中高生の短期語学留学は効果的か?
こちらの留学コラムに「長期留学するなら高校生がベストな理由と体験談」と言う記事がありました。
私も短期、長期と留学経験があります。やはり、長期留学の方が効果的ではあるのかもしれません。
それでは、中高生の短期留学は効果的ではないのでしょうか?
・長期留学するなら高校生がベストな理由と体験談
また、留学時期を考えると、小中高校留学、大学留学、大学を卒業してからの留学、社会人になってからと様々な時期での留学があります。
特に語学学習には、なるべく年齢が小さい方が良いとも言われています。
それでも年齢の若い小中高生のお子さんを留学に出されるのは、親御さんにとっても色々と不安などもあると思います。
私は以前イギリスにいた時、日本からの夏休み、冬休み、春休み中高生の語学短期研修のグループリーダーという仕事をしていたことがあります。
その時の中高生ともずっと連絡を取り合っており、今は彼らも大学生になりました。中にはその後、長期留学をした子達もいます。
そんな彼らのその後の進路などもご紹介しながら、中高生の短期語学留学の内容やその影響などもご紹介したいと思います。
日本からの中高生グループ
私が担当していた語学研修は、日本の留学エージェントさんから申し込みをされた生徒さんでした。どの生徒さんも日本から個人で申し込みをしているので、一人でイギリスに来ますが、その後出発当日に飛行場で集合し、そこからグループで行動します。
全ての語学留学は10日~2週間ほどの語学研修でしたが、各自で多少異なる形の語学留学プログラムでした。以下では、各留学での授業や授業以外のエクスカーションなど語学研修の内容もご紹介したいと思います。
ちなみに、夏は全寮制サマースクールの語学留学、冬と春はホームステイをしながら語学学校に通う形の留学でした。また、冬休みと春休みは同じ語学学校での研修でした。
夏休みの全寮制サマースクール語学留学
通常運営されている学校が休みの夏休み期間に、校舎を借りて開催され、寮生活をしながら語学学校に通う夏の語学コースは、「ハリーポッターのような寮生活を送ってみませんか?」というキャッチフレーズでした。
ただし、実際はそんな素敵な感じではなく、清楚で厳かなイメージではなく、学校の敷地も建物も中も近代的で、雰囲気ももっとガチャガチャ、ワイワイした感じでした。
親御さんからすると、全寮制のサマースクールは外出できるのが週末だけなので、ある意味安心とも言えます。
けれど、生徒さんにとって、そしてグループリーダーにとってもそれはちょっとストレスになることもあるかもしれません。
全寮制のサマースクールの場合は、朝から晩までずっと学校の中で過ごします。しかし、学校と学生寮がある構内には、食堂、校庭など敷地も広く、狭い空間に閉じ込めてられている、という感じはなく、田舎の解放感あふれる良い環境です。
毎日の生活
時間割は、朝起きて、身支度をし、学校の食堂で朝ごはんを食べます。毎日イングリッシュブレックファーストが食べられるので、朝からしっかり食べることができます。この時に、グループリーダーは皆のその日の状態をチェックします。
朝食後、午前中3時間の授業があり、学校の初日にレベル別けテストがあり、レベルに分かれて他の国の子達と一緒に授業を受けます。その後、昼食も構内の食堂で一緒に食べます。
日本人グループで一緒に食べなければいけない、という規則はないのですが、他のグループもグループ同士で食事をすることが多く、あまり他の生徒と交じることはないかもしれません。
ただし、日本の生徒さんは男女が分かれる傾向があるので、同じ国籍内でもグループが2つになることがあります。
昼食後、午後はいくつかアクティビティがあり、その時間帯によってアクティビティを1~2つ選んで参加します。こちらは学校の授業の一環でもあるので、一応強制参加です。
学校内にはかなり大勢の生徒が英語の勉強に留学に来ているので、多種多様なアクティビティがあります。サッカー、バスケットボールなどのスポーツから、染め物や絵を描いたりするようなアート系のアクティビティもあります。この時間にPC(IT)というアクティビティもあり、インターネットが使えるのもこの時間帯でした。
その後、夕食までフリータイムがあり、食堂で夕食を食べます。夜は夜で色々イベントがあり、カラオケ大会、デイスコ大会、ゲーム大会など毎日違うイベントが開催されていました。この辺りは国や文化の違いが出るのか、日本からの生徒さんが面白いと思うイベントもあれば、彼らが退屈してしまうようなイベントもありました。
こちらも一応強制参加ですが、終わり時間があまり決まっておらず、途中で抜けて行く子が多かったです。他にやることも少ないので、学校では、就寝時間までこうして色々なイベントを開催してくれます。
学校には英語を教えてくれる先生の他、こうしたアクティビティ担当など多くのイギリス人スタッフがいて、そのスタッフがイベント毎に生徒と遊んでくれます。
週末は一日エクスカーションとして、遊園地に行ったり、動物園に行ったり、他も町に行ったりと遠出します。人数が多いので、自分たちのグループで行動します。なので、その時はあまり他の国の子と交流がなくなってしまいます。かなり中身の詰まった語学研修です。
彼らの英語力は?
本人たちがいくら個人で申し込みをしても、日本人グループでの行動が多く、他の生徒さんもグループでの参加のため、語学力向上と言う点では絶対に英語力は向上するとは言えないかもしれません。
また、日本からの生徒はシャイなことも多く、他の学生に話かけることもあまりできず、こちらから色々提案をして、他の生徒に英語で話かけるようになりました。
最初は戸惑いながら話始めて、やっと英語を話すことに慣れた頃には研修は終わってしまいます。
けれども、この経験がこの先の彼らの英語へのモチベーションに繋がります。
冬休みホームステイ語学留学
冬休みの短期語学研修は、「イギリスの家族と過ごすクリスマス」という謳い文句でした。
このコースでは、年末年始にかけて開催されており、イギリス人家族の家にホームステイをしながら、語学学校に通うコースでした。
夏と同じく個人で申し込みをした日本人の生徒さんが空港で合流して、一緒にイギリスに来ます。私はその生徒さんとロンドンの空港で落ち合います。そこから、ロンドンから車で1時間ほどの街で語学研修は開催されていました。
特に中高生の語学研修では、ホームステイの方が人気はあるようにも思います。
語学学習の際、ホームステイは最適な宿泊手段だとも言われています。これは、現地の国の方との交流が持つことができ、その国の文化も学べるという事から来ています。
毎日の生活
朝ご飯はホームステイ先で、イギリスでも毎日イングリッシュブレックファーストと言うわけでもなく、どちらかというとシンプルにパンと飲み物、バターやジャムなど、コンチネンタルブレックファーストのようです。
お昼ご飯はお弁当をホームステイ先が作ってくれて、それを持たせてくれます。お弁当の規定が決まっているのか、ほぼ皆同じようなお弁当を毎日持ってきていました。
授業は午前中のみ3時間、9時~12時まで。午後には週に2~3回のエクスカーションがありました。エクスカーションは街中の近くの美術館、博物館、動物園、水族館などに行ったり、近くの町まで行ったりしました。
実はクリスマスシーズンは語学学校が休みなので、この学校では特別に日本人生徒用のクラスを運営してくれていました。
参加人数にもよりますが、クラスはレベルによって2クラスほどありました。特別なクラスですから、クラスメートは全員一緒に日本から来た日本人です。もちろん、エクスカーションも付き添いの先生以外は日本人の学生のみという事になります。
エクスカーションが無い日は、そこで学校も終わります。また、エクスカーションがある日は、その後各自のホームステイ先に帰ります。
その後、ホームステイ先で各々過ごし、夜はイギリス人家族と一緒に夕食を取ります。ホームステイ先には大抵2人一緒で同室の事が多く、一人で帰宅するという事は少ないです。ただし、一人部屋希望の生徒さんは、ホームステイ先に一人だけということもありました。
ホームステイ先は学校から遠い場合もあったので、最初のうちは家に帰るのに迷ってしまう子もいました。
ホームステイは基本ダブルルームなので、一人ではないのですが、他の国の子と一緒という事ではなく、一緒に来た日本人の子と一緒になります。
つまり、いくらホームステイしたとしても、ずっと英語環境というわけではありません。
ホームステイ先では、各自どのように過ごしていたかはあまり分からない部分ですが、家族と交流をする子もいれば、部屋にこもりがちな子もいたようです。
特に男の子の方が、部屋にこもりがちになる傾向がありました。
学校が早めに終わってしまった時は、買い物に行く子や一人で街を散策する子、同じホームステイ先の子と一緒に街を散策して帰る子などもいました。
週末のエクスカーションでは他の都市に行きます。クリスマスシーズンは休日や祝日も多くなり、どちらかと言うとホストファミリーと多く過ごせることを意識したコースでした。
ただ、高校生くらいの男の子だと、日本でもあまり家族と一緒に過ごすことも少なくなる年頃です。遊びたい盛りでもあるので、夕食後の時間もホームステイで家にいるだけでは退屈してしまう子もいました。
また、この年代の子は3食以上、恐らくおやつも食べたい子もいるので、家の夕食だけでは足りず、ファーストフードをたまに食べたがっている姿も見かけました。
このホームステイプログラムは、寮生活の語学留学よりは各自で出掛けたりする自由時間も多いコースでもあります。
年代にもよりますが、海外で心配する親御さんにとっては、実はホームステイよりも寮生活の方が心配は少ないかもしれません。
語学力や国際力を延ばすと言う点では…
「イギリスの家庭でクリスマスを!」というのがうたい文句のこの語学研修ですが、実は日本の年末年始に近い感じで、若い子達にすると意外と時間を持て余してしまうこともあります。
家庭によっては、快く家族の一員として受け入れてくれるところもあれば、あまり生徒を受け入れてくれない家庭もあります。これは、運次第なので難しいところです。
クリスマスシーズンと時期的に学校内で日本人だけになってしまうので、その点が懸念されます。
他国からの学生に会う機会もなく、語学力や国際力を延ばすという事を考えると最適とは言えないかもしれません。
一方で、この時期にイギリスに来て、クリスマスの雰囲気が味わえるというのは、イギリス文化を学ぶ上では重要なことかもしれません。
春休みホームステイ語学留学
春休みの語学研修コースも冬休みと同様で、ホームステイをしながら語学学校に通うコースでした。仕事の依頼を請けていた留学エージェントさんでは、他のプログラムも募集していたと思いますが、私が担当したのはこちらのコースでした。
冬休みとの違いは、この時期だと他の外国人の生徒と一緒に英語の授業を受けることができます。ただ、私が付き添ったこの語学研修は学校の通常の休みと被ってしまい、1週間は他の学生と一緒のクラス、その後日本人のみのクラスになっていました。
日本からの語学研修の場合、日本の都合に合わせています。その語学学校のスケジュールに合わせているわけではありません。
時期的には参加しやすいプログラムなのかもしれませんが、冬休みコースと一緒で、逆にこうして日本人のみのクラスになってしまうケースもあるのです。
基本的にコース内容は上記冬休みのコースと同じです。ただ、エクスカーションとかは他の学生と一緒ではなく、日本人の生徒さん用のアレンジだったようで、午後は日本人のグループで一緒に行動でした。
一日のスケジュールは、ほぼ冬のコースと一緒でした。
英語力と国際交流は?
春休みコースは、冬休みコースに比べると、全期間ではないですが、他の国の生徒さんとも一緒だったこともあり良かったと思います。
午後は日本人学生のみのエクスカーションや、エクスカーションのない時はフリーになってしまうため、あまり国際交流という点ではそこまで良いとは言えないかもしれません。
ホームステイも冬休みのコースと同様、2名一緒の事が多く、話せる方がホストファミリーとも話す傾向があるようで、2名だとお互いもサポートし合えるという事もありますが、片方に頼り気味になってしまうこともあります。
面白いことに女の子の方が自立心は高く、1~2人で行動できる子も多いのですが、逆に男の子の方がフリータイムに何をして良いのか分からず、手持ちぶたさになる子もいました。
せっかくだからホームステイ先に帰ってホストファミリーとコミュニケーションを取れれば良いと思うのですが…。
この位の年代、特に男の子ですと自分の家族ともずっと一緒にいるわけではなかったりもします。なので、一概にホームステイが良いとも言えないようです。
日本からの短期中高生語学研修の利点
こうして中高生語学研修をご紹介すると、意外と日本人どうして固まってしまって、英語力向上や国際交流などはあまり見られないとも言えます。
ですが、最初のステップとしては、悪くないのではないかとも言えます。
と言うのは、実は同じ語学学校に単身で留学に来た生徒さんがいたのですが、彼はホームステイ先と色々問題が生じていました。それを相談できる相手がいなかったり、学校では日本語が通じなかったりすることも多いので、色々苦労もしていました。
特に中高生の場合は年齢も若いため、こう言った問題に直面した時には苦労することもあるでしょう。また、こちらのプログラムを企画した留学エージェントでは、毎日レポートを書いて送っていました。
こうすることにより、親御さんは遠くにいながらも安心してお子さんを海外に出すことができます。
留学に行く本人の視点というよりは、親御さんの視点で考えた場合は、やはりこういったサポートがついて、グループリーダーと一緒のコースの方が安心して送り出すことができます。
夏休み、冬休み、春休み短期語学留学に参加した中高生のその後
ということで、「実際2週間ほどの短期語学留学の場合は英語力が伸びるのか?」の結論ですが…。
英語力の要素は、そこまでは変わらないです。
ですがこの2週間の経験で、生徒さんには以下のような変化が生まれる傾向があります。
このように、別れ際に言ってくれた子がたくさんいました。
実はグループリーダーという仕事は学校の先生とも違いますし、通常中高生と一緒に2週間ほど過ごすだけの、その場限りの関係です。
私も、積極的には彼らとの連絡先を交換したりはしませんでした。一応緊急連絡先として、各生徒さんの連絡先は知っていたのですが、個人情報になるので語学研修が終わると一応全て破棄することになっています。
1グループに付き、10人前後の生徒がいるので、30人ちょっとの中高生と関わったことになりますが、その中の数人のその後をご紹介したいと思います。
ですが、別れ際に数人に連絡先を聞かれ、全員ではないですが留学後も面倒を見た生徒さんたちと連絡を取り合って、たまに会ったりしていました。
そのお陰で、彼らのその後の進路を知ることができましたので、この短期留学がどれくらい彼らのその先の進路に関係したのかを皆さんにも知って頂ければと思います。
面倒を見た学生は40人ほどなのですが、2割ほどの生徒さんがこうして色んな形で海外進出していました。
連絡を取り続けていない子もいましたので、全員の進路は把握していません。それにしたら、かなりの割合で短期語学留学がその後の彼らの進路に大きく関係していた、というのが分かって頂ければと思います。
留学は語学だけではない、その先の将来に大きく影響する
この結果を見ても、中高生の短期語学研修は語学のレベルの向上と言うよりは、その先の語学学習のモチベーションや長期留学への目標に繋がりやすいということが言えるでしょう。
親御さんにとっても、あくまでも最初のステップと思って頂けると良いかと思います。
「ご自身のお子さんをこの先海外に目を向けてもらいたい。」と思った場合は、こういった短期語学研修への参加は間違いではないと思います。
そういう意味では、短期でも語学留学をすることは決して無駄ではなく、その後の彼らの英語能力、留学意欲に有効なことではないでしょうか。
彼らは自らの意思で、こうして海外に飛び出しているのですから。