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イギリスでは、大学に入学するためには16歳の義務教育終了時に、GCSEというテストを受験しなければいけません。英語、数学、サイエンス(科学のどれか)といった必須項目がありますが、自分で選択した得意科目で点数を稼ぐことができます。その後オプションとして2年間のAレベルというコースを終了することで、大学入学により有利な資格を手に入れることもできます。大学によって受験に必要な条件が異なり、Aレベルの証明を求められる場合もあるようですが、修業したい分野で同等の学力があることが認められれば、実際にAレベルを修了していなくても受け入れられる可能性があります。例えば、既に同分野での社会経験がある場合として現在日本でピアノ教室を開いている人が音楽大学の教育課程を受験したい場合や、歯科学科に行きたい人が日本で歯科助手としての勤務経験がある場合などが挙げられます。
また、日本の大学学科で修業中の人が編入を希望する場合も、イギリスの教育機関からの学力証明は免除されるでしょう。オックスフォード大学では「当校に入学を希望する多くの生徒が、受験に備えてAレベルを受けていますが、過去にAレベルを済ませている人、現在Aレベルに取り組んでいる人、同等の資格のために勉強している人からの出願も受け付けています」とアナウンスしています。(出典:Entrance requirements at ox.ac.uk)
またAレベルの代わりにアクセス・コースというAレベルと同等の資格を与える教育機関からの応募も可能なようです。オックスフォード大学はほんの一例ですが、イギリスの大学は一概に、共通試験での学力証明や入学条件は融通がきくため、学問を志す人への門戸は広めに開けてあると言えるでしょう。
日本の学力証明
高校を卒業したばかりの日本人がイギリスの大学への入学を希望する場合、日本の高等学校の卒業がGCSEと同等資格(大学課程についていける基礎学力の証明)と見なされます。ただ、たとえAレベルの提出が不要でも英語力の証明は必須です。日本でも受験することができる英語力証明テストIELTS(アイエルツ:International English Language Testing System)で、求められる水準の結果を提出する必要があるでしょう。もし入学許可の判定前に十分なスコアを提出できなかったとしても、入学前に早めに渡英して、アイエルツ対策のコースを受講し合格水準に達することを条件に、入学を許可される可能性もあります。
またイギリスの学部コースは基本3年間ですが、Aレベルを受けていない海外の学生などは、本学部入学の前にファンデーションコースという1年間の進学準備コースを受講するという方法もあります。こちらも受験にはアイエルツのスコアが必要となりますが、本学部入学条件よりも低めに設定されている場合が多く、大学の授業についていける英語力と、希望する学科へ進学できる基礎学力を培うことができるのです。大学併設の、または違う大学で開催される関連科目のファンデーションコース受講を条件とするところもあります。
成績証明・推薦状
教育機関からの成績証明書・推薦状も重要なポイントとなります。希望する大学から「是非うちで学んでほしい」と思ってもらえるよう、卒業した学校の担当教師などから、学力、勤勉さや前向きな人柄を伝えてもらいます。また、既に社会に出てコースと関係のある分野に従事している人は、学生時代の成績よりも現在の上司からの推薦状を提出する方が有効な場合もあるでしょう。
志願理由書
上記の証明書に加えて、大学にとって自校での就学に適している学生かどうかを判断するのに重要なのが志願理由書です。他書類と同じく英語で書くことになりますが、リサーチを経て希望大学の選定にたどり着くまでの情熱があったならば、あとは自信を持って説明を書き綴るのみです。大学に入れば嫌でも論文を書き続けてアカデミックな文章を仕上げられるようになりますので、ここは丁寧に、そして真摯に取り組むことが大切でしょう。
面接
書類選考ののち、面接を受けることになります。海外からの学生の受け入れに熱心な大学では、日本に定期的に教員がやってきて日本で面接を受けることができることもあるようです。そうでなければ電話やスカイプで、という対応になることがほとんどでしょう。イギリスの時差は日本からマイナス9時間(サマータイムは8時間)ですので、電話やスカイプが日本の深夜に設定される場合もあるかもしれません。
大学卒業資格
大学の学費は高額で、特にEU圏外からの学生には1.5倍から2倍の受講料を求められることがあります。ですが、提携大学からの認定を受けた高等教育機関で学費を比較的安く抑え、卒業時にその大学からの卒業認定を受けるという方法もあります。カリキュラムの内容はもちろん、学期ごとの試験結果にも大学からの厳しいチェックが入るうえ、大学の設備も使用できるため、学業の質が劣るとは言えないでしょう。また本学部にはない科目を選ぶことができるという可能性もあります。
EU圏外からのインターナショナル・ステューデントに、圏内からの学生よりも多額の授業料の支払いが課せられることは避けられないのですが、それでもその大学の本学部に通うより低い授業料で卒業資格を得ることができるというのは、留学生にとっての有益な選択肢の一つであると考えられるでしょう。