母国語禁止は逆効果?EOPの意外なデメリットとは?
留学する上で特に重要なのが学校選びですよね!
その学校選びをしている時に、母国語禁止ルール(イングリッシュオンリーポリシー=EOP=English Only Policy)の情報を見かける人も多いと思います。
そこで、このコラムでは語学学校で設定されている「母国語禁止ルール(EOP)」について詳しく解説していきます!
ぜひみなさんの学校選びの参考になれば幸いです。
イングリッシュオンリーポリシーとは?
まずイングリッシュオンリーポリシー(English Only Policy=頭文字を取ってEOP)とは、語学学校などで設定されている「母国語を喋れないでください(英語だけ喋ってくださいね)というルールの事です。
留学は貴重なお金と時間を使ってするものですので…きっとこんな風に考えている人がほとんどだと思います。
しかし、実際に学校探しをしてみると…「実はEOPを徹底してる学校の方が圧倒的に少なく、たった数校しかない」という事が分かります。
普通は「EOPがある=学校の中で英語しか話さない=英語を話す機会がたくさんある=英語力が伸びるはず!」と思うはずです。
また、「EOPを実施して英語が伸びやすくなるならどこの学校でもEOPやったら良いのに…」とも思うはずです。
なぜどの学校でもEOPを徹底しないのでしょうか?
逆にEOPを実施していない学校では、英語力は伸びない(伸び難い)のでしょうか?
こうしたいろんな疑問がスッキリするように、EOPのメリット、デメリットなどを含めて早速解説していきます!
EOPのメリット
まずはEOPのメリットをご紹介します。
EOPを徹底している学校では、その名の通り学内では英語でしか話すことができません。
これは生徒同士もそうですし、学校の日本人スタッフでさえ基本は英語でやりとりをすることになります。
ちなみに、学校によっては、このあたりは柔軟に「相談がある場合は日本語でもOKだよ」というところもあったりします。
実際に私が通ったカナダの語学学校はEOPを徹底していて、ホームステイの相談で日本人スタッフに相談へ行った際も「基本は英語で」というスタンスでした。
そのため、拙いながらも頑張って英語でホームステイの相談をしたことを覚えています(笑)
このようにEOPのメリットは「英語を喋らないといけない状況」ので、「苦労しながらも頑張って英語を喋る必要(機会)がある」という点になります。
実際に、私自身もこうした自分の状況や困ったことを英語で頑張って伝えたというのは「良い英語学習経験だったな」と思います。
また、各国の主要都市(人気留学都市)などでは、「学校に日本人が一定数いる」というのが一般的ですので、学内では日本人学生を見かける事も当然あります。
そのため、ついつい日本語が出てきてしまったり、日本人同士で固まってしまったりする現象も起きがちです。
しかし、もし学校でEOPが実施されていれば、相手が日本人であっても自然と英語で話す機会も増え、「これは英語で何と言ったらいいのだろう?」と思う機会や学習する機会も当然増えるので、より実践的な環境と言えます。
実際、EOPルールのない学校の場合、同じクラス内にいる他の国籍の学生同士が母国語で話す場面も良く目にします。
これは日本人だけではなく、他国でも言えます。
例えば「メキシコの学生とスペインの学生はスペイン語で話す」、「ポルトガル語とスペイン語は似ているので、ブラジル人とメキシコ人の学生も英語以外で話す」というケースです。
同じクラスにいる南米の学生同士が自分の知らない言語で楽しそうにお喋りしていると、少しだけ疎外感を感じることもあります(笑)
そして、そうした輪の中に入って行くことは、ほぼ不可能と言って良いでしょう。
学校の中で、共通の言語である英語をみんなで話すということ自体が、交流の輪を広げるきっかけとなるんですね。
EOPのメリット(まとめ)
・頑張って英語で喋る機会が増える
・どうやって伝えれば良いのか?と思う機会が増え、学習機会も増える
・全員が同じ言語を喋る事で交流の輪や機会が増える
EOPのデメリット
一瞬良いことづくしに見えるEOPですが…ここでEOPがあることで生じてくるマイナス面(デメリット)も見ていきましょう!
良い面もあれば悪い面もあるのが世の常です。
実は、EOPを実施していない学校、またはEOPを厳格にルール化しない学校は、下記のようなEOPによるマイナス面(デメリット)を懸念しています。
1. 英語初心者は黙ってしまう
留学に行く方は、英語初心者がほとんどです。
この記事を読んでいる人の大半が「自分の英語力にはまだちょっと自信がない…。」と感じているのではないでしょうか。
これから英語ができるようになりたいから英語学校へ行くのに、そんな方が「英語しか話してはいけない環境」に放り込まれたらどうなるでしょうか?
拙い英語力や単語を繋いで頑張って会話を成立させようと努力する方もいるでしょう。
しかし、たいていの英語初心者はEOPを徹底されると以下のような問題点に直面します。
そもそも最低限の会話が成立するだけの英語の基礎力や知識がないと、会話自体は成立しません。
相手の英語が聞き取れないと、会話をすること自体に委縮してしまうため、学校内ではあまりしゃべらなくなる傾向にあります。
そして放課後、自由になった途端に日本人同士で固まって解放されたかのように日本語を話しだします。
これは私がEOP徹底校に通っていた時、実際に目にした光景の一つです。
2. 英語学習者同士では正しい英語は身につかない
語学学校は英語を学ぶための場所です。
そのため、英語ネイティブの留学生はいませんし、レベルが上の学生であってもやはり英語は第2言語に過ぎません。
実は、英語の学習者同士でするつたない英語での会話効果は…「英会話に慣れることができる」程度のものなのです。
英語が第2言語の学生同士が学内でいくら英語を使って会話をしても、それがきっかけで飛躍的に英語力が伸ばすことは難しいですし、会話の質が高くなることもありません。
もし英語学習者同士で英語を喋っていて、英語力がメキメキ&ドンドンと伸びるのであれば学校や先生もいりませんよね?(笑)
一つ例を挙げてみたいと思います。
日本語で「あなたは大学生ではないのですか?」と聞かれた場合、一般的には下記のような答え方になります。
・大学生の場合⇒「いいえ、大学生です」
・大学生でない場合⇒「はい、大学生ではないです」
ただ、もしこれが英語で「Aren’t you a university student?」となると、
・大学生でない場合⇒「No, I am not a university student.」
が正しい答えとなります。
つまり英語の場合、答えがYes(肯定)ならYes。
No(否定)ならNoになるわけです。
日本人(ノンネイティブ)同士が英語で話す場合、「Aren’t you a university student?」と聞かれても大体は、「(大学生の場合)No, I am a university student.」、「(大学生で無い場合)Yes, I am not a university student.」と答えて、そのまま会話が成立してしまいます。
つまり、こうして外国人同士が英語で会話をする行為は、お互い間違いに気づかないまま間違った英語を使い続けることを意味します。
さらに、こうした間違った英語を使い続ける事で、間違った表現が自分の中にどんどんと吸収されてしまう事にもなります。
これは、間違った表現だけに留まらず、発音やイントネーションなども含まれます。
外国人同士で会話を続けることは、間違った表現を知らず知らずのうちに使って、相手の英語にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。
また、それだけでなく、発音やイントネーションなども、会話相手に大きく影響を受けます。
外国人の中には、ネイティブ並みのキレイな発音で会話する相手はほとんどいません。
つまり英語学習者とどれだけ喋っても自分の発音が良くなる事はないのです。
つまり、学校側がEOPを厳しく実施したとしても、英会話自体に慣れるスピードは早くなりますが、必ずしも正しい英語が身に着くわけではないというのは注意しておかなければいけません。
3. 留学費用が無駄になる可能性もある
EOPを徹底する学校の中には、既定の数を上回ってEOPを破った学生にペナルティを与えるところもあります。
本当に厳しい学校ですと…1回でも母国語を話した時点で「その日の授業は受けられず自宅に帰らされる」といった学校もあります。
せっかく高い学費を払って留学しているのに、たった1回母国語を使ってしまっただけでその日の授業が欠席扱いとなってしまうのは正直もったいないですよね…?
もちろんルールを破った自分が悪いと言えばそれまでですが、そうした環境がストレスにつながり、学校に行くモチベーションが落ちて不登校になる人も中にはいます。
最初の話に戻りますが、もしペナルティを恐れて学校内で会話をする機会が減ってしまっては、せっかくの留学生活も楽しめなくなってしまいます。
4. アジア人が増え、ヨーロピアンが減る
実は、EOPを前面に押し出した学校は傾向としてアジア人が増え、逆にヨーロピアンが減ります。
つまり、国籍の偏りができる事になるのです。
「EOPを強くすればするほど多国籍ではなくなる」という事が言えるんですね。
おそらく、読者の方は「え?留学に来ているんだから英語だけ喋って、母国語は喋らないようにした方が良いじゃん!」と思う人が多いと思います。
しかし、ヨーロピアンの人はそうは感じないのです(笑)
ヨーロピアンでは、小さい時から「自分の事は自分で決めなさい」、「自分のやりたい事は自由に決めなさい」と教えて育てられています。
そのため、EOPのような強いルールがある学校だと、ヨーロピアンの人は「ルールが多いのは子どもっぽい(自分はもう大人なんだ!)」、「自分の自由を抑圧されている気がする」と感じる方が多いのです。
一方で、私たちアジア人はルールが厳しかったり、宿題が多かったりする学校は「しっかり勉強できる学校なんだ!」と好印象だったり、それを魅力として感じる人が多かったりします。
そのため、ルールが多く、真面目な学校はアジア人が多くなる傾向にあります(面白いですよね。笑)
そのため、もしあなたが「真面目な雰囲気の方が良さそう!、自分には合っているんだ!」と感じるのであれば、EOPが強い学校が合っていると思います。
一方で「できるだけ多国籍な環境が良い」、「自分のペースややり方で勉強したい」と感じるのであれば、EOPにこだわらない学校選びが良いでしょう。
→多国籍な環境や国ごとの留学生の違いについて知りたい方は上記コラムも面白いと思います。
つまり、厳しいEOPを実施している学校を選ぶ場合は、自分が本当にその環境が最適なのかどうか、良く自分の自己分析をしてから決めることが重要です!
「友達が勧めてくれたから!」とか「インターネットで評判が良かった!」と言う理由だけで、気軽に学校を決めると後から痛いしっぺ返しが待ってる可能性があるので要注意です。
あくまで、自分のニーズや希望に合っているかが重要です!
「褒めて伸ばす」形式の新しいEOPもある
「EOP=破ると厳しいペナルティが課せられる」といったイメージを持つ方も多くいらっしゃいます。
しかし、学校によってはペナルティに怯えるのではなく、積極的に英語を楽しく話してほしいというコンセプトに切り替えている学校も出てきました。
つまり、EOPを「できる人を褒める」ためのツールとして扱っているのです。
例えば、カナダのバンクーバーにキャンパスを持つVGCでは「積極的に英語を使って、他の留学生の模範となっている」という学生には、パープルカードと呼ばれる勲章のようなカードが貰えます。
授業中に英語以外で話をすることを厳しく禁じられていること自体は変わりありません。
そのため、教師が注意をしても改善がない場合は、帰宅処分や退学処分の可能性もあります。
しかし、校内で母国語を話している学生を追いかけ回したりすることはせず、他国の学生と積極的に友達になり話をすることを促していくことで、英語を話さざるを得ない環境を作るような工夫も学校では行われているんですね。
大事なことはEOPを上から押さえつけられて守ってる限りは、その環境について行けない生徒も出てくるという事です。
EOPから良い効果を得るためには、あくまで生徒側の自主的な行動が最も重要だと言えます。
EOPが必ずしも英語力アップには直結しない
上記のように、EOPがあることが必ずしも英語の向上に直接影響するとは限らないというのが結論です。
既にどこかでカウンセリングを受けた方の中には、「EOPが厳しい学校だから、英語力が伸びますよ!」とアドバイスされて、「絶対にEOPが良い!」と信じて疑わなかった方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、もう一度冷静に考えてみましょう。
EOPがもし英語学習でベストな方法だとしたら、どの学校もEOPを厳しく実施していると思いませんか?
現実としては、EOPを厳しく実施している学校は、全体の1割あるかどうかです。
1割程度しか存在しないのだとすれば、必ずしもEOPは英語力アップの最善の策とは言い切れないことが理解して頂けると思います。
EOP環境が合うタイプの留学生は?
では、このEOP環境が合うタイプの留学生はどんな方なのでしょうか?
それは、全くの英語初心者よりも「少し英会話ができる自信がある人」が向いています。
なぜならEOPは自ら積極的に英語を話せる人であれば、その環境をプラスに活かせるためです。
一方、英語が超初心者で「EOPで萎縮してしまって黙ってしまう…」という方にはデメリットの方が大きくなります。
特に、ペナルティの厳しいEOP環境は最悪モチベーションの低下につながったりもしますので、そこがEOP環境を重視するかの分かれ目です。
EOPのメリット・デメリットをそれぞれ理解し、自分に一番合う環境はどちらなのか、しっかりイメージした上で学校選びをしていきましょう!