【2024年】カナダの学生ビザ変更点まとめ
この記事では、2023年、2024年に行われたカナダ学生ビザのルール改訂について解説をしています。
この変更はカナダのビザルールにおいても、近年でかなり大きなルール変更になりますので、どこが変わったのか?なぜそうしたルール変更があったのか?というのを早速見ていきましょう!
そもそも、今回の規制の背景は?
今回、カナダ移民局が変更したルール変更は下記2つです。
まず一つ目が「学生ビザ申請時に移民局へ提出する残高証明書の金額を増やした」という点。そしてもう一つが「学生ビザの発給数を少なくしますよ」というルール変更ですね。
どちらのルール変更もカナダ移民局が「留学のハードルを上げた」という事になりますので、結果としてカナダ留学をする人は2024年以降は減る事となります。
では、なぜ今回カナダ移民局がこうしたルール変更をして留学生の流入を急に絞ろうとしたのでしょうか?
それは、現在カナダでは記録的な入国者数の増加で現地での住宅や医療、その他のサービスなどがものすごくひっ迫した状況になっているのが背景にあります。
コロナ渦を終えた直後は、カナダも他国と同様に国内で働ける人手が足らずに経済がうまく回っていませんでした。
そこで、カナダ移民局は「カナダで働いてくれる人がいたら、留学生、ワーホリ、移民希望者誰でも良いのでドンドン来てほしい!」と、移民をいつもより多く受け入れたり、留学生やワーキングホリデーでも働きやすい法改正を行ったんですね。
その結果として、カナダ国内の経済はしっかりと回復しました。
しかし、あまりに急激に国内の人が増えすぎてしまったため、家賃や物価が急激に増加したり、医療サービスなどでも適切な運営や提供が難しくなるという弊害が出てしまったのです。
また、現在カナダ国内には約100万人の留学生がおり、これは「10年前と比べると3倍以上に増えている」と言われるくらいのものすごい人数だったりします。
そのため、カナダ政府は「このままだと際限なく増え続けて大変な事になるぞ!」と判断し、まずは「2023年は56万件近く発給した学生ビザの数を減らして、36万4000件を上限にしよう」とルール改定したというのが今回のルール変更が行われた背景となります。
ちなみに、オーストラリアと同じようにカナダの留学産業もかなり大きく、カナダ国内で多くの雇用を支えています(カナダの留学産業はカナダの自動車部品産業、木材産業、航空機の輸出額を上回っています)
そのため、単純にカナダの経済だけを考えると「留学生がたくさんカナダに来てくれる」のは悪い事ではありません。
しかし、現状はメリット以上にデメリットの方が多くなってしまっているので、カナダも「ちょっと規制を増やして留学生数の調整をしつつ、少し様子を見たい」というのが本音なんだろうと思います^^;
変更点1(残高証明書の金額増額)
さて、次はルール変更の1点目である残高証明書の金額について詳しく見ていきましょう。
まず、このルールは2023年12月7日にカナダ政府から「2024年1月1日以降の学生ビザ申請時の残高証明書の金額を引き上げる」と発表があったのが最初です。
このルール変更に際して、移民局の主張としましては下記の通りです。
↓
・しかし現実問題として「ここ数年は特に物価が高騰し、実際に必要な生活金額は増えている」、「年10,000ドルの生活費として資金準備していた留学生がカナダ到着後に資金が底をつき、困ってしまうというケースが増えている」
↓
・こうした状況があるため、今回その現実に即した金額に変更した
そして、この残高証明書の金額は今後も随時変更の可能性があり、カナダ政府からは「カナダ統計局の所得基準(※)が更新されたタイミングで随時更新します」との事です。
※カナダ統計局の低所得水準=Low Income Cut OFF(LICO)という指標の75%に合わせて調整されるとの事
そして、現在2024年1月1日以降の学生ビザ申請時の残高証明書の金額は「1年で20,635ドル」と変わっています。
ちなみに、上記の残高証明書の金額(20,635ドル)は、あくまで生活費部分の金額になるため、実際は「20,635ドル+初年度の授業料+渡航費」という金額がビザ申請に必要です。
また、移民局も残高証明書の金額については、ビザ発給に際してかなり重要な指標の一つとなっていますので「残高証明書の金額もギリギリの金額」というよりは「できる限り金額が多めの金額」がベストです。
変更点2(学生ビザ発給数の制限)
次は、変更点の2つ目。残高証明書の発表から1ヶ月ちょっと経った後に告知された「学生ビザ発給数の制限」についてです。
2024年1月22日、変更点1に続いてカナダ政府から「これまで無制限で発給していた学生ビザ数を1年間ごとに発給上限を設ける」と発表がありました。
その内容については下記の通りです。
・1年間の学生ビザ発給上限は約36万件とする。(この36万件というのは、2023年の学生ビザ発給数から約35%ほど減らした数)
・この36万件は「カナダ国内全体での学生ビザ発給数の上限」となっているが、公平性を保つため、上限は州ごとに設定される。
・カナダの各州でも留学生が多い州、少ない州があるため、例えば、人口が多い州では上限が高め、人口が少ない州や急激に留学生が増えた州は逆に上限が低めという設定を行う。
・州ごとで上限を設定する方法は、州ごとに発行されるProvincial Attestation Letter=PAL(州の認証レター)の発給数で管理する
・学生ビザ申請時には、このProvincial Attestation Letter=PAL(州の認証レター)を必ず提出する必要がある。
・州ごとに発行されるProvincial Attestation Letter=PAL(州の認証レター)は、語学学校や大学、高校といった各教育機関でも不公平が出ないように、州の上限数をさらに教育機関ごとに割り振る形で発給数が定められる。
・今回の学生ビザ上限ルールは永続的なルールではなく、現時点では「とりあえず2年間」となっている(2025年の終わりにこのルールをどうするか決めていく予定で、2025年の発給数は2024年末に発表予定)
・大学院留学(修士や博士を取得する留学)や小中学校の留学はこの制限の対象外で、さらに既に学生ビザを持っている人も対象外(延長についてはPALの提出は不要)とする。
つまり、今後は「学生ビザを申請する際に新たに追加書類としてProvincial Attestation Letter=PAL(州の認証レター)の準備が必要になったよ」という話になります。
ちなみに、カナダでも人気留学地であるバンクーバーがあるブリティッシュコロンビア州(B.C.州)とトロントのあるオンタリオ州ですが、PAL状況については下記のように大きな差があり、トロントでの語学学校での学生ビザ発行はかなり難しいのが実情となっています。
上記のようにトロントのあるオンタリオ州については「人口が多い州+急激に留学生が増えた地域」という事で、PALの発給上限が少なく、さらに語学学校や私立大学への割り振りが極端に少なくなってしまっています。
カナダ学生ビザ申請についての流れ
そして、次は今回のルール変更を踏まえて、最新の学生ビザ申請の流れも見ていきましょう。
【2024年学生ビザ申請の流れ】
1.PAL(州の認証レター)の必要有無を確認
2.学校のお申込、支払い、必要書類の準備
3.学生ビザのオンライン申請
4.ビザセンターで顔写真や指紋の提出
5.ビザ発給&ご出発
1.PAL(州の認証レター)の必要有無を確認
→まず今回のルール変更で学生ビザ申請にPAL(州の認証レター)が必要になったのですが、このPALがなくてもOKなケースがあるため、必要かどうかをチェックするのが最初のステップとなります。
一方で、PALが必要なケースは下記の通りです。
2.学校のお申込、支払い、必要書類の準備
→PALの必要有無を確認したら、次は学生ビザ申請に必要な書類を揃えていきます。
学生ビザ申請に必要な書類は、実際に学校申し込みをしなければいけませんのでより細かな順番は下記のようになります。
ちなみに、学校の申込時点でPALの発給数が上限に達してしまっていたら…その年の入学は諦めなければいけません!
学校がどれだけ「大丈夫だよ」と言ってくれたり、留学生がどんなに留学をしたくても…州からの受け入れ許可(PAL)が出なければ決して学生ビザでの留学は実現しません。
また、学生ビザの審査期間は2024年4月時点で3ヶ月程度。PALの発給上限もあるので、今後カナダの学生ビザを希望されている方は「最低でも留学希望日の半年前にはお手続きをスタート」していけるように余裕を持って準備をして行きましょう!
3.学生ビザのオンライン申請
→入学許可証、PAL、残高証明書など、必要な書類が全て揃ったらオンラインのビザ申請をしていきましょう。
4.ビザセンターで顔写真や指紋の提出
→オンラインのビザ申請後には、カナダ移民局が指定するビザセンター(東京、大阪)で写真撮影、指紋の提出が必要になっています。
ビザセンターの予約をして、実際に足を運んだら、ビザ審査がいよいよスタートとなります。
5.ビザ発給&ご出発
→4番のビザセンター訪問後、だいたい3ヶ月程度(2024年4月時点の情報)が学生ビザの審査期間になっていますので、特に問題がなければ3ヶ月程度で学生ビザが発給されます。
ちなみに、日本で手に入る書類は正確にはビザそのものではなく、ビザの引換券(カナダの空港で提示する書類=Port of Entry Letter=POEレター)になりまして、カナダの空港(入国時)に正式なビザ書類が手渡される形となっています。
PALで知っておくべき注意点
今回から新しくスタートしたProvincial Attestation Letter(州の認証レター)=通称PALは、教育機関が申請の手続きをし、発行元は州政府となります。
そのため、PAL自体の細かな申請方法などは留学生が知らなくても大丈夫です。
しかし、申請方法は知らなくても、下記のような学校側の事情は頭の片隅に置いておいた方が良いでしょう。
→PALはビザの発行数を国が厳格に管理する性質上、再発行や訂正は一切できないルールとなっています。(もし再発行や訂正ができるような書類だと、ビザ発行数を管理するのが困難になるため)
→PALは再発行や訂正が一切できない書類のため、もし間違った情報でPAL申請をしてしまったら…その時点で「PALが手に入らない=ビザ申請ができない=留学ができない」となりかねないため、PAL発行依頼は慎重に行う必要があります。
→以前はギリギリの学生ビザ申請で「出発予定日にビザが間に合わない!」という場合には、急遽入学日を後ろにずらして、ビザが下りるまで日本で待つ事ができました。しかし、PALは一度発行をしたら一切の訂正ができないためビザ審査に時間が掛かっているからといって「入学日を後ろにずらす」という方法ができません。出発日に間に合わせるためには「余裕を持ってビザ申請をする」しか方法がないのです。
→「再発行や訂正がいっさいできず、発行したら残数が必ず1減ってしまう」という貴重なPALですので、学校側も気軽にPALの発行はできません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
PALは新しく始まった制度ではありますが、今後学生ビザの申請には必ず必要な書類になりますので、カナダの学生ビザを考えている方はしっかりとその制度や特徴について把握をしておきましょう!
もしPALについて気になる点があれば、留学ドットコムの公式LINEからお気軽にお問合せください。
おまけ(Q&A)
Q:観光ビザやワーキングホリデーの人でもProvincial Attestation Letter(州の認証レター)=通称PALは必要なの?
A:いいえ、ビザなしでの6ヶ月(24週)未満の就学や渡航(観光ビザ)やワーキングホリデーであればPALは不要です。
Q:「Provincial Attestation Letter(州の認証レター)=通称PAL」の発行で気をつけないといけない事は?
A:PALは再発行や入学日、コースの変更は一切できないため、PAL発行前にはしっかりと申込内容を決めておきましょう。
また、PALという新システムが増えてしまったため、カナダの学生ビザ申請はこれまでよりもさらに余裕を持った準備、申し込み、お手配が必要になります。
具体的には「学校入学日から6ヶ月以上残っていう状態でPALの発行依頼をする」ような形が理想です。(学校決定のためのカウンセリングやお支払いもありますので、入学日から数えて7ヶ月以上残っている状態でのお申込スタートが推奨です)