自国の価値観やライフスタイルを伝える難しさを実感した話 | 留学・ワーホリ・海外留学・語学留学は留学ドットコム

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自国の価値観やライフスタイルを伝える難しさを実感した話

公開:2020/02/12 著者:伊東 さやか 385 Views

日本人として海外で過ごしたり、外国人コミュニティに入ったりすると、自然と「I LOVE JAPAN!」な友だちが増えますよね。そして、必ず聞かれる質問が、日本の文化。

寿司や納豆などの「食」に関することから、仏教や神道など「宗教」まで、日本の文化に興味を持ってくれるのはうれしいこと。

 

そして、文化には時代によったライフスタイルや考え方なども含まれるでしょう。

 

わたし達も、興味のある国で注目が集まっているものや、若い世代の新しい価値観はどのようなものか、気になりますよね。

先日、モントリオール時代の友人とメッセンジャーで話をしていて、そんな内容になったことが興味深かったので書き綴っていきたいと思います。

日本移住を考えているカナダの若い男性が思うこと

友人はモントリオールに住む20代後半の男性です。わたしがモントリオール滞在中に知り合い、日本好きということで仲良くなりました。カフェで英語を教えたり、居酒屋さんで日本酒を教えたり。

そんな彼は数年前に一度日本に数ヶ月滞在し、よりいっそう日本への熱い思いをふくらませたようです。「いつか日本に住みたい、日本で働きたい。」と言う彼と、ちょくちょくメッセンジャーでやりとりをしていたのですが…。

先日、このような内容のメッセージをくれたんです。

 

What are your feelings about a man in Japan who makes 280,000~300,000円 per month?From an investment point of view I think there are 2options;
日本で28万円~30万円くらいを毎月稼ぐ男性ってどうなんだろう?(稼いだお金の)使い方としては2つの選択肢があると思うんだけど。
1. He can afford a traditional family life.
1. 一般的な家庭を余裕で養える。
or
2. He can invest his money.
2. 自分のお金を投資できる。
I think most Japanese people make that much money.I also consider the low birth rate in Japan.It seems difficult.What do you think?
日本の人たちってそれくらいは稼いでいる感じがする。あと、出生率の低さも気になるんだよね。すごく大変そうだけどどう思う?

 

おっと、また難しいことを聞いてきたな…と思っちゃいました。(笑)月収30万円前後で「家族を余裕で養う」ことができるのだろうか?今の日本では難しい気がしたので、わたしはこのように返信しました。

 

I don’t think 280,000~300,000円 would be ‘’afford’’ because rasing a child costs ten million yen. Maybe he can invest his money if that family had a two-income.but that amount of money is kinda average……so that’s leading to the low birth rate in Japan.
28万円から30万円は”余裕”ではないと思うけど。だって子どもひとり育てるのに一千万かかるし。もし共働きなら投資することもできるかなぁ。ただ、まぁその金額は平均といえば平均だから、それが出生率の低さにもつながってるんじゃない?

 

この返信に対して彼は、「That’s exactly my thinking!(まさにそう思ってた!)」ということらしく、さらにこの”出生率の低さ”の流れで、彼は「もうひとつ気になってるんだけど、”イクメン”って実際どうなの!?」と聞いてきました。以下が、その内容。

 

What do you think about the ikumen? I hear Japanese women laughing about ikumen so I think ‘’Maybe it’s not accepted’’ but I think it’s the best way.Both parents work,and both parents take care of the house.Everything 50/50.
イクメンについてはどう?日本の女性がイクメンのことで笑ってるの聞いて、”受け入れられていないのかも”って思ったんだ。でも、それってベストだと思うんだよね。両親が二人で働いて二人で家のことをする。ぜんぶ50/50でさ。)

 

このメッセージを見て、ふと「いや、そもそもイクメンってなんだろう…?」とわたし自身が分からなくなっちゃいました。イクメンって単純に「育児をする男性」ではなく、もっといろんなニュアンスを含んだ言葉ですよね。

イクメンという言葉が出始めたころには「積極的に育児に参加する男性」というニュアンスで、イクメンタレントが出てきたりなんかもして、わりともてはやされたと思います。

でもだんだんと、もしかしたら最初から、「育児に参加」というニュアンスに多くの人が違和感を覚え始めたんですよね。

 

実際にSNSなどでも、「いやいや!育児してあたりまえでしょ!父親なんだから!!自分の子を育てるのに育児に”参加”って意味わかんない!」という声が多数あがってるのがその証拠。

 

なので、わたしの友人が言う「I hear Japanese women laughing about ikumen」の「laughing」は嘲笑でしょう。しかし、彼はそれを「イクメンは受け入れられていない。」と思った。なぜでしょうか?

「もしかして、欧米にはイクメンっていう概念がないのかな…?」というのがシンプルな考え方ですよね。わたしは日本でも海外でも子育てをしている友人が少なく、正直なところその辺りの違いについては分かりません。

ただ、内閣府の「6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間(1日当たり・国際比較)」を覗いてみると、日本は国際的に見ても最低水準ということが分かります。

 

→ 6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間(出典: 内閣府資料 / 夫の協力

 

「1日あたりの育児の時間(夫)」が、アメリカで平均1.20時間に対し、日本の平均はなんと0.49時間。1時間にも満たないということなんですね…。

もちろん労働環境や平均収入なども影響しているため、完全に男性だけが悪いと言っているわけではありません。

とはいえ、やはり「育児をする男性」が日本は少し特別扱いされ過ぎているように感じます。

 

さて、この感覚をどう伝えたらいいものか…と返信に少し悩みました。

結果、わたしが返した内容は、「わたしも50/50がベストだと思うし、他の多くの女性もそうだと思うよ。でも”イクメン”って響きがちょっと馬鹿っぽいんだよね。たとえば誰かが”俺は家事も育児もしてるんだ!”って誇らしげに言ったとして、女性的には”So What?”なんだよ。女性が家事をしても普通のことなのに、それが男性となると同じことしてても”GREAT”って変じゃん。」といった感じ…。

わたしが伝えたこの内容が”イクメンを笑う女性”についての説明として、正解かどうかは分かりません…。

 

新しい価値観は歴史や伝統を伝えるよりも難しいかもしれない

例えば、「祭り」や「サムライ」についてなら、何となく説明できる人も多いと思います。

聞いている方も100%理解できなくても「そういうものなんだな。」と納得してくれますよね。

しかし、「新しい価値観」はシンプルには説明できません。今回のイクメンについてもそうですが、古い価値観がある上での新しい価値観です。

 

そして、新しい価値観が生まれたからといって、国全体の常識や一般的なライフスタイルまでもが一気に変わるわけではないですよね。

 

だからこそ、みんなもがくんですが…。そういったバックグラウンドを理解してもらわないと、なかなかニュアンスまで伝えることはできないと思います。そして、それはお互い様でもあるんです。

いつだったか、わたしは日本に住みたいという彼に「日本は経済がちょっと危ういからね…、今までのリッチな国というイメージとはもう違うかも。こっちに住むと大変だと思うよ。わたしはカナダの方がいいなぁ!」と言ったことがありました。

すると彼は、「カナダも変わんないよ?今大きな問題は移民。」って言ったんですね。まぁなんていうか、わたしの中でカナダは、移民に寛容な国というイメージだったんです。

 

少し前にトルドー首相がイスラム教徒の移民に反対する市民に対し、「カナダは移民によってつくられた国です。カナダは超多種多様の国、世界で唯一移民を前向きに受け入れています。」という言葉で返したのを見ました。そして、その言葉で湧き上がる人たちを見て、移民はあまり問題視されていないと思っていました。

が、メッセージをやりとりしている彼は、移民を問題視しています。もしかしたら、国としては移民に前向きでも、「国民の感覚は少しずつズレてきているのかも?」と感じました。

イクメンだって同じですよね。言葉やイメージだけが他国でひとり歩きし、実際に国民が持っている価値観や感情、バックグラウンドまではなかなか分かりませんから。

 

【まとめ】 歴史とアップデートされていく価値観についていこう!

どこかの国に興味を持てば、その国の歴史が気になることって多いと思います。確かに、どのようにしてその国が成り立ってきたか?を知ることは、国民性や国による常識を知るためにも大切なこと。

しかし、常識や価値観は常にアップデートされていくものです。これは日本だけのことではありません。新しい世代による新しい価値観はあって当然ですから。現代は他国の状況が簡単に見えるので、「自国のおかしさ」に気づく人も少なくないでしょう。

「海外はこうで日本はこう!」と決めつけず、まずは知ることが大切ですよね。そして、そういった新しい常識や価値観は、やはりその国から発せられる生の声を聞くことが一番です。海外に知り合いがいない方は、海外のTwitterなどをチェックしてみるといいですよ!

 

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