私がゼロから語学学習を始めたら2カ月間でどのくらい語学ができるようになったのか体験談を紹介
語学学習者にとって一番知りたいことは、「どのくらい勉強したら語学ができるようになるのか?」ということだと思います。
ただし、この質問に関して思うことは、どのレベルをゴールにするのかにもよるでしょう。
例えば、日常会話ができるレベルなのか、その言語を仕事でも使えるくらいのレベルなのか、もしくはTOEICやTOEFLなどで何点取るのか、などその目標によっても異なります。
日本では英語を中高で最低3~6年間勉強していることもあり、「語学ができるようになる = 英語が話せるようになる」という意味であることが多いという印象があります。
以前私が働いていたイギリスの語学学校は、話すことに力をいれている学校でした。そこで働いていた時に、「どのくらいで話せるようになるのか?」と言う質問は、生徒さんからよく聞かれていた質問の1つでした。
語学学校スタッフはもちろん英語ができるので、一応のお手本として「私自身がどうやって、どれくらいで英語ができるようになったのか?」ということを聞かれる機会も少なくはありませんでした。
この質問の私の答えは「人それぞれです。」と答えていました。と言うのも、各個人の「どのくらい話せるようになるのか?」というレベルの認識が異なり、一概にこのくらいというのは難しいからです。
どのくらい勉強すべきなのかは、学習時間そのものなのか、もしくは学習方法なのか、語学学習はいろんな要素が関係しているため、簡単に答えが出せない部分があります。
どのレベルを求めているのか?
「話せるようになる。」というのはその人にとってどのレベルを指すのか、ということで変わります。ゼロから語学の勉強を始めた場合、多少コミュニケーションが取れるようになっても、自分の語学レベルの向上を実感することができます。
また、日常会話ができるレベルから、ネイティブレベルを目指す場合は、目指すハードルも高くなり語学の上達が実感しにくいこともあります。
とくに中級レベル(日常会話)というのは幅広く、分かりづらい気がします。日常会話とは、簡単な質問や回答レベルだけではなく、時に政治や経済、宗教といったトピックを話す場面もあり、それも全て日常会話の範疇に入るためです。
語学が話せるようになるということで考えると、とりあえず外国で意思疎通ができて、ある程度生活ができるようになるレベルというのが一つの基準だとは思います。
どのくらいとは時間数だけではなく質にもよる
「どのくらい勉強すれば良いの?」と質問された場合は、その時間数だけではなく、どうやって勉強したのかにも関係します。
つまり、その語学学習の質も関係してきます。語学学習にはインプットが大事だと言われていますが(KRASHEN 1982、1985)それだけではなく、その質も語学習得に大きく影響してきます。
語学学校などに通って勉強したり、自宅で教科書などを使って独学で勉強したりするフォーマルな言語学習が一般的な勉強の定義になります。しかし、語学学習に関してはそれだけではなく、ネイティブと会話、学習言語で映画を観たり、テレビを観たりするインフォーマルな学習方法もあり、一概に語学学習を時間計算できない事もあります。
例えば、インプットの量を多くとは言ってもシンプルな英会話の繰り返しや、意味の分からないラジオなどを聞き流ししているだけでは、語学習得には有効的でない事もあります。
これはインプット自体が自分の理解できる(理解しやすい)インプットであるべきたと言われているからです。(前出KRASHEN)
インターラクション、相互的インプットも語学学習には有効と言われていますが、ただの会話ではなく、会話の中に言語理解を高めるための、意味確認、聞き返し、繰り返しなどの作業が入るため、そういった行為が言語理解力向上の手助けになるとも言われています。
語学学習は量だけではなく質にもよるので、一概にこれだけ勉強したら語学ができるようになりますよ、とは言えません。
前回記事でもご紹介した、目安として学習時間とそこに達するまでのレベルというのをヨーロッパの基準を通して見ていきたいと思います。
このレベルを参考に自分が目指す語学力というのを考えると良いでしょう。
それでは留学中にどうやって語学を勉強したら良いのか?英語、フランス語、スペイン語、イタリア語を学習した筆者の経験を元にお伝えします。
言語学習に必要なものは?
言語学習に必要なことは、インプットが重要だと言われています。もちろん、それだけでは言語習得にはつながらないのですが、言語習得において重要なポイントの1つだと言えます。
単純に言語学習においては、なるべく多くのインプットが必要だと言うことです。第二言語習得の研究の第一人者であるKrashen氏(クラシャン)は、読書が大事だと言っています。
ただし、この理論は元々1970年代に始まった理論なので、今で言うとそれがインターネットでも代用になるとも感じます。
しかしながら、多言語話者で知られるKafumann氏は、話すこと、いわゆるアウトプットが大事だと言っています。
インプットによって単語量などは増加しますが、「誰かと話さないと言語は上達しないんじゃないのか?」と言うのが彼の意見です。
この部分に関しては、日本人は中高でインプット中心の教育を受けてきて、アウトプットする機会が少なく実際話せない人が多いので、実感として理解できる人が多いはずです。
どうやってインプット量を増やすのか?
その国に住んでいるのか、もしくは日本に住んでいるのか、で言語学習は違ってきます。もちろん、その言語を学ぶ国に住んでいる方が、インプットの量が圧倒的に多く、言語学習にはもちろん有効でしょう。
もちろん、インターネットのある今のご時勢、YouTubeなどでも外国語のプログラムが観て聞けるので、比較的外国語のインプットを多く入れることができます。
実は私はフランスの大学院で、「フランス人のインフォーマル日本語学習」という研究をしています。
フランス人がどれだけ日常生活において日本語のインプットを受けいれているのかという調査では、多くのフランスの日本語学習者が日本語の漫画やアニメ、さらにはドラマや歌番組などをインターネットで観ているということが明らかになっています。
日本語が上手な外国人が増えていますが、「アニメやマンガで日本語を勉強しました。」と言う方が多くいます。実際、私が日本語を教える大学でも、同様に答える学生がいます。
そういう意味では昔に比べれば、インターネットのお陰で日本にいながらも外国語を耳にする、目にする機会は増えたと言えるでしょう。
インターラクション的インプット
インプットには、ただただ自分が視覚的、聴覚的に得るものもありますが、他者との会話で得るインターラクション的なインプットもあります。
例えば、その国に住んで言語を学習する場合、語学学校に行ったり、アルバイトをしたり、現地の友達を作ったりして、その言葉を会話を通して勉強していくことができます。
インターラクション的インプットは、その言語が分からない時に聞き返したり、言い換えたり、繰り返したりして、その言語の理解力を高めることができます。
そういう意味では、インターラクション的インプットの方が言語学習には有効とも考えることができます。
海外にいる方が学習言語でのインターラクション的インプットが多く得られると考えられる海外留学は、言語学習に最適だと考える人もいます。
言語学習は、確かに学習言語のインプットの量に比例しているでしょう。それは、もちろん語学学習時間にも比例するという事です。
海外留学をして日常会話ができるまでの期間
短期間、長期間の語学留学で、どのくらい語学ができるようになるのか。そう聞かれた時、私の経験上では語学留学をして、語学学校に通っているという設定だと、留学してから2~3ヶ月でその言語が先ず耳に慣れてくると答えています。
最初は何も聞こえなかったものが、だんだん耳に慣れてくると、言語として認識できるようになり、そのうち言葉を聞き取れるようになってきます。先ずは他者の会話を理解できるようになり、それから自ら話すことができるようになってきます。
語学学習では、「話せるようになりたい。」というのが最終目標のため、話そう話そうとしてしまうのですが、話す前にまずはその言語理解をしていくことからだと思います。
相手の会話が何となく理解できるようになるのに2~3ヶ月。そして、自分が「ああ、なんとなく話せるようになったな。」と感じるようになるまでの期間は半年くらいでしょうか。
この感覚は、私個人の体験談に基づくものだけでなく、語学学校で働いていて多くの留学生を見てきて感じた一般的な達成時期となります。
それでは、私が語学留学をした時には、どんな感じだったかを元にもう少し具体的に説明していきたいと思います。
語学をゼロから勉強し始めた場合
本来なら英語の学習時間と言いたいところなのですが、英語は既に誰もが最低でも中学校で3年間、高校も含めれば6年間は勉強している言語になります。
つまり、本当の意味で知識ゼロから勉強を始めるということは少ない言語です。
そこで、私がほぼゼロの状態から勉強し始めたスペイン語学習を例に、私がスペインに行った時に実際にどうやって勉強したか、どのくらいの時間が必要だったか紹介します。
留学前の語学力と語学学習時間
スペイン語は大学の第2外国語として、週2時間、2学期間だけ勉強しました。学習時間で言えば、40時間ほどだったと思います。
オプションの授業で取っていたので、試験などもなく授業以外ではさほど勉強もしなかったので、それ以上の学習時間はないと言えます。
その後、私は2カ月間南スペインにあるマラガいう地域にある語学学校に留学しました。夏休み期間だったので、どちらかというとバカンス気分で来ている学生も多かったと思います。
2ヶ月のスペイン留学
小規模の語学学校で、生徒数は10人もおらず、そのうち4~5人が日本人という学校でした。
住まいは学校近くの貸し部屋を借りていたのですが、シェアの部屋をお願いしたら、ハウスメイトが同じ学校に通う日本人の方でした。なので、家の中では日本語になってしまうという環境でした。
こういう問題にぶつかると、学校や周りの人と必死で状況を話さないといけないので、実はこの騒動のお陰でかなりスペイン語の語学力が伸びました。
その問題から1週間ほどはずっとスペイン語でその状況説明などを周りに説明したり、その起こった問題を解決しないといけなかったりしたので、かなり必死に辞書を片手にスペイン語を話していましたし、周りの助言など理解しようとしていました。
家を追い出された時も、夜だったので慌ててトランクを持っていつも通っていたバーに行き、いつもの地元の常連さんたちが助けてくれました。そのままアパートに帰ることができなかったので、数日バーで知り合った方の家のソファーに泊めてもらっていました。
それから語学学校で今度はアパートではなく、新しくホストファミリーを紹介してもらい、環境的には以前よりもスペイン語環境になりました。
今度は、ホストファーザーにセクハラを受け、結局また家を移ることになりました…。その後も周りの知り合いをつてに廃屋のような家に泊まったり、知り合いになった人の友達の家に泊まったりと、とにかく色々なところを泊まり歩いていました。
結果として、スペイン滞在中に多くのトラブルに巻き込まれたせいで、逆にスペイン語で話さなければいけない状態に追い込まれました。また地元の人の知り合いも多くできたお陰で、2カ月のスペイン語学留学で、ある程度の日常会話はできるようになりました。
レベルで言えば恐らく、語学学校の中級レベルにまでなったと思います。
もちろん、このようなサバイバル体験をすることは少ないと思いますし、そういう体験の中には危険な目に会うこともあると思います。私は運が良かったと思います。
私の場合は問題が起こった滞在3週間後からは、ずっとスペイン語漬けになりました。そのお陰で2ヶ月のスペイン滞在の後は、かなりスペイン語ができるようになりました。
実際は、自分が思っているほどできていなかったかもしれないのですが、とにかく物怖じせず自分の言いたいことを伝えようという姿勢も養うことができました。
語学学習は環境が大事
私の語学学習に関しては、色々ハプニングもあったことから、スペイン語でコミュニケーションを取らないといけない状況になり、通常よりも頑張って語学の勉強をしたと言えます。
お陰でかなり短期間である程度語学ができるようになったと言えます。これはサバイバル性が強く、あまり良い例とは言えません。
しかし、語学学校では現地の知り合いもできにくいので、現地の人が通う場所(バーなど)に通って知り合いを作るなど、学習言語を積極的に使う環境を求める行動は重要だと思います。
また、何か問題が起きたら、人に頼らず、自分でなんとか解決するというスタンスは語学力向上には役に立ちます。
その問題が起こっていた時はかなり辛かったけれど、語学学習の面では後から考えると本当に良い経験になったと思っています。
語学学習の一番重要なことは、語学使用の必要性だと思います。どしてもその言語で何かをしないといけない、何かを理解しないといけない、そして誰かに何かを伝えないといけないという状況に自分を置くことが重要かもしれません。
語学使用することが必須になることによって、語学学習への意欲や必然性が増し、それが語学力向上にもつながります。
参考文献
Krashen, S (1982) ‘Principles and Practice in Second Language Acquisition’ PHOENIX ELT, London
Krashen, S (1985) ‘The Input Hypothesis: Issues and Implications’ Longman, London and New York