世界中の教育研究からわかった留学中に直面した課題と留学するメリットについて ~留学を終えた学生の声を聞いて~
今回の記事のテーマでは、世界で発表されている教育・外国語教育の分野における学術研究の結果を参考に「留学をすることのメリット」についてみていきたいと思います。
筆者は学部時代にニュージーランドに留学後、就職の道を選択せずに大学院へ進みました。
ニュージーランドで専門分野である外国語教育、第二言語習得論についてのこれまでの研究をしり、自分なりの問いを立てて学びを深めることの楽しさに気づいたのです。
大学院で研究をしていた2年間、本当に濃い時間を過ごすことができました。外国語教育研究や第二言語習得論という専門分野で研究を進めていましたが、これらの専門分野はあくまで研究分野の大枠。研究者として論文を完成させるためには自分が外国語教育や第二言語習得論の中で特に何について研究したいのかを具体的に詳しく決めなければいけませんでした。
私がまだ小学生だった頃にモンゴルからの留学生を受け入れていた経験や、これまたオーストラリアの小学校の先生をうちで受け入れた経験、そして自分自身の留学経験があったため留学や国際教育、異文化教育について興味があり、それらについて書かれた研究論文を分析し、関連分野の学会に参加して積極的に関わっていました。
一般的に、「留学すること=良い選択」という印象を持つ人は、外国語教育や言語教育に関わっていない人でも多いと思います。では実際に留学を経験した人のうちどのくらいの人が留学を良い選択と感じているのでしょうか?具体的にどんなことに対して良い印象を抱いているのでしょうか?留学を経験したからこそ、これから留学をする人たちに伝えたいアドバイスがあります。
そして、留学を経験した人たちが感じた「留学をする時に直面した課題」についてもみていきたいと思います。新しいことに挑戦する際、課題に直面するのは当たり前のこと。具体的にどのような課題に直面し、どう対処するのが良いのか知っておくのは大切です。
このような疑問を、実際に留学した人たちを被験者になってもらいインタビューやアンケート調査、面接、当時の映像や記録などを振り返り研究としてまとめる研究が存在しています。この研究分野の名称を一般的に「International Studies」と呼ばれます。
そこで今回はこの「International Studies」の研究結果をベースに、留学することのアドバンテージについて考えてみましょう。これから留学をする予定の人、留学に挑戦したい人、興味がある人は研究結果を参考にしたアドバンテージを知ることでますますモチベーションが上がると思いますよ。
留学中に学生が直面する課題とその対処方法
留学を経験する前に知っておくべきこととして、留学をすることによって得られるのは、メリットのみではありません。留学経験のある多くの人が留学中に苦労したことや直面した課題、問題について知っておくことで、それらを事前に対処する方法を知り、実際に現地で問題が起きた時の対処法を考えることができます。
それら課題や問題は多くの留学経験者に共通するものであり、自分一人だけが抱え込むべきものではないと気づくことで、一人で問題を抱え込むことを防ぐことができます。
たくさんある留学のメリットを知る前に、まずは留学中に多の人が経験する課題について研究からわかっていることをみていきましょう。
言語と専門分野の知識の壁
多くの留学生がまず直面する課題があります。多くの留学生は、留学先の国の言語と母語が異なるため第二言語として現地の言葉を学んでいます。
発音や文法、分構造やニュアンスなど母語と第二言語の違いが大きければ大きいほど第二言語の習得は困難です。ネイティブスピーカーと同じレベルの大学の講義や授業、ディスカッションやプレゼンテーションに参加していくのですから、相当のストレスがかかります。
また、現地の言語の使用能力は学校や大学の授業についていけるかどうかだけではなく、社会的な交流を行う際にも影響を及ぼします。
第二言語で上手くコミュニケーションが取れる人ほど、現地で友達を作るのも早く、現地のコミュニティに早く溶け込みます。反対に、第二言語でのコミュニケーションが上手くいかないとなかなか友人関係を作ることができず、ストレスに感じやすくなります。
現地の授業スタイルや作文のスタイルが日本と異なることにも戸惑う人もいます。どんな授業でも先生がずっと話していて生徒は聞いているということはなく、班でディスカッションをしたり質問攻めの時間があったり、隣の席の学生がガンガン自分に意見を求めてきたりすることは日常茶飯事です。
そんな時に、現地の言語能力が低いことにより自分の言いたいことが言えず、授業の進度についていけないと不安になってしまう人もいます。
対処法① 今の英語力でアウトプットできるように練習しておく
現地で使用される言語の勉強をしておくことは、みなさん当たり前に行っているはずです。現地に渡航するまでにできるだけ現地の言語のレベルを上げておきたいですよね。
そこで、留学に行く前の言語学習で意識して欲しいことがあります。現地の言語のレベルが低くても中くらいでも高くても、留学をする日は確実にやってきます。言語レベルがまだ目標に届いていないからという理由で、渡航する日を変更はできませんよね。
どんな言語レベルでも良いので、留学に行く前の時点で知っている語彙や表現をしっかりとアウトプットできるようにしておきましょう。
アウトプットできるようにしておくとは、「知っている語彙や表現を使って話したり書いたりして自分の意見を伝えるようになっておく。」という意味です。
留学前の言語学習でよくやりがちなのは、とにかく量を覚えたくて現地の生活で使いそうな単語や授業で使いそうな表現を、ひたすらインプットとストックしておくことです。もちろん大切な表現を覚えておくことは大切で、言語習得に必要なプロセスです。
ですが、語彙や表現をいくら貯めてもそれを使って表現しないと意味がないですよね。初めて自転車に乗るのに説明書を何度も何度も読んで、完全に乗り方のプロセスを暗記しただけでは、いざ自転車を目の前にして乗れません。
それと同じように、本当の会話をする時に、蓄えた語彙や表現の出し方を何も知らなかったら、せっかく蓄えた意味がありません。
留学直前の今の自分が蓄えた語彙・表現を、まずは文法が正しいかどうかは気にせずに使う練習をしておきましょう。おすすめの方法は、自分と友達のラインのトーク履歴の文章をそのまま英語に直してみることです。
日本人の多くの人がラインを連絡手段として使用していますよね。友達や家族とのラインの会話は、まさに日常会話の一番良い例です!それを英語でいうとしたらどう言えばいいか、今の自分が知っている単語や表現で表してみましょう。
まずは辞書や翻訳機能は使わずに。自分の力だけで表現してみましょう。しっかりと自分の脳にある英語の語彙と表現をフル活用して英語に直してみたら、ネットや辞書、翻訳ツールなどを使って実際にネイティブならどういうのかを確かめましょう。
このように今の自分が知っている英語を振り絞って文章を生み出す練習をしておくことで、知らぬ間に「英語脳」が育って行きます。
たくさん英語の蓄えはあるのに英語をアウトプットできない人の多くが、この「英語脳」を日常的に使っていないのです。だからいざという時、せっかくある英語の語彙や表現を活かして会話ができないのです。
たくさん知識を蓄えるよりも、語彙や表現の蓄えは多くはないけれど、持っている知識の多くを会話やライティングで使うことができる人になっておきましょう。その力がついてさえいれば大丈夫。なぜなら、留学で現地に行って生活を始めれば、嫌でも語彙や表現は増えていくからです。
対処法② 現地の授業スタイルや雰囲気を調べてみよう
もう一つ大切なことは、自分が留学する国学校、大学の授業スタイルや雰囲気を知ることが大切です。
日本の学校で教育を受けてきた私たちは、海外の学校の授業スタイルで学ぶ機会が多くありません。中には、全く英語100%の授業を受けたことのない人もいるでしょう。
海外の授業スタイルがどんなものなのか様子を知っている人でも、実際にそこで授業を受けてみないとわからないことがたくさんあります。
できれば、自分が渡航する国の学校の授業スタイルなど、入学する学校や大学のホームページなどで確認しておきましょう。留学前にスタイルを知っておくだけでも、日本の授業スタイルと現地の学校の授業スタイルのギャップが小さくなるはずです。
私の場合、ニュージーランドの語学学校との授業中、そして講義中は生徒から先生、生徒から生徒への質問のオンパレードでした。授業中いつでも質問がバンバン飛び交います。
また、日本の学校にいたら聞くのを躊躇するような小さな質問や素朴な疑問でも、何も臆することなく聞く学生たちの姿は素敵で、とても心地いい学習環境でした。同時に、自分もその波に乗っていないと置いていかれるというような焦りも感じつつ、授業に参加していたのを覚えています。
ディスカッションの時には、学生同士の意見が強くて一見口論しているかのように聞こえることもしばしば。日本の学校ではほとんど見かけませんが、学生たちが授業のテーマやトピックについて自分の意見とその根拠をしっかりと持っているため、このようなことが起こります。
相手の反論や意見をしっかりと聞いた上で、反対意見を根拠と共に述べているので口論に聞こえますが、これは真剣に授業を受けている証拠です。
そんな授業風景に、最初はギョッとする日本人も多いでしょう。私は日本の大学にいる頃から、物事やテーマをクリティカルにみて判断し、意見を持つように意識していました。
そのため、何とか海外の授業スタイルについていき、留学の後半には言語レベルも上がったことで、真剣なディスカッションに参加できるようにもなりました。今考えても、留学中はとても有意義な授業を受けていたと思います。
日本から飛び立ち、さまざまなバックグラウンドを持つ学生たち、プロフェッショナルな先生たちとクラスルームで授業を受けるのですから、何らかの驚きやギャップを感じることがあるかもしれません。
その時、それらをネガティブに捉えることのないように、むしろその驚きやギャップをいい機会だと捉え、楽しんで学習ができるよう事前に現地の授業スタイルを知っておくといいですね。
留学にはトラブルがつきもの!
今回の記事では、International Studiesという国際教育についての研究結果や留学経験者の声を参考に留学中に起こりうるトラブルや問題とそれらの対処方法について紹介してきました。如何でしたでしょうか?
留学にトラブルや問題はつきもの。留学生の多くがさまざまな困難に直面します。でもそれを乗り越える対処方法はたくさん存在します。困難なことを困難と思い込まず、解決方法を探すことを諦めないことが留学成功の秘訣です。
留学に行く前に、留学経験者が経験したことを参考にどう対処すればいいのかをしっかりと理解しておけば、現地で問題が起きた時のヒントになりますね。