アメリカ・ロサンゼルスのマリブビーチと環境問題の話
自分は生まれてから、ずっとインドア派の人間だと思っている。特に夏なんて、昼間は外に出たくないので、いかに夕方から効率良くスケジュールを組めるかを考えているくらいだ。
そんな自分だから、ロサンゼルスに来て3ヶ月が経った10月に初めてビーチに行った。やっぱりロサンゼルス、カリフォルニアと言ったらビーチと思い浮かぶ人も少なくないだろうから、自分もビーチのことは頭の片隅にはあった。
ただやっぱりダンスとか、友達とカフェとかが先立ってしまって、気が付けば3ヶ月といった具合だったのだ。
インドアな自分でも、結局外に出ていつも思うのは、「ああ、やっぱり自然はいいなぁ~。」ということ。
疲れがふっと軽くなるし、人間は自然が必要だという当たり前のことを再確認するのである。
だからビーチに行ってからというもの、自然と環境のことについて考えていた。そうすると、日本とアメリカでの環境への接し方の違いも見えてきた。
ということで今週はビーチと環境のはなし。重過ぎず、軽過ぎないようにバランスをとったつもりのトピックなので、構えず読んでね。(笑)
マリブってどんなところ
マリブビーチという名前を聞いたことのある人も多いだろう。サーフィンをやっている人はもちろんだと思うし、スケーターの人、海が好きな人、カリフォルニアについて何か調べたことがある人も聞いたことのある名前だと思う。
自分はAnderson. Paak(アメリカのグラミーラッパー)が出したアルバムのタイトルがマリブだったから、名前だけ知っていたという不思議なパターンだった。
マリブビーチはロサンゼルスやサンタモニカビーチよりさらに北に位置したロングビーチで、高級そうな別荘が山々を抜けたところに沢山建っている地域。
自分と同世代の人なら分かるであろう、マイリーサイラスの出ていたディズニーチャンネルのショー、「シークレットアイドルハンナモンタナ」や、説明不要のヒーロー映画のニュークラシックである「アイアンマン」などの作品の舞台になっているのも、ここマリブである。
ビーチに行く前日に、いつもロサンゼルスに来てからお世話になっているダンサーの先輩と一緒にいた時のこと。10月も後半に差し掛かろうというのに、容赦無く夏の日差しが照りつけていた。その日は30度近く気温が上がっていて、どうやら次の日はさらに暑くなりそうだということで、「まだまだ冬は遠いですね。」なんて話していた。
どうやらロサンゼルスの気温は毎年この調子らしく、なんなら今年はいつもと比べて涼しい方らしかった。そこから偶然、お互い次の日も空いていることが分かり、もう一人友達を誘ってマリブに行こうという話になったのだ。
マリブはノースハリウッドからだと車で片道1時間ぐらい。先輩が車を出してくれた。電車やバスを乗り継いでいくこともできるが、周り道になるのと、アメリカのバスの待ち時間はなかなかなもので、40分に1本とかはザラ。なので、片道2時間はかかるとのこと。なんて不便な公共交通機関。というか日本めちゃくちゃ便利。
そんな行き難い場所だったから、今回連れていってもらえて本当に嬉しかった。そうでもなければ次の夏まで行かなかったことだろう。自分達は平日の午後から行ったので、ビーチはそこまで混んでいなかった。土日祝日はやっぱり人が増えるらしいが、もう一つの有名なビーチ、サンタモニカに比べると断然静かで落ち着いているのがマリブの特徴。
サンタモニカはどちらかというと観光客向けで、マリブはもっとローカルな人が多いらしい。行った時間帯もあってか、ビーチはどこかからバケーションで来たらしい家族連れや、仲良しな老夫婦、小さい子供を連れたローカルらしい家族が目立って、ほのぼのとしていた。
マリブで有名なのが、スケートパーク。スケートボードの大きなコースがビーチの近くにあって、そこで現地や海外からのスケーターがガンガン滑っているらしい。自分達はそこのエリアには行かなかったので、実際に見ることはなかったが、そこに行った友人曰くスケートをしなくても観ているだけで楽しめるらしいので、行く機会がある方は是非立ち寄ってみて。
また自分達は行かなかったのだが、ビーチから少し離れたところにはショッピングエリアや食事できるところもあるらしいので、都会から少し離れて1日中のんびりするには最適の場所ではないだろうか。
今回は時間の都合で行けなかったけれど、SneakersNStuff というスニーカー、アパレルストアのロサンゼルスストアもマリブにある。そのストア別注のアパレルやスニーカーのお店もあるマリブは、ファッションへの感度も高い場所だというのが伺える。
目的地のレストラン駐車場から目の前のビーチに着いて思ったのが、日本やバージニアのビーチに比べて波が高かった。浅瀬でも波が60〜70センチぐらいはあったように思う。そしてやっぱりもう10月なので、海水はかなり冷たかった。
ちびっこは頭から浅瀬で波に飲まれに行っていたけど、「絶対寒いだろうなぁ…。」と少し心配になってしまった。
自分達も一応水着を着て行ったけれど、結局日光浴だけで海水を浴びることはなかった。いつも自分は海に行くと、日光浴で終わるパターンが多い。
マリブの海の家
今回なぜノースハリウッドからより近いサンタモニカではなく、わざわざマリブまで行ったのか。もちろん落ち着いた場所で疲れを癒したいという目的で、自分達の根っからのチル精神を癒すにはうってつけの場所を先輩が教えてくれていたから。
そこは、 ”Paradise Cove” というレストラン・カフェ。そこはよくある道路挟んで向かいが海、というような生半可な「海のカフェ」ではない。本当に海の目の前。砂浜にカフェがあるのだ。分かりやすくいうと、「海の家」のスタイルだ。海の家と少し違うのが、日本の海の家であれば開放されているビーチに海の家がある。
だがここの場合は、レストランの敷地内にビーチがあるので、レストランのお客さんしかいないのだ。だから断然リラックスできる。もし津波が来ようものなら完全にアウトである。それぐらい海に近い。
かと言って海の家のようにライトな作りではなくて、完全にしっかりとした建物なので、しっかりリラックスできる空間になっていた。もちろんテラス席も用意されていて、夜になると上のライトが綺麗にライトアップされる。
自分達は屋内を選んで、ふかふかの席に着いた。海の家はまず座っていてお尻が痛くなるようなところしか行った事がなく、その時点で自分はあまり好きではなかった。どこもかしこも砂でザラザラ、と思っていたら、席もやっぱり砂はなく綺麗。お客さんはビーチからレストランに裸足で入って来ていたけど、店員さんがこまめにほうきで砂を外に出していた。
正直、アメリカらしからぬ凄い清潔感に驚いていた。どこからその清潔感が来るのかと思っていたら、店員さんのユニフォームは白のスラックスに白いTシャツをタックイン。この暑い中でもさすがプロ。やっぱり身だしなみは、印象を大きく左右するらしい。白いジャストサイズのTシャツの後ろには、大きくお店のイニシャルがあるのも可愛かった。あのTシャツ、売ってるのかなぁ。
海の家は、だいたい夏の間だけの営業だし、いかにも急ピッチで見繕った感がある。ブルーシートを多用しているイメージ。それも風情があると言えばそうなんだろうけど、やっぱりそこはチル精神が働いてしまうので、リラックスできないと思ってしまう。
だけどここのお店の場合はその真逆であった。そこら中にモノクロのビーチの写真が飾られ、壁の面積の方が少ないくらいだった。写真を辿って上の方に目を向けると、銀色のダクトパイプにはこれまで来た有名人(であろう人達)のサインがびっしりとあった。
このサインは、わざわざ椅子とかに乗ってもらってサインしてもらってるのだろうか…とか、そもそもこのパイプは交換しなきゃいけないものじゃないのか…とか、そんなことがどうでもよくなるぐらいの歴史があった。ブルーシートとは真逆の精神である。
この場所がいろんな人に愛されてきたのがすぐに分かった。今のところ、自分が苦手だった海の家の問題を完全にカバーしている。もうかなりリラックスできていた。
でも肝心な問題がまだあった。料理だ。海の家の料理は、正直いつも美味しいと思ってしまう。それはザラザラのブルーシートの足元だから、余計に料理が美味しく見えるのか。それとも潮風が美味しさをはっきりさせてくれているのか。どうなのかわからないけど美味しかった覚えがある。
ここまで見た目と居心地が良くても、料理がイマイチだったら本当にがっかりである。そして何よりお腹が減っていた。メニューを見ても、やっぱり料理の写真なんて載ってないし、料理の画像を検索しようにも携帯の電波が入らない環境だった。アメリカのレストランの多くは、メニューに料理の写真がない。だから最初のうちはGoogle翻訳と一緒に注文していた。
とりあえずカラマリ(イカの足のフライ)を頼もうと料理の説明を読んでみると、”It’s heavenly.”(天国みたいな味)としか書かれていない。もうどこから突っ込めばいいのか分からない。フットボールアワーの後藤でも、いい例えツッコミができないんじゃないかと思うくらいだった。
取り敢えずフィーリングでカラマリ、フィッシュフライサンドイッチ(アメリカでは肉が挟まれていなければハンバーガーではなく、サンドイッチと呼ばれる)を頼んで、他の二人もまた違ったバーガーを頼んだ。価格は1皿20ドルくらいで、物価の高いロサンゼルスでもランチとしては少し高めだったけど、場所代としても考えたらいい経験だと思った。
しばらくして来たカラマリに度肝を抜かれた。20ドルで採算が取れているのか疑いたくなる量が、見たこともない大きさのワイングラスみたいな皿(というか容器)に乗って出てきた。
そしてやっぱりアメリカのフライは美味しい。ここまでの王道なジャンキーを作らせたら、アメリカに敵う国はないんじゃないかと思うくらいだ。これだよ!この濃さだよ!と思いながらみんなでばくばく食べていると、サンドイッチ達が運ばれてきた。
やっぱり容器のような大きさの皿に、これでもかという程にフレンチフライ、どうやって食べたらいいのか分からない大きさの野菜とフィッシュフライが乗ったサンドイッチがドンと構えていた。
食べてみると思ったより軽いフライとたっぷりの野菜で、ボリューミーだけど食べやすいサンドイッチだった。
今まで食べたカフェご飯の中で、ダントツでアンヘルシー、ボリューミーだった。先輩はゴマの衣をまとったフィッシュフライサンドイッチをオーダーしていて、それも美味しそうだったなぁ。
もちろん食べ切れなかったフライはちゃんとお持ち帰り。アメリカのレストランは基本的に食べ切れなかったものも無料でテイクアウトできる。
その後、レストラン目の前のビーチで日光浴をした。これを書いていてお腹が減ってきた。そして過去の自分が羨ましい。なんていい休日だったんだろう。
ストローを見る機会が減った
ロサンゼルスに来てから、ストローを目にする機会が減った。というのも、ここカリフォルニアでは、レストランなどでストローをお店側から出してはいけないという法律がここ最近決まったからだ。もちろんボバティーなどのストローがないと飲めなかったりするものは別だし、レストランでもこちらから聞けばもらえる。ただ少しめんどくさい。
スターバックスもストローを入れなくても飲めるようなフタを使っているから、あの緑のストローが刺さって出てくることはないのだ。そんな状況に慣れていたから、このレストランに行ってとりあえずお水をオーダーした時もストローがないものかと思った。
「あれ、何か刺さっている。」あ、このお店はそういうのルーズなのかな。「あれってマリブだといいのかな?」とか思っていたら、ストローが茶色い。ストローだけど、ストローじゃない。何かが違う。皆で「これは一体何で出来ているんだろう?」と話していた。竹でもないし、紙とも違う。そしてお店の人に聞いてようやく分かったのだが、それは乾燥パスタだった。
なるほど確かに水に浸かっている部分の色が変わって、少しふやけている。そして食べれる。
これは凄くクレバーだと思った。確かに資源を無駄にしている訳じゃないし、厳密には食べ物を出しているのと同じだもんね。
水にレモン入れて出しているようなもんだからね。食べ物を無駄にしていると捉える人もいるだろうけど、やっぱり新しくルールが生まれると、それに順応して新しくアイディアを持ってくる人が必ずいるんだなと実感した。
日本より断然土地があって、都市部を少し行くと緑が溢れる森や山が広がっていて、田舎に行くと見渡す先がとにかく畑だったりするアメリカ。
日本に比べて緑や自然を多くみるけれど、アメリカの自然に対する意識は日本より高い。
そして、プラスチックではなく再生可能な紙や、パスタでストローを作ったりと、そのルールを受け入れて生活する知恵も自然と高くなるのだろう。
ビニール袋問題
日本でもこれは取り入れられているが、ビニール袋の有料化がここカリフォルニアでも浸透している。バージニアではレジのビニール袋も無料で、日本でよく使われるものとほぼ同じ素材だった。だがカリフォルニアのレジ袋は1枚50セント程取られる代わりに、一般的なレジ袋の薄い素材よりも、少し伸びても破けにくいしっかりしたビニール袋が使われている。
ロスにもう7年程住んでいるその先輩によると、レジ袋が無料だった頃は道のそこら中にレジ袋が散乱していたという。しかも日本のレジ袋よりも薄くて破けやすかったため、何枚も重ねて使うのが主流だったそう。有料のレジ袋が当たり前の自分としては、そんな環境は恐ろしい。そりゃ環境が悪くなるはずだし、道にレジ袋が散乱しているなんて今ではあまり見ない。
だけどそんな状況がほんの数年前まで、長いこと当たり前だったなんて少し怖くなった。人は当たり前になった瞬間に考えたり疑問を持ったりすることをやめてしまう。よく考えれば大変なことも、見過ごしてしまうのだ。それって環境だけじゃなくて、すべてのことに言えると思う。
当たり前を作らずに、強いレジ袋を売り出した人達に頭が下がる思いになった。そうなると、お持ち帰り用のプラスチック容器も、いつかは有料になるのかな。もしかしたらお持ち帰りのルールも変わって、日本みたいに食べ切れる量を今より抑えた値段で提供し出す日が来るのかな。
アメリカでは、日本程細かく分別はしない。燃えるか、リサイクル出来るか。それだけである。これもアメリカでは「当たり前」だけど、日本ではかなりレイジー(無精)に映ることもあるだろう。もしそこの当たり前が崩れたら、アメリカ人の環境への意識もキッチンレベルから変わるかもしれない。
そこら中に自然があるアメリカでは、田舎に住んでいれば尚更環境への意識は高まらないかも知れない。どこか小さなところで変わるのが、大きく変わる一歩なはず。「周りをより良くしたければ、まずは鏡の中の自分から変えていこう。」とマイケルジャクソンも言っていたし。
当たり前だと思わない意識が大事
ストローひとつでそんなところまで目を向けさせてくれた、素敵なレストランに感謝しながら、お腹いっぱいで三人で海を見ていた。
綺麗な山に囲まれて、美味しいものを食べて、波の音を聞けている。この自然も当たり前じゃないんだよね。アメリカでこんな体験、生活が出来るなんて思ってもいなかった。
この生活も当たり前だと思わないことが大事だと思ったりする。今自分の周りにいる人との出会いも、当たり前じゃないはずだから。