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カテゴリー:現地生活情報

ベジタリアンとビーガン(ヴィーガン)の違いとは?食の多様性について理解を深めよう!

公開:2020/06/21 著者:坂元 ちひろ 5087 Views

こんにちは、カナダ在住のちひろです。

私が海外生活で触れた印象的な文化のひとつに、「食の多様性」があります。

 

特に「ベジタリアン」と「ビーガン(ヴィーガン)」は、カナダに住み始めてから身近な存在になりました。

 

日本で暮らしていた頃から「ベジタリアンは肉や魚を食べない菜食主義者」という大まかなイメージはありましたが、その実態はさらに複雑だという事も分かりました。

そこで今回は、食肉文化を避けて生活する人々の様子をみなさんにご紹介したいと思います。私自身も短期間ではありますが、菜食生活に挑戦した経験があります。

その際に感じたメリット・デメリットについてもシェアしているので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

「菜食が身近な存在」とは?

コラムの冒頭で、「カナダに来てから、ベジタリアンやビーガン(≒菜食主義者)が身近な存在になった。」とお伝えしました。

以下では、私がどのような場面で食の多様性を実感したかについてお話しします。

 

・ホームステイ

留学準備を進めていたある日、滞在先を斡旋する代理店から、ホストファミリー選定の参考資料としてアンケートを渡されました。そこには、生徒側が「通常食or菜食希望」を記入する欄がありました。

ここで「菜食」を選択すると、特別食の調理に対応できるホストを優先的に紹介してもらえる可能性が高まります。私は通常食を選びましたが、それでもホームステイ先に到着した日には、ホストマザーから「食事はベジタリアン対応じゃなくて良いよね?」と念押し確認がなされました。

このホームステイのみならず海外生活では、このように食習慣を聞かれる機会が圧倒的に増えました。

 

→ ホストファミリー側のアンケート用紙。このホストはベジタリアンに対応できる家庭だと理解できます。

 

・レストラン

レストランで「何かオススメ料理はありますか?」と店員さんに尋ねる場面では、「あなたはベジタリアンですか?」と即座に確認された経験が度々ありました。

ベジタリアンでない旨を伝えて初めて、「それなら、これとこれをぜひ食べてみて!」と具体的にメニュー提案を受けました。

また、別の例として、私が働いていたお寿司屋さんで印象的だった出来事があります。

 

注文を取る時に、お客さんから「ベジタリアン用にお寿司を握ってほしいです。」と希望されることがあったのです。それも一度や二度ではありません。

 

今となっては、それらのお客さんは、キュウリ巻きやアボカドロールの提供を期待していると理解できます。

しかし、当初は、「お寿司屋さんに来る人はみんな、魚を食べることが大前提じゃないの?」と驚きました。

 

・スーパー

カナダでは、スーパーでも「ベジタリアン・ビーガン対応」と表示された加工食品や調味料が目立ちます。思い返してみると、日本で生活していた頃に、ネイティブカナディアンの英語の先生が「日本はベジタリアン商品を探すのに苦労する。」と話してくれたことがありました。

その話を聞いてから、私もスーパー内を意識して見回してみましたが、日本とカナダではスーパーに陳列されている該当商品の多様性が明らかに異なります。

カナダのベジタリアン対応商品の品揃えに慣れていると、日本での買い物に困るというのも納得できる事実でした。

 

ベジタリアンとビーガンの違いとは?

「ベジタリアン」と「ビーガン」という2つの言葉を耳にした時、ベジタリアンの方がまだ聞き慣れている感覚があります。どちらも大きなくくりでは「菜食主義者」となります。両者ともに、肉と魚を口にしません。

牛肉、鶏肉、豚肉、羊肉、マグロ、エビ、タコはもちろん、それらのエキスを元にしたダシ(鶏ガラ、豚骨、カツオ出汁など)で調理された食事も摂らないのが一般的です。魚を原料にした練り物(かまぼこやちくわ)も、彼らにとっては食べない物リストに分類される食品です。

次に、もう一歩踏み込んで、ベジタリアンとビーガンの相違点を見ていきましょう。

 

イメージとしては、「ビーガンは、ベジタリアンよりも食べられる食材が少ない。」と捉えると分かりやすいかもしれません。実は、ビーガンは乳製品と卵、はちみつも口にしません。

乳製品といえば、牛乳、バター、チーズ、ヨーグルトあたりがパッと思い浮かぶでしょう。しかし、それだけではありません。乳を原材料に含むアイスクリームやパン、ミルクチョコレートも避ける食生活を送っているのです。

卵については、ゆで卵や目玉焼きを食べないのは簡単に想像できるでしょう。でも、卵は調理過程でも頻繁に使用されます。天ぷら粉やパン粉とともに卵を用いた揚げ物、生地に卵を混ぜ込んだお好み焼きやパンケーキもNGです。

 

少しややこしいですが、「ビーガンはベジタリアンのストイックバージョンで、動物由来の食品は口にしない!」と覚えておくと良いでしょう。

 

ちなみに厳密には、ベジタリアンの中にも野菜と乳製品はOKだけど肉類と卵がNGな「ラクト・ベジタリアン」や、野菜と卵がOKで肉類と乳製品がNGな「オヴォ・ベジタリアン」なる分類も存在します。

この細分化を知ってからは、飲食店で就業中にベジタリアンのお客さんが来店された際、「卵は食べられますか?アイスはどうですか?」とそれぞれの菜食主義レベルの強度を確認する癖がつきました。

 

なぜ動物性の食材を避けるのか?

一部の人々が菜食主義を貫く理由は、ひとつではありません。アレルギーや宗教による食事制限はなんとなく察しがつくでしょう。他には、健康や環境保護の観点から食肉文化を避ける人もいます。

世の中には非常に多くの研究があります。野菜メインの食事が糖尿病や肥満、癌リスクの低減に良いとする論文があれば、地球温暖化に影響を与える温室効果ガスが農畜産業(特に肉類で主に牛)から多く排出されると唱えるレポートまであるのです。それらの研究を支持する人が、菜食生活に切り替えるのも一般的な理由とされています。

もうひとつ、動物愛護の精神が人々に菜食習慣を促すきっかけとなるケースもあります。

 

これからご紹介するのは、私の友人の例です。彼はイギリスの田舎町に住んでいました。牛や豚の飼育が身近にある環境で生活していた彼は、つい先ほどまで生きていた動物が殺されて人に食べられている様子を見て恐怖心を覚えたそうです。

その恐怖は、動物を食べる人間に向けられたものでした。その日以来、彼は食肉をやめ、レザー(革)・フェザー(羽)製品の使用も避けていると言います。

菜食主義者の中でも最も厳格な部類であるビーガンは、彼のように食品だけでなく動物の毛皮を用いた日用品や衣服の購入を控える傾向があります。

 

さらに、サーカスや動物園、競走馬のレース会場へも足を運びません。これらは全て、「いかなる動物も、人間に利用・酷使されるべきではない。」という考えに基づいています。

徹底して動物由来の製品を避けるビーガンに対して、ベジタリアンの一部には「食肉の摂取はNGだけど乳製品や卵はOK」とする人がいる事実はすでにご紹介しました。その理由としては、乳や卵を動物から回収する段階では、動物の殺処分は行われていないからです。

そのため、「動物の命を犠牲にした食肉文化だけを避け、比較的緩めに食事制限をしているベジタリアンも存在する。」と言うことができます。

 

→ 著者はついついお肉メインの食生活になりがちです。

 

菜食主義のデメリットとは?

菜食主義のマイナス点は、栄養学の面から検証した際に明確になります。ベジタリアンならまだしも、ビーガンともなると肉・乳製品・卵を口にすることができません。

そこで、栄養バランスを本格的に意識しない限りは、かえって不健康になる恐れがあるのです。例えば、タンパク質は野菜からは摂取しにくいでしょう。

 

乳製品を摂らないことでカルシウム不足に陥り、骨粗しょう症のリスク向上を招く事態も想定されます。

 

ビーガンが口にできるものでタンパク質やカルシウムを含む食品と言えば、大豆やナッツです。

食材が限られているせいで、レシピにも工夫を加えないと、毎日の食事に飽きてしまう可能性もあります。

ビーガン生活を充実した内容にするためには、正しい栄養知識と料理のレパートリーが必要でしょう。

 

菜食主義を試してみた!

私は過去に数ヶ月間、ベジタリアン生活を試した経験があります。メリットだと感じたのは、消化が早いので食後に体の重さを感じることがない点です。コレステロール値が低く、食物繊維やビタミンを摂りやすい側面も、食肉中心の生活とは異なります。

当時は日本に住んでいましたが、健康食ブームの只中だったため、一部のレストランやカフェでベジタリアンメニューに挑戦できました。

初めは、「菜食は薄味で物足りないのではないか?」と偏見を持っていましたが、ベジミート(大豆を肉のように加工した食品)の利用で、まるでお肉を食べていると錯覚するような料理に出会いました。また、クッキーやケーキ・ドーナツも、バターや卵を用いない「ビーガンスイーツ」として調理されていました。

 

意外に動物性の食品を生活から排除しても、食事の楽しみが半減することはありませんでした。

 

→ 菜食主義者は、甘味・酸味としては果物なら口にすることができます。ベジタリアン生活中はフルーツジュースもよく購入しました。

 

一方で、正しい栄養学の知識はやはり欠かせないと実感しました。特に私の場合は、「ベジタリアン生活は健康に良い!」という表面的な情報だけに浮かれて、食習慣を変更しました。そして、疲労感が出やすくなったり、肌荒れを引き起こしたりする結末を迎えました。

言うまでもなく、知識不足による栄養の偏りが原因です。また、日本では、友人との外食や家族と食卓を囲む場面で苦労を強いられました。徹底してベジタリアンのルールを守ろうとすると、調味料も含めて植物性であることが求められます。

また、日本国内でそこまでベジタリアン向けに厳密に対応している飲食店を探すのは至難の技でした。

 

また、菜食主義者向けのレストランを知っていたとしても、通常の食習慣に満足している人を巻き込むことに気が引けました。

私の場合は、アレルギーや宗教を理由にした食事制限ではなかったので、何がなんでも菜食を貫く必要はありません。

気心知れた仲ならまだしも、仕事で取引先と食事をする場面では、相手の気遣いに触れる度に申し訳なさを感じてしまいました。

 

【まとめ】 食の楽しみ方は人それぞれ

 

私は日々、ステーキや焼肉などのお肉メインの食事を楽しみに生きている側の人間です。そんな私が、菜食主義者の食生活を知った当初は、「毎日の食事が野菜だけで満足できるのかな?」と疑問に思いました。

自分の生活にベジタリアンの食習慣を取り入れてみて、菜食だけを継続する難しさも痛感しました。

しかし、菜食主義を貫いている人に話を聞いてみると、それがアレルギーや宗教によるものでない限りは、お肉や魚を食べられないことに対する苦痛感が全くと言って良いほど無いと判明しました。

 

彼らは、彼らの基準(健康、環境問題、価値観など)に基づいて、それぞれがベストだと考える食生活を取り入れているので、むしろその食事を楽しみ、誇らしい習慣だと捉えています。

食の多様性が通用している地域では、ベジタリアンやビーガンという選択肢が当たり前のように用意されています。レストランでもスーパーでも、「食べられるものが何もない…。」と途方に暮れることもありません。

無理なく食肉の排除を継続できる環境や知識があれば、健康被害を懸念したり自分の理念に反したりしながら食事をするよりも、よほど建設的な食習慣だと感じました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

参考文献

・Alina Petre.Vegan vs Vegetarian – What’s The Difference?
https://www.healthline.com/nutrition/vegan-vs-vegetarian

 

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