で、基本的に11時から22時の間の働いた時間のお給料をいただきます。残業代や交通費の支給はありません。ちなみに、バンクーバーのお給料日は月に2回と法律で定められていますので、月に2回小切手でお給料を貰いました。
賃金に関して日本と大きく異なるのはチップの文化です。バンクーバーでは食事代に加えて、そのお店のサービスに対していくらかお金を支払うという文化があります。(カフェやファストフード店を除く。)
チップの相場は食事代に対して、少なくても10%、お酒を飲んだ場合には30%です。
私が働いていたレストランにもチップの文化はもちろんあり、働いた初日から現金で毎日貰えました!チップの配当方法はレストランによって様々です。私が働いていたレストランでは、サーバー組とキッチン組で割合が決められており、チップ総額に対して店長を除く人数で割るという配当方法でした。
現金で貰えるチップは本当に嬉しかったですね。
毎日毎日お金が貯まっていきました。私の場合は、ほぼレストランで働いて過ごしていましたので、小切手で貰うお給料は全額貯金、毎日現金でいただくチップで生活するというリズムが確立していました。
働き始めてからは、日本で用意していたお金やクレジットカード等一切使うことなく、お給料とチップだけで全ての生活を賄うことができました。
お世話になったレストランを卒業
滞在に限りがあるワーキングホリデー渡航者。レストランで毎日楽しく働いている私にも帰国の日はやってきました。
英語力が秀でているわけでもない、飲食店での就労経験があるわけでもない、ただのタイ料理好きの私を雇ってくださったレストランには感謝の気持ちでいっぱいでした。
「雇って頂いたからには、全力で働こう!」という気持ちが伝わったのか、卒業の日には2台のホールケーキをプレゼントして貰いました!通常は1台なのですが、恐らく私の頑張りが認められて、特別に頂けたのかな…と思います。(笑)
毎日楽しく働かせていただきましたが、楽しいことばかりではありませんでした。英語環境での仕事は、何を言われているのかさっぱりわからないこともしばしば。
飲食店での仕事も決して楽なものではなく、覚えることがたくさんありましたし、苦手な作業もありました。そして時には、お客さんへのミスで申し訳ない気分になってへこんだり、大雑把な自分の性格が仇となり、店長やスタッフに注意されたりすることも何度も何度もありました。
それでも、最後まで見捨てずに最後まで雇ってくれた店長をはじめとするレストランのメンバーには感謝でいっぱいです。本当に、たくさんの迷惑をかけましたが、やる気と情熱と持ち前の明るさでみんなに可愛がってもらうことができました。こういった気持ちの部分は、言葉が完全に通じていなくても、きちんと伝わるものだと改めて感じました。
帰国の際には、マネージャーとシェフが空港まで見送りに来てくださいました。マネージャーに関しては、最寄りの駅まで来てくださり、空港まで一緒に電車に乗って行き、荷物を運んでくれました。本当に素敵なレストランに出会うことができました!
カナダ留学から帰国後の交流
帰国後もLINEでメッセージをやり取りしたり、クリスマスカードを送ったりしています。クリスマスカードは、日本でいう年賀状のようなもので、非常に重要なものです。年に一度の大切な季節にレストランのメンバーや、レストランでの思い出を思い出しながら、クリスマスカードを書く時間はとても幸せです。
これは私の恒例行事です。出来る限り毎年送り続けたいと思っています。
LINEやクリスマスカードの交換であれば、簡単に出来ることですが、私はレストランのメンバーと日本やタイで再会をしています。また母を連れて、自分が住んでいたバンクーバーを訪れたこともあります。
約1年間という本当に限られた時間の中ですが、こんなにも自分の人生に影響をもたらしてくれる経験ができるとは思ってもいませんでした。もちろん渡航前もこういった経験を夢見て旅立ちましたが、予想以上に山あり谷ありで楽しかったです。
辛いことや悲しいことがあった時は、バンクーバーやレストランで過ごした日々を思い出して「思い出に負けてはいられない!」と、前向きさを取り戻すことができます。この文章を書いている今も思い出で胸が熱くなっております(笑)
こんなにも素晴らしい経験ができた1年間という時間は、間違いなく私の人生の中の財産の1つです。
「前職を退職する際の送別会で、「人間死ぬときに残るのは、財産ではなく思い出だよ!だから、目一杯楽しんできてね!」と贈って頂いた言葉は、間違いなくその通りだと思います。思い出はいつでも、どこでも自分の心の中にあります。
いくつになっても、思い出すだけで胸を熱くする経験は自分の行動次第だと思います。ワーキングホリデー経験者の先輩として、是非みなさんにもこのような気持ちを味わって貰いたいですね。
この記事を読んだ皆さんの海外生活が豊かなものになるよう祈っておりますよ!