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カテゴリー:現地生活情報

それって差別かも?気をつけたい英語表現と一緒にカジュアルレイシズムについて知ろう

公開:2019/11/13 著者:伊東 さやか 4041 Views

「私は差別なんてしない!」

「そもそも日本には人種差別とかあんまりないし…。」

と、思っていませんか?

 

むしろ、これから初めて海外生活を経験する時には、「自分自身が差別にあったらどうしよう…。」という不安の方が大きいかも知れませんね。

 

しかし、実はわたし達が暮らすここ日本でも、差別は日常的に行われています。そして、多くの日本人が、 ”悪意のない差別的表現” を使っているんです。

こういった悪意なく、日常的におこなわれる差別を ”カジュアルレイシズム” と呼びます。(レイシズムとは人種差別を差す言葉ですが、人種以外の差別も含んでいます。)

今回は、変えていくべき意識を改めて考えてみると同時に、海外ではすでに非常識とされる差別的な英語表現も学んでいきましょう!

人種差別

「ハーフですか?」

これは、先日わたしが実際に質問された言葉です。それも自宅に来た飛び込み営業の方(つまり初対面!)に。

 

わたしがハーフかどうか、国籍がどこか、関係あるのでしょうか??

 

わたしは昔から、「日本人離れした顔だよね。」とか、「ハーフっぽいよね。」と言われることが多くあります。

もちろん言った相手に悪意がないことは分かっています。むしろ中には、褒め言葉として使っている人がいることも重々承知です。

ですが、言葉を受け取った側として、良い気分になることはありません…。見た目を指摘されたことへの嫌悪感もありますが、「ハーフですか?(=国籍は日本ですか?)」って、つまりはアイデンティティを土足で探ってくるようなことなんですから。

 

ちなみに、わたしに「ハーフですか?」と初対面で質問してきた営業の方に関しては、会社にクレームを入れました。「悪気がないことは分かっています。ただ、初対面で聞いて良い質問ではありません。」と。

「ハーフ」は和製英語ですが、「half-Japanese」や「mix」ならいくらでも使っても良いということではありません。

 

まだ関係性の出来上がっていない相手に対し、アイデンティティを決め付ける(探る)ようなことは言わない、という意識を持てば自然と使わなくなるはず。

 

さて、こうした人種や国籍への、言ってみれば ”ポジティブな差別’’ 。

ハーフのことに限った話ではありませんよね。

たとえば「黒人ってダンスがうまいよね!」、「日本人なのに英語がうまいよね!」などもそう。

 

“黒人だから” ダンスがうまい?そんなわけないじゃないですか。

“日本人なのに” 英語がうまい?褒めているつもりかもしれませんが、「日本人は英語が下手」という比較的ダイレクトな人種差別じゃないかなぁと感じます。

どんなものごとも、得意な人もいれば苦手な人もいます。「この人種は〇〇が得意(苦手)」という意識も差別を生み出す偏見のひとつなのです。

 

また、肌の色に関しては「言われなくても分かってるよ!」という人が多いと思いますが、欧米は日本以上に “White” や “Black” という表現に敏感です。

うっかり口を滑らせてしまった、なんてことのないように気をつけましょう。

 

人種や国籍に関して使うべきではない英語表現

・NiggerなどのN-Word

・Jew(ユダヤ系)

・Black people can~!(黒人は~がうまいよね!)

・Mixed kids are so cute!(ハーフの子はかわいいよね!)

・Where are you from?(どこの出身ですか?)

 

最後に挙げた「どこの出身ですか?」は、日本ではあまり差別表現としては取られません。

しかし多種多様なルーツを持つ人が暮らす欧米社会では、自分のバックグラウンドに好奇の目を向けられていると感じる人も多いのです。

もちろん、お互い留学生や旅行者同士なら、そういった質問をし合うこともあるでしょう。ハーフのことと同じですが、「見た目」で決めつけないようにしましょう!ということ。

 

体型差別(見た目に関する言及)

「ちょっと太りすぎじゃない?ダイエットしたら?」

この言葉が侮辱的で差別的な表現であることは、すぐに理解できるでしょう。少なくとも初めて会う人に言う言葉ではありませんよね。

「あれ?でもアメリカでは肥満体型だと自己管理ができていないと見られるんじゃなかった?」と思う人もいるかもしれません。

 

実は、それは古い情報なんです。現在(正確にはダイバーシティ促進に力を入れたオバマ政権以降)のアメリカ社会では、肥満をはじめとした体型への侮辱的発言は ”fat shaming” と呼ばれています。

プラスサイズモデルが起用されることも多くなり、ドラマの主役になる役者さんの体型もさまざま。こうした変化は、”肥満受け入れ運動” が広まった成果であると同時に、過剰なダイエット文化へ一石を投じたものとなりました。

…とは言っても、まだまだ見た目に関する発言は、日本でも欧米でも普通に使ってしまう人がとても多いんですよね。

 

例えば、「痩せててうらやましい!」や「背が高いね!」なんて言葉、日本でもよく聞きませんか?(わたし自身も、かつてはよく言ってしまっていました…。)

褒めているのだから問題がなさそう?いいえ、実はこの感覚こそがカジュアルな差別意識そのものなんです。

「痩せているは良い意味」というのは、裏を返せば「太っていることはダメ」という意識が根付いているということですし、そもそも体型のことをダイレクトに指摘すること自体が性別問わずセクハラです。

 

体型に関して使うべきでない英語表現

・Have you lost weight?(ダイエットした?)

・You are skinny/slender/slim.(ガリガリ / スレンダー / 華奢)

・You are tall.(背が高いね)

・You should put on some weight.(ちょっと太った方がいいよ)

 

相手のルックスを褒めたい時には、「その服の色、素敵!」、「ピアスが可愛いね。」など、アイテムに置き換えてみましょう。

体型については指摘しないこと。これを徹底するだけで、体型に関する差別・セクハラ表現を使わずにコミュニケーションを取れるようになります。

 

ジェンダー、年齢などの差別

欧米の履歴書には性別記入欄がない(男女の選択)というのは、有名な話です。

ちなみに生物学上の性別を差す言葉が ”sex” で、 ”gender” とは世の中の流れなどで作られる性別のことを差します。

 

例えば、「結婚したら料理をするのは女の役割」や「男はみんな外に出て働くべき」などは、ジェンダー概念における差別です。

 

最近では「#KuToo」のハッシュタグが生まれた職場でのパンプス(ヒール)強要問題や、メガネ着用禁止問題など日本における女性差別のニュースが記憶に新しく、これらは欧米メディアも取り上げています。

また、年齢に対しての偏見も、日常に潜む差別を生み出しています。どれだけの人が実感しているか、差別と認識しているかは分かりませんが、相手の年齢を知って ”平均的な生活のイメージ” に当てはめて話をしたこと(されたこと)ってあると思うんです。

例えば、わたしなら34歳という年齢から、「お子さんはまだなの?」なんて聞かれたりします。「余計なお世話です!」と、返せたらどれだけ楽か…。

 

逆にわたし自身も、これまで70代以上の方と会うと、ナチュラルに定年退職したという前提で話をしてしまっていたことがあります。

 

欧米では一部の職業を除いて、定年制そのものが禁止されていますし、社会に出てから学生に戻る人だって少なくありません。

それを勝手に「定年退職してのんびり暮らしているんだろうなぁ。」なんてイメージを持つのはただの偏見でした。

わたしたちが知らず知らずのうちに植え付けられた「男だか / 女だから」、「〇歳だから」という感覚は、もうぜんぶ取っ払ってしまいたいもの!

 

ジェンダー、年齢に関して使うべきでない英語表現

・he / she

・You look just like a real woman / man!(本物の女性 / 男性に見えるよ!)

・even though she’s a woman / man…(女性 / 男性なのに…)

・How old are you?(何歳ですか?)

 

「he / she」は、性別が分からないはずの話で勝手に決めちゃだめ、ということです。具体的には、以下のような感じ。

Aさん: I know a good lawyer. (良い弁護士知ってるよ。)

Bさん: Is he a divorce attorney? (その人って離婚専門?)

 

この場合、「弁護士」が男性か女性かなんて分からないはずですよね。ですので、正しくは「Is he or she~?」となります。

最近では「he or she」と使いたい時に、「they」を使うこともOKになってきました。

ただ、ご存知のように「they」は複数形ですので、文法的には間違っていますよね。そのため、まだ100%この使い方が定着した、というわけではありません。

 

それでも、文法より男女の性区分を避ける方が優先されているのはさすが欧米という感じ!

年齢を聞くことに関しては、もちろん状況に応じてなら問題ありません。ただし、年齢が関係ない場面(職場や学校)では控えるのがベター。わたしも海外生活で聞かれたことって無いと思います。

また、今年の7月には、 “性による区別表現” について、アメリカ・カリフォルニア州バークレー市議会でちょっと先進的な動きがあったことをご存知でしょうか。

 

例えば、「Manhole(マンホール)」や「Mother nature(母なる自然)」など、議会等公的な場で使用されている40もの英語表現が、 ”性別による区別のない表現” に置き換えることが条例で決まったのです。

これらの性別を特定する表現(他者に対する偏見を持った言及も含む)を、”Gendered language”と呼びます。

 

置き換え表現が決まったGendered languageの一例

・manhole → utility hole/maintenance hole(マンホール)

・bondsman → bonds-person(保証人)

・mother nature → nature (母なる自然)

・master plan → comprehensive plan / grand scheme(基本企画)

 

「何にも言えなくなっちゃう」??

明らかにマイナス的な意味であれば、誰でもすぐに差別的表現ということが分かりますよね。でもついうっかり使ってしまうのは、やっぱりポジティブ差別、カジュアルレイシズムなんです。

セクハラ問題が取り上げられると、必ず「もうなんにも言えなくなっちゃうな~!」なんて言う人いますよね。差別的表現においても、それとちょっと似たような感覚を覚えた人もいるんじゃないかなぁと思います。

ですが、「万が一、差別表現だったら怖いから話せない…。」なんて思う必要はありません。そもそも、これだけ差別的表現に厳しくなっている欧米にだって差別はあるんです。というよりも、日本以上に差別がひどい歴史的背景があったからこそ、敏感になったのです。

 

では、どのようにしたらいいのか?

まずは、自分の中にある差別意識に気が付くこと。日本のようにポジティブ差別に溢れている社会では、無意識レベルまで差別意識がしみ込んでいることがあります。わたしもそうでした。

自分がナチュラルに持ってしまう外見・国籍・性別・年齢などにつながるあらゆる意識に対して、「もしかしてこれって偏見かな?」と考えてみましょう。

 

そして、「なんでこう感じるんだろう?」と疑問を持つことも大切。偏見の背景には、かならず偏見を生み出したきっかけがあるはずです。

たとえば「女性なのに…。男性なのに…。」と感じてしまう理由。そうやって自分自身の中にある偏見や差別的意識をひとつずつ見つけて、変えていくことが重要なのではないかと感じます。

海外生活中に差別的表現を使ってしまうことが怖いなら、現地の語学学校などでつながった友人間で、トピックとして話し合うのもいいと思います。

 

信頼関係が築けた相手なら、「もしも差別的表現を使ってしまうことがあったら、教えて欲しい。」と伝えてみるのもいいかもしれませんね。

よく言われることですが、意識のアップデートは常にし続けたいものです!

 

【まとめ】 無意識による偏見を取り除くことが大事!

「自分にも差別意識があった。」 と気づくことは、正直ショックが大きいです。でも、「太っているから魅力が無い…。」とか「もう〇歳だから、〇〇しなきゃ…。」など、偏見と差別に自分自身が苦しんだ経験もあると思います。

差別や偏見をなくすことは、そういったコンプレックスから解放されるということでもあるんです。

「自分自身が生きやすい世界にする!」って思うと、意識を変えることにも勇気を出せるのではないでしょうか?

 

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