日本に帰るのが怖い!?留学生やワーキングホリデー勢が新型コロナウイルスの渦中に帰国をためらう3つの理由
こんにちは、カナダ在住のちひろです。
過去のコラムで、新型コロナウイルスの一連の報道を受けて「海外残留か?日本帰国か?」という判断を迫られた人々を見て著者が考えさせられた点をシェアさせていただきました。
現在のような非常事態の情勢下では、誰もが住み慣れた日本で家族や友人と一緒に暮らす方が安心できるように思います。
また、万が一、カナダでコロナウイルスに感染してしまい入院を余儀なくされた際、海外では入院費が1日で数千ドル以上になる可能性があります。たとえ海外旅行保険に加入していたとしても、保険のカバー範囲を超えてしまい巨額の自己負担を強いられるケースも予想されます。
さらに、カナダと日本を結ぶ国際線も運休や減便処置が取られています。もしも、ビザの有効期限を迎えるタイミングで帰りの便を確保できなければ、不法滞在になってしまうことだってあり得ます。
はっきり言って、この新型コロナウイルス蔓延の渦中でワーキングホリデービザや短期査証で海外滞在をするのはリスクが高すぎます。
それにも関わらず、日本へ帰国することを躊躇している人々がいるのです。
それでは一体、どのような懸念事項から母国へ戻ることを判断しかねているのでしょうか?
本日のコラムでは、「現在カナダにいる留学生やワーホリの人々が、日本への帰国をためらう3つの理由」についてお話しさせていただきます。
① 自分が保菌者として家族や友人に遷してしまう懸念
私の肌感覚では、カナダではコロナウイルス感染予防を徹底できている留学生やワーホリ勢が大半であるように考えます。留学生は、コロナウイルスが蔓延し始めたタイミングで大学や語学学校の授業が早々にオンラインに切り替えられたため、自宅で勉強できる環境が整っていました。
同じくワーホリ勢にとっても3月中旬以降は、生活に必要不可欠なサービス以外を提供する職場の営業停止命令が下されたため、仕事を失い自宅待機を強いられる状況になっていました。私が住んでいるオンタリオ州では、3月30日(月)に緊急事態宣言の2週間延長が発表され、少なくとも4月13日(月)までは不要不急の外出は制限されています。
街中に出てみても週に一度の買い物を除いて、外出している人はほぼいないように見受けられます。また、どの人も社会的距離(Social Distance)の維持を意識しており、スーパーのレジ等でも他人とは1~2mの間隔を取るよう対策がなされています。
自分が日本へ帰国する姿をイメージする時、まず飛行機や空港での感染リスクが非常に高いように感じてしまいます。特に日本の空港では海外からの入国者に対して、最近ようやく検疫が強化され始めました。ここで気になるのは、日本の検疫が「強制」ではなく「強化」に留まっている点です。
自己申告しなければ検査をされない日本への入国者がまだまだいるのが現実です。空港内で利用客同士の社会的距離(Social Distance)を保つための整備もこれから本格的に着手されるところでしょう。
そこでまず、日本への帰国を検討し始めた留学生達は、「カナダにいるうちは保菌者でなくても、日本の空港でコロナウイルスをもらってしまうのではないか?」という懸念を抱きます。自分自身に症状がなくとも、菌が付着した手で家族や友人に触れた場合、ウイルスを知らず知らずのうちに他人に遷してしまうリスクがあります。
② 帰国後に14日間の隔離を「自力で」することの難しさ
次に、14日間の自主隔離に際しても帰国後の留学生は不安を覚えます。厚生労働省は「検疫強化対象地域からの入国者に対して、二週間の自主隔離を要請」しています。
前述の通り、大切な家族や友人にコロナウイルスを媒介してしまう危険性があることは理解しているので、自主隔離をすることに対しては何ら異論ありません。
でも、人によっては現行の要請内容ではその規定に従うのが難しいポイントが2点あります。
まず、4月2日(木)時点の同省の規定では、「入国者自身で隔離先と移動手段を用意すること」となっています。留学生やワーホリ勢が日本に単身者マンションをキープしているとは想定しにくいので、帰国後にまず向かう先は実家が大半であると考えられます。
でも帰国から14日間は無症状であっても自主隔離が促されていますので、家族とは接触しないことが望ましいです。そうなると、2週間滞在できるホテルやAirbnbを確保せねばなりません。
では、その宿泊費用は誰が持ってくれるのでしょうか?もちろん自己負担です。お金に余裕がない上に、帰路のフライトも減便され航空券も値上がりしている中、そこにさらに宿泊費14日分の出費も追加されるとなると相当苦しいはずです。
次に、移動手段の用意も非常に難しいです。留学生自身も海外から帰国してすぐのタイミングで公共交通機関を利用するべきでないのは重々承知です。そこにも異論はありません。ただ、同省からは家族や勤め先の会社による送迎や自力でレンタカーを手配するよう提言されています。
しかし、もしも私が帰国することを考えた場合、これって本当に困難です。自分が感染症を広めてしまう可能性があることを踏まえると14日間は、家族や友人知人とは接触したくないので、迎えに来てもらう選択肢は私の中にはありません。
すると次に推奨されているのはレンタカーです。でも、免許を持っていない人はどうなるでしょうか?もう、どうにも動けなくなってしまいます。私がなぜ入国者自身で滞在先や移動手段を確保することの難しさをお話ししているかというと、実はカナダや一部の国では、隔離先や交通手段を自力で準備できない人には政府が手配をしてくれることになっているからです。
留学やワーホリをしていない方々からすると、「自分の意志で海外へ行って、自分の判断で日本に帰ってくるのだから、自力で手配して当たり前だろう!」と思われてしまうかもしれません。
そう言われてしまうと正直返す言葉が見当たりません。でも日頃、他国の寛大な対応に慣れ親しんでしまったこともあり、私も含めてですが日本の現状の要請には応え辛く感じてしまう留学生が一部いることも事実です。
これは単なる甘えでしょうか…?
③ 日本の新型コロナウイルス対策の進捗
最近、安倍首相がコロナ対策の一環として1世帯あたり布マスクを2枚配布すると表明したことで、Twitterでは「マスク2枚」が世界のトレンド1位になりました。
以前より話題に上がっていた全世帯に現金支給をする案は、なかなか実現されていないことも日本の報道から汲み取れます。
また、外出自粛に関しても週末限定でスタートしていたり、飲食店も通常通り営業していたりと、まさにこれからコロナウイルス対策が始まるところのように感じます。
一方、欧米ではすでに国民への現金支給や失業手当給付が開始しており、人々が経済対策の恩恵をすでに受け始めています。
また、平日の自宅からのリモートワークや公共施設での社会的距離(Social Distance)も浸透しています。
冒頭でもお話しした通り、海外での医療費は海外旅行保険ではカバーしきれない可能性があり、感染した際のリスクは大きいです。
でも、感染症予防の段階では、すでに対策が整っている海外に身を置いている方が今下手に動くよりも安全なのではないかと考えることができるのです。
【まとめ】日本に帰るのが怖いのは、日本に住んでいる人を大切に思っているから!
このコラムを書きながら、「そんなに海外の対策が好きなら一生海外にいろ!日本に帰ってくるな!」と思われてしまうのではないかという一抹の不安を覚えたのですが、大丈夫でしょうか…。(笑)「日本に住んでいる人を大切に思っているからこそ、日本に帰るのが怖い。」なんて言うと、綺麗事だと思われるかもしれませんね。
海外のコロナ対策と比較すると、日本の施策が期待はずれだったり不安に思ってしまったりする部分も確かにあります。でも、日本には日本の法律があって、その範囲内で政府ができることには限りがあることも理解しています。
もちろん、自分の身の安全確保という側面も大いにありますが、日本へ帰ることをためらう根底には「自分が海外から日本へ帰国することで、感染症を広げる媒体になってはいけない。」という思いがあります。
現に、諸外国であれだけコロナの被害が拡大した理由の一つとして、都市部に働きに出ていた若者たちが田舎に帰省したことで、ウイルス蔓延に拍車がかかったとも言われています。
留学やワーホリを途中で切り上げて帰国するって本当に並並ならぬ覚悟です。1ヶ月前に渡航したばかりなのに、ほぼとんぼ返りで日本へ戻った留学生もいます。
今日本にいらっしゃるみなさんは、空港や街中でスーツケースを引いて歩いている人を見かけたら、「こんな時期に海外旅行かよ!」などとは思わず、「もしかして、留学やワーホリを中断して帰ってきた人かもしれない。」という目でも彼ら彼女らを見ていただきたいです。
友達が留学先から帰国してきたから、お祝いのつもりで飲み会を企画してくれる人もいるかもしれません。でも当の本人は参加を断る可能性があります。それは、帰国から14日間は特に派手な行動を自制したいからです。
友達やその家族にコロナウイルスを媒介してしまわないか心配しているためです。
だから、安直に「ノリが悪い」とか「そんなに付き合い悪かったっけ?」とは捉えないでほしいです。現状は、カナダを含む諸外国の方が日本以上にコロナウイルスの被害が深刻です。海外在住の日本人は、厳格な環境の中でコロナウイルスと向き合ってきているので極めて慎重なのです。
なかなか日本への帰国を決断できない留学生に対しても、「それだけ勇気がいることなのだな。」と考えていただき、仮に彼らが帰国を決めた際には、あたたかく迎え入れていただきたいです。
海外にいる人と日本にいる人の垣根を越えて、今はとにかく1日でも早く終息することを祈りつつ、お互いに現状を乗り越えていきたいですね。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。