ニュージーランドの家族のさまざまな形 ~ホームステイを通して見えたもの②~
前回の記事では日本ではまだ馴染みの少ない「事実婚」という結婚制度と、なぜニュージーランドでは事実婚を選択するカップルが多いのかを特集しました。日本と比べてニュージーランドは税金が高く、福祉制度が充実しています。また、男女格差も少なく、女性の社会への進出も早かった国です。その分、万が一離婚してしまった時の助成金制度もしっかりと確立しています。
さらにニュージーランドでは、法律婚を選択した後に離婚をする場合と、事実婚をした後に関係の解消をする場合に、後者の方が金銭的、精神的な負担が少なく済むためもともと事実婚を選択するカップルが増えています。
女性の社会進出によりシングルマザーになったとしても不安を抱えることなく家計を支えていけること、国からの手厚い手当も合間って、「パートナーと別れて生活をする」ということに対して日本ほどマイナスなイメージがないのかもしれませんね。
逆にいうと、「いつでもパートナーと別れる可能性がある」という前提で事実婚を選択しているカップルも多いということ。
事実婚を選ぶカップルはシンプルにお互いのことが好きだから一緒にいるし、お互いを尊敬できなくなったり、合わないと感じたりした時には法的手続きなく簡単に関係を解消できるところにメリットを感じているのでしょう。
今回は、私が留学中に聞いたり体験したりした「事実婚」に関するエピソードを紹介したいと思います。日本とニュージーランドにおける結婚に対する価値観の違いを体感してもらえるのではないでしょうか。
留学生の友人のホストファミリーが実は事実婚だった話
日本の大学から一緒にニュージーランドへ留学した友人のホストファミリーが事実婚であったという話は滞在中によく聞きました。
友人の1人のホストファミリーはお母さんがデザイナー、お父さんは会社勤めでした。息子さんがいますが成人しており、友人がステイしている時は既に自立してオークランドで一人暮らしをしていました。
デザイナーとして自身のキャリアを着実に積み上げているかっこいいホストマザーと、毎日会社勤めで働くホストファザーでした。
友人が言うには、2人は本当にお互いのことを尊敬していて、毎日のスキンシップやコミュニケーションは欠かせないそう。
お互いの存在を認め合って大切に思い合いながら生きている素敵なホストファミリーだったようです。
ある日、友人が夕食中に日本の家族について話をした流れで、ホストファミリーの馴れ初めを聞く機会があったそう。その時に初めて、ホストファミリーは事実婚を選んで共同生活を送っていると知ったのだとか。
友人はその時、「法律婚」だから幸せとも限らないし、「事実婚」だと不幸になるとも言えない。その逆もまた然り。大切なのは結婚制度ではなく、お互いを大切に思っている心だと言うことを改めて感じることができたと言います。
日本で「事実婚です」と聞くと、「それって大丈夫なの?」とか、「法的な手続きなどで損したりしないの?」と心配されるケースもあるようですが、ニュージーランドでは安心して事実婚を選択できる設備が整っているようです。
友人の話を聞き、「結婚」はお互いを好きでいて、信頼し、共感しあった上で成り立つものだと改めて実感しました。
現地で仲良くなったニュージーランド人の友達の両親
ニュージーランドで経験した事実婚のエピソードはほかにもあります。私が現地で通っていた大学の学部生で、日本語を勉強しているニュージーランド人がいます。彼女は生まれも育ちもニュージーランドの首都ウェリントンで、お姉さんとお父さん、お母さんの4人家族です。
ニュージーランドの大学を卒業して、その後は大好きな日本で就活をし、現在は東京都内で働いている友人です。現在も本当に仲のいい友人の1人で、日常のことから仕事の悩み、ニュージーランドのことまでなんでも話せる仲です。
ある日彼女と遊びに出かけた時のこと、話題はお互いの両親のことになりました。彼女の両親には、ニュージーランドに留学中に一度だけ会ったことがあります。小さいことは気にしないとても心の広いおおらかなお父さんと、ベラのことを本当に大切にしているのが言動から伝わってくる、素敵な2人でした。
彼女の両親がどうやって出会ったのか、馴れ初めを聞いてみたところ、なんと彼女の両親も事実婚であることを知りました。なんでも、「法律」というものに縛られた上で好きな人と結婚をするということ自体、両親の考え方と一致しないから事実婚を選択したとのこと。
海外では、自分の人生に対する価値観やモットー、自分の理念をしっかりと持って生きる人たちにたくさん出逢います。彼女の両親も、自分たちの価値観を何よりも大切にした上で人生を一緒に過ごすことを決定したのでしょう。
まだまだ「結婚=法律婚」の構図が当然だと考える人の多い日本ですが、ニュージーランド人の人生観、個人の意志の強さについて考えさせられた経験でした。
ニュージーランド人の両親や親戚との関わり方
ニュージーランド人は休日になると知人や家族、親戚を呼んでパーティーやBBG、食事会をするのがお決まりのスタイルです。
私も留学中何度もホストファミリーや学校の友人、時には担任の先生の家に呼ばれて素敵なパーティーに参加しました。
あるパーティーに参加した時のこと。そのパーティーは日本から一緒に留学しに来た友人のホストファミリーが招待してくれたものでした。
友人のホストファミリーの家族構成はホストマザーと長男、次男、そして末っ子の女の子、ペットの猫ちゃん。ホストマザーはシングルマザーとして女手一つで2人の息子と娘3人を育てていました。
とっても明るくフレンドリーなマザーで、私が自己紹介をすると友人とはどこで出会ったのか、日本ではどんな勉強をしているのか、ホームステイ先はどこかなどたくさん質問をしてくれました。
長男と次男は10代後半で、少しシャイな様子。それでも食事中は日本に興味があるからか、さまざまな質問をしてくれました。一番仲良く過ごしたのは末っ子の女の子。当時まだ8歳だった彼女はとってもおてんば。上に2人もお兄ちゃんがいるため8歳でもとっても大人っぽくて、性格も強いです。
パーティーには、その他にもゲストが来ていました。その中にはホストマザーの元旦那さんの姿もありました。そして驚くことに、元旦那さんの現在の彼女さんもそのパーティーに出席していたのです!
実はホストマザー自身も、このパーティーに現在お付き合いしている人を招待していました。日本では相当のことがない限り、離婚して別れた元パートナーとその後も仲良く会うことは多くありませんよね。
しかし、ニュージーランドでは離婚した元パートナーとその後も親友のような付き合いをしている人たちが多くいるのだそうです。「夫婦」としての関係は終わりにしたとしても、人生の中で友人として付き合いを続けていくことまで止めることはしないようです。
結婚や家庭に対する多様な価値観があるニュージーランド
今回は、「ニュージーランドの家族のさまざまなかたち」と題して、私が留学中に聞いたり体験したりした「事実婚」に関するエピソードを複数紹介してきました。
国が変われば結婚制度や結婚に対する価値観、概念も変わるものです。留学として現地で長期間生活をすることで、その国の結婚制度やさまざまな家族の形を垣間見ることができます。そして、それはその国の文化や歴史的背景を知ることに繋がります。
日本と異なる結婚に対する概念が存在すると言うことを知っているだけでも、ニュージーランドについてもっと詳しくなれたそんな気がしますね。