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ワーキングホリデー・学生ビザ保持者でも現金受給の可能性あり!カナダの新型コロナウイルス緊急対応給付金「CERB」とは?

更新:2020/04/18(公開:2020/04/11) 著者:坂元 ちひろ 9612 Views

こんにちは、カナダ在住のちひろです。

カナダ政府は新型コロナウイルス蔓延の渦中で、様々な経済対策を発表しました。今なお、医師たちが最前線で戦っている医療現場や、経営悪化を余儀なくされた中小企業への経済支援が数百億円・数兆円という規模で打ち出されています。

一方、ワーキングホリデーや学生ビザで滞在している人もコロナウイルスの影響で大打撃を受けています。レストランとバーは3月中旬からテイクアウトやデリバリー営業のみ、最悪の場合は休業となり、飲食店で働いていた人の中には無職期間が1ヶ月続いている人もいます。

 

一時的にカナダで生活している外国人だけでなく、カナダ国籍や永住権を持っている人すらも仕事を失っているのが現状です。

 

そんな中、政府はカナダ国民個人を支える「CERB」と呼ばれる緊急対応給付金を運用し始めました。驚くことに、こちらの経済支援は条件さえ満たせば外国人でもその恩恵を受けることができるようなのです。

この記事を読んでくださっているカナダ在住の方も、受給対象となる可能性があるのです。今回はそんなカナダの支援策をご紹介するべく筆を取りました。

 

※CERBの支給条件には、明確にワーキングホリデービザや学生ビザの支給が含まれると明確な記載はありません。支給対象者の記載には、「temporary foreign workers」と「international students 」に留まっています。今後、具体的な対象者や条件変更が予想されますが、変更発表があれば当記事内でアナウンス致します。

CERBとは?

CERBとは「Canada Emergency Response Benefit」の略です。

 

CERBは、カナダ国内で新型コロナウイルス蔓延の影響を受けて失職・失業した人が、個人で受け取ることのできる緊急給付金です。

 

後日で政府に返金する必要はありません。受給資格は後ほどご紹介しますが、現金の給付は最大で16週間続きます。支給額は1週間あたり500カナダドル(約38,800円)とされています。

つまり、1ヶ月(厳密には4週間)で2,000カナダドル(約155,200円)となり、同額を約4ヶ月間受給することができます。合算すると16週間で8,000カナダドル(約620,800円)が個人に支給されることになります。

嬉しいことに、CERBは条件を満たせばカナダ国籍や永住権がない人でも受給申請をすることが可能です。

 

この経済支援はすでに現金給付が始まっており、就労・学生・ワーキングホリデービザ保持者も実際にお金を受け取っています。

 

外国人がカナダ国民と同様のタイミングで政府からこのようなサポートを受けることができるのは、なかなか珍しいことではないでしょうか?とてもありがたいですよね。

 

→ 外出自粛が始まってから間もなく1ヶ月となります。

 

CERBの申請資格は?

次は、肝心のCERB申請資格について一歩踏み込んでお話しします。カナダ政府は以下4つの項目を全て満たす人が現金給付の対象者であると規定しています。

 

・カナダ国内に居住していて、年齢が15歳以上であること。
・失業や解雇原因が新型コロナウイルスであること。自己都合の退職や離職は対象外。
→ 職場に籍はまだあるけれど、一時的に収入がなくなっている場合も申請可。
・2019年もしくは、CERBの申請日から遡って12ヶ月間で少なくとも5,000カナダドル(約388,300円)の収入があった人。
→該当期間にカナダ国外(日本など)で収入があった人は、現在カナダに住んでさえいれば、国外での収入も含められる可能性あり。詳しくは申請時にお問い合わせください。
・はじめの4週間の期間中に少なくとも14日連続で雇用または自営業による収入がない、もしくは、ないと予想される人。
→給付初期の連続した14日間もしくはそれ以上の日数で収入が1,000ドル以下、次期以降も月収が1,000ドルを下回る人は新たに申請可能対象に。

 

あわせて、申請の際は有効なSINナンバー(Social Insurance Number)の提示が求められます。これはいわゆる社会保険番号です。カナダで働く際にはビザの種類に関わらずSINナンバーを取得する決まりになっているので、すでに仕事をしていた人は確実に持っているはずです。

給付の対象外者として例を挙げるとすれば、ワーホリビザから観光ビザに切り替えて滞在を続けている人がその一例となります。ワーホリビザが満期を迎えるとともにSINナンバーの有効期限も切れるので、今回は残念ながら現金給付の対象には入りません。

さて、以上の申請条件を見ていただくと、給付対象が世帯主ではなく個人であることをご理解いただけるでしょう。個人単位で現金を受け取ることができる支援策は、扶養家族がいる家庭にとっては特にありがたい援助だと言うことができます。

 

仮に受給対象が世帯主だった場合はどうなるでしょうか?軽くシュミレーションしてみましょう。

世帯主が父親である共働き家庭の場合、母親が失職したとしても、父親が失業していない限りは受給資格がありません。

父親の収入だけでは生計を立てられずに共働きしている家庭があるとすれば、その世帯の収支バランスはあっという間に崩れてしまうでしょう。

 

しかし、今回のカナダの政策のように受給資格が個人単位で付与されていると、失職した母親自身がCERBを申請することができます。

 

その結果、世帯全体で家計バランスを継続して取れるようになります。また、世帯主対象の現金給付のケースでは、単身と複数人の世帯を比較した際にも大きな差が生まれます。

単身世帯者にとっては1ヶ月に2,000カナダドルの支給でも、2人世帯からすると一人あたりの割り振りは1,000カナダドルとなってしまいます。子供がいる場合はさらに単身世帯との差が広がります。

この問題を解決するためには世帯人数に応じて支給額を変えねばならず、政府にとっても国民にとっても複雑化してしまい、今回のような「緊急給付金」にはやや不向きなシステムかもしれません。

 

→ CERBとは別に子供に対する経済支援もあり、至れり尽くせりです。

 

CERBの懸念事項とは?

申請や現金給付が実際に始まったことで、明らかになった懸念事項や実態についてシェアさせていただきます。

 

受給資格がないのにお金を受け取れた人がいる

個人がインターネットを介して申請した場合、早ければ2日後には個人の銀行口座に2,000カナダドル(4週間分の給付金)が入金されています。さすがは、「緊急給付金」と言うだけのことがあり、今月の家賃支払いすら危うい経済状況を抱えている人にとっては非常に頼りになる支援対策です。

しかし、その一方で問題があります。それは「本当は受給資格がないにも関わらず、お金を受け取れている人がいる」という事実です。とにかく迅速性のある給付金であるため、現状では厳密な審査がなされていないのです。

そんなことから「ダメ元で申請をしてみたら案外、すんなりと受給完了した人」がチラホラと現れ始めました。これに対して支給元は、「資格がないにも関わらず現金を受け取ってしまった場合は、返金手続きをする必要がある。」と提言しています。

 

今後、後追いの審査がどのタイミング・どの程度のレベルでなされるかについては、政府からの公表はまだありません。

しかし、「近いうちに追加資料の提出を依頼する場合がある。」とだけは明言されています。

あわせて、現状では「誤って受給してしまったことに対する罰金や利子を請求することはない。」ともアナウンスされましたが、故意の虚偽申請は罰則の対象となる可能性があります。

 

CERBは課税対象

カナダには「インカムタックスリターン」と呼ばれる、日本の確定申告に近いシステムがあります。労働者が給料をもらう際には各種税金が天引き(源泉徴収)されますが、その税額は1年間の総収入を仮設定した上で引かれています。

1年の総収入が決まるまで正確な納税金額は定まりません。そこで1年に一度のタックスリターンの機会に、すでに納めた税金額の調整がなされます。

税金を多く徴収されていた場合は払いすぎた分が戻ってきます。逆に、支払った税額が少なかった場合は追加納税が必要となります。これはカナダ国民や永住権保持者に限ったことではなく、カナダで収入を得た場合は学生ビザやワーキングホリデービザ保持者もタックスリターン申請を行わねばなりません。

 

また今回のCERBも課税対象となっているため、タックスリターンを申請するタイミングで収入の1つとして報告をする義務があります。

 

お金が2,000ドル以上振り込まれた人がいる

申請者の多くが、最初の手続きでは4週間分の給付金である2,000カナダドルが支払われることを期待していました。しかし、申請状態によっては4,000カナダドルが入金された人がいます。

ここで「なんだかよく分からないけどラッキー!」と喜んでお金を使い込んでしまうのは厳禁です。ただ単に「8週間分が一気に振り込まれただけ」と理解するのが正しいです。

「16週間で合計8,000カナダドルを支給」という取り決めに変わりはないので、政府からは「すぐに使い切らないように」と公式にアナウンスがなされています。

 

詐欺行為が発生

政策が打ち出された当初から予想されていたことですが、早速、個人情報を盗み取ろうとする業者が現れ始めました。

政府は「CERB関連でショートメッセージやFacebook、メッセンジャーやWhatsAppを通じて、申請者個人と連絡を取ることはない。」としています。

「発信元が公式である確証がない場合は、決して個人情報を提供しないように。」と追加勧告がなされています。

 

→ 現在進行形の事案だからこそ慎重に行動したいところです。

 

【重要】これから給付申請をされる方へのお願い!

CERBは、そもそもカナダに滞在している外国人向けに設定された給付制度ではありません。主な受給者はカナダ国籍や永住権保持者です。

あくまで、「現在カナダに一時的に住んでいる外国人にも、給付条件を満たしている人がいる」という認識で、ご自身の申請資格を精査していただきたいです。

緊急の給付金制度であるため、一度申請した内容を訂正したり取り下げたりすることはできません。

 

少しでも、「私のこの条件は申請資格を満たしているのかな?」と疑問に思う項目があれば、申請前に給付機関への確認作業をお願いいたします。

 

申請者それぞれ、ビザの条件やカナダに入国したタイミング・帰国する時期は異なります。繰り返すようですが、一概にみんながみんな受給対象というわけではないのです。

疑わしい申請内容には証明書提出の依頼がくることも想定されますし、悪意ある虚偽申請はペナルティを受ける可能性があります。

 

また、給付金を受け取った以上は節度あるお金の使い方をお願いしたいです。

 

CERBは新型コロナウイルスの渦中で日々の生活を支えるためのお金です。残念ながら受給者の一部には、「働かずにお金が手に入ってラッキー!このお金で旅行ができる!」などと発言してしまう方がおられます。経済的な事情で泣く泣く日本へ帰国した留学生や、苦しく辛い状況で海外滞在を続けているワーホリ勢がいることを忘れずに日々を過ごしたいです。

さらに、こちらも繰り返すようですがCERBは課税対象です。ビザステータスの都合で1年未満の滞在であっても、日本帰国後に必ずタックスリターン(確定申告)をせねばなりません。

一人の適当な行動が他の留学生やワーホリ勢全体の評価を落としてしまう可能性があります。個人個人で常識ある行動を取りましょう。

 

政府の金銭的サポートがあってこそ外出自粛が徹底できる!

 

今回、CERBに関する情報をまとめながら、「つくづくありがたい経済支援だな。」と実感しました。外出自粛を要請されても、政府の援助無しでは生活費を稼ぐために外で働かざるを得なかった人が多くいたでしょう。

 

でも、これだけ体系が分かりやすくスムーズに現金を受け取ることができるシステムは、経済的にも精神的にも支えとなり得ます。

 

外国人と言っても、学生ビザやワーキングホリデービザで滞在している以上は滞在国に対して納税をしています。それでも、有事の際は自国民のケアが優先されがちで、「普段は私たちも税金を納めているのに…。」と不満に感じる外国人も多いものです。

私も最初は、自分達のような一時滞在者に対するカナダ政府の支援は全く期待していませんでした。それにも関わらず、カナダ国民と同じタイミングで給付金を受け取ることができるこの政策に感激しました。

カナダもまだまだ外出自粛が続いています。一方、最前線で人命救助に当たっている人・市民の生活を支えるために街で仕事をしている人もいます。それらの人々や政府に対する感謝の気持ちを忘れずに、今自分にできることを日々継続したいとあらためて実感しました。

 

なお、本記事の情報は4月10日(金)時点のものです。カナダ政府からの公式発表をもとに執筆しておりますが、情報は随時更新・変更される可能性があります。最新情報は以下の政府ウェブサイトも参考にしていただくようお願いいたします。
・Canada Emergency Response Benefit
https://www.canada.ca/en/services/benefits/ei/cerb-application.html

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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