どうして私はフランスの大学院に留学したのか? – フランスの大学進学の仕方
私は現在フランスの大学院に正規留学をしています。
大学はイギリスだったのですが、まずは修士課程2年生に編入し、その後博士課程まで進みました。
留学と言えば英語圏に行く人が多いと思いますが、今回は私がどうしてフランスの大学院に進学したのか、その理由やフランス留学の利点や欠点をお送りします。
博士課程に進学したかった
先ずは「どうして大学院に進学したのか?」ということからお話したいと思います。これはシンプルに大学を卒業した後にさらに専門的に修士課程で勉強したかった、というのが最初の理由です。
私はイギリスの大学を卒業し、その後しばらくしてから修士課程で勉強するためにイギリスの大学院で修士課程を修了しました。その後、博士課程にも進学したかったのですが、イギリスなど英語圏の大学や日本の大学は学費が高かったこともあり断念しました。
大学や学部にもよりますが、年間5,000~10,000ポンドかかります。最低でも100万円以上年間に掛かってくるということです。修士課程は1年間なので学費も1年分ですが、博士課程は最低でも3年かかり、さらに論文や研究の進み具合で年月が異なってきます。もちろんこれに更に生活費などもかかってくるとさらに費用がかさみます。
イギリスの大学院でも1年間の学費でしたら貯金をしてなんとか留学できたのですが、3年間の学費を払う事、そして3年以上かかるかもしれないという事でその留学費用がいったいどのくらいかかるのか分からなかったから…という金銭的問題がありました。
ですが、実はお隣の国フランスの大学、大学院への正規留学の場合、学費は年間500ユーロ以下で済みます。博士課程は同じく最低3年、もちろんそれ以上かかるのが当たり前ではありますが、それでも年間500ユーロであれば金銭的にも継続可能ですし、生活費を考えても仕事などをしながらでも勉強の継続が可能だと思いました。そのため、留学先をフランスに決めました。
ちなみに学費の詳細ですが、私が入学した時の規定は学士170ユーロ、修士課程243ユーロ、 エンジニア601ユーロ 、博士課程380ユーロ、これに保険の費用などが加わり、概ね500ユーロ以下ほどを支払った記憶があります。(2019年当時)
進学先をフランスにしようと思ったきっかけ
イギリスの大学院修士課程を修了した後、博士課程まで行きたいと思ったのですが、この先3年間以上の学費と生活費を払い続ける金銭的余裕はなく、どうしようかと思っていた頃でした。
フランスに遊びに行き、その時にフランスの大学にも足を運んだのですが、ふと「フランスで勉強したいなあ。」と思いました。もちろん、そんな安易な考えで大学進学ができるわけでもありませんが、自分の直感というのは大事だと思います。
イギリスでは、外国人学生とイギリス人学生(ヨーロッパ人学生)学生の学費にも差があり、外国人の学費はかなり高額です。一方、フランスの大学は外国人もフランス人も同じ学費で、かなり安く、この先も勉強を続けるにはフランスの大学に編入して再度勉強を続けるしかないと、フランス留学を決めました。
また、フランスの大学は高校卒業資格さえ持っていれば誰でも入れるシステムになっており、外国人学生の場合はこれにフランス語の能力が求められます。大学院は書類選考などがあるので、多少異なりますが試験などはありません。
私の場合はフランスに遊びに行った時のついでに大学の学部に直接交渉をして、フランスの大学の日本語学科修士課程入学の手続きの準備をしてきました。博士課程に入学したかったのですが大学の先生に「あなたがフランス語で論文が書ける能力があるか分からないから、とりあえず修士課程2年生から編入してください。」と言われました。
1年間、また修士課程を勉強することや論文を書くことは躊躇しましたが、それでも時間はかかるけれどこの学費なら自分で稼ぎながら生活もしていけると思ったので、修士課程から改めて勉強することにしました。
人生において修士課程が2つになっても無駄にはなりませんし、結局この時に取得した日本学の修士のお陰でその後の仕事などにもある程度役立っています。
ただし、今年から外国人学生の学費をヨーロッパ人学生の料金よりも値上がりするということになり、これは大学によって規定を決めることができるそうです。
2019年からの外国人学生は、学士で2,770ユーロ、修士課程は3,770ユーロになりました。(参考: CAMPUS FRANCE https://www.campusfrance.org/fr/cout-etudes-superieures-france-frais-inscription)
フランスの大学・大学院の入学方法
先ほども書きましたが、日本人がフランスの大学に1年生から入学する場合は、日本の高校卒業資格 + フランス語DALFの試験のレベルによって決定します。フランスの大学は全入なので、日本の方で高校卒業資格があれば、フランス語の能力だけでフランスの大学に入学できます。
学部によって、フランス語の規定レベルはB1~C1のレベルが要求されるケースが多いです。理系ですとフランス語能力がそこまでなくても大丈夫なことや、文系だとやはりフランス語能力がある程度求められるケースがあります。
フランスの大学院へ入学する際は人数制限があることも多く、申し込みをしてから書類審査があります。一番良いのは、私のように大学の学部に直接交渉してみるのがオススメです。絶対ではないですが、ただ書類だけでの応募よりも、直接会って話ができる方が良い事もあります。
博士課程の場合は担当教官を見つけなければならないので、大学に申し込みをするというよりは、自分の専門に合った先生を探して、研究や論文の担当教官になってもらうようお願いし、その先生からの許可が出ると大学院の博士課程に入学できるようです。
また、大学の専門から大学院で勉強する専門を変えるケースでは、学年を落とせば編入できるケースもあります。私の場合は、大学で心理学を、その後心理言語学系の言語学習をイギリスの大学の修士課程で専攻していたのですが、その後フランスの大学院では日本語学科に入学したので、一応専門は変更したことになります。
その後、今度はフランスのフランス語学習、外国語学習の学部に移動しました。こちらはイギリスの大学の専門と近い学部だったので、この編入の場合は今まで勉強したことがある程度考慮されるので、オプション科目などが免除されました。
入るのは簡単だが卒業が大変なフランスの大学
外国の大学と日本の大学を比べた場合、「日本の大学は入るのは難しいが、卒業は比較的簡単で、外国の大学は入るのは比較的簡単だが卒業するのが大変。」とよく言われます。
同様にフランスもフランス人学生も外国人学生でも高校卒業資格のバカロレア、(日本の高校卒業資格)さえ持っていれば誰でもが大学に入れます。ということは、入学の際の選抜がありません。
そのため、外国人学生にとって語学の問題はありますが、入学は比較的簡単です。問題点としては大学1年生の人数はかなり多く、教室に学生が入りきれない学部や学科もあります。また、入学してから試験でどんどん落第させられるので、入学は簡単ですが、その後がかなり大変です。
フランスの学士課程は3年間ですが、例えば日本語学科の例で説明すると、1年生は最初200人ほどいるそうなのですが、最初の試験で、半分になり、2学期にはまたその半分…。2年生になる頃には50~60人ほどになっているとも言われています。
また、3年生になると、そこまで落第者が多くなり、残っているのは30~40人になるようです。何度か2年生を落第したり、3年生を落第したりするケースが多いので、3年間で問題なく卒業する学生は少ないのが現状です。
また、最初に他の学部に入ったものの落第して、他の学部に移動するケースもあります。私の知っている学生の中には最初法学部に入って落第し、日本語学科に来た子や宇宙工学を勉強始めたけれど落第して、日本語学科に来た子などもいます。
文系から理系に移動するのは難しいそうですが、理系から文系に変える子は比較的日本語学科では落第せずに進学していく子もいます。
フランス人学生でも大変なので、日本人学生がフランスの大学に正規留学した場合、卒業までの道のりがかなり大変だという事は容易に想像できるかと思います。
大学院レベルであれば学生数も比較的少ないフランスの大学
大学院レベルになると、既にある程度の選抜がされていますし、ちゃんと勉強したい学生が集まっているので、学士よりも勉強しやすい環境です。
また入学も人数制限されているので、クラスも問題もなくきちんと授業を受けることができます。大学とある程度同じ専門を勉強したい場合は、そのまま進学できる可能性があります。
また、博士課程にもなれば担当教官とのやりとりがメインになり、その他にセミナーや他の学部の様々な授業が少人数で受けられ、しっかりと授業を受けることもできます。
博士課程は担当教官を見つけることから
私はフランスでも修士課程から入学し、そこで担当教官を見つけて博士課程に進学したのですが、博士課程は自分の専門を見てくれる担当教官さえ見つかれば、大学の博士課程に入学しやすくなります。
私の専門は語学教授、語学学習、特に日本語学習なのですが、フランスは日本語研究者も多く、そういう意味では私の専門の勉強がしやすい環境だったとも言えるでしょう。
日本から正規留学する学生さんの中では、日本で修士課程まで修了し、その後にフランスの大学の修士課程に編入するケースが多いようです。
修士課程が修了してすぐに博士課程に進もうとしても、自分の専門の担当教官を見つけるのも困難なため、とりあえず修士課程から編入をする方が安全だからと言っていた学生さんがいました。
学費が安い分、ここでの1年、2年は無駄にはなりませんし、フランスでも修士が取得できるということは決してマイナスにはならないということなのでしょう。
語学の問題もありますし、比較的入りやすい修士課程からスタートし、博士課程の研究のための担当教官を、時間をかけてゆっくり探していくというのも賢明な方法かもしれません。
住居補助も出るフランス
長期学生であれば、外国人であってもフランスから住宅補助も出るのがフランスです。と言うことは、生活費もイギリスに比べてかなり安く済むと言うことです。その料金はまちまちですが、例えば、私が住んでいた300ユーロの家賃に対して、100ユーロほどの補助が出ていました。
ちなみに、大学にも多くの寮があるのですが、数に限りがあり絶対に入れるとは限りません。また、申し込み時期がかなり早い時期にあるので、留学生の場合は最初の年から大学の寮に入ると言うことはかなり難しいでしょう。
2年目になれば大学の寮にも申し込みやすくなりますし、多くの学生用シェアアパートなどもあります。どんなところに住んでいても、手続きをすれば国から住宅補助が出るので、外国人学生にも優しい留学先です。
語学の壁
とは言え、やはり語学の壁という問題があります。英語ならなんとか、でもフランス語は…という方もいると思います。
しかし、最近では英語でも可能な学部、特に理系では英語で論文を書くことが可能な学部も多くあるようです。
ですので、フランス語ではちょっと…ということでフランス留学を諦める必要はなくなってきています。現に博士課程の学生の中には、フランス語ができないという学生もいます。
生活面を考えればフランス語もできるに越したことがないですが、フランス語ができなくてもフランスの大学への入学も可能ですし、学部生も大学院生も学費が安いのが魅力です。
※ただし、学部によっては高額な学部も存在します。
英語圏でない国の留学も多くの利点がある!
私の場合はフランスに留学した理由一番の理由は金銭的問題でしたが、やはり金銭的問題と言うのは多くの方が抱える問題の1つではないでしょうか?
学費も安く住居補助も出るフランスは金銭的に考えて留学しやすい国だったとも言えます。
大学のシステムを比較すると、フランスの大学は英語圏の大学に比べるといい加減な面もありますが、それでもゆっくりでもいいから勉強をし続けたい方には適した国とも言えます。
また、専門によっては英語圏の大学ではなく、英語圏以外の国で勉強したいと言う方もいるのではないでしょうか?
留学と言えば英語圏のイメージがありますが、周囲との差別化と言う意味でも目立つでしょう。
グローバリゼーションと言われる現代、英語以外の言語ができることも有利になることもあります。
また、英語圏でなくても英語で学位を取得できる大学や学部も多く存在しているので、将来的な留学先として検討してみるのはいかがでしょうか?