全ての音楽オタクのための最高の式典「グラミー賞」から見るアメリカとは? | 留学・ワーホリ・海外留学・語学留学は留学ドットコム

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全ての音楽オタクのための最高の式典「グラミー賞」から見るアメリカとは?

公開:2020/01/29 著者:西山 僚汰 241 Views

あなたが「オタク」になれるものはあるだろうか。「打ち込めるもの」ではなく、「オタク」になれるものだ。それだけ情熱を傾けられるものだと、周りがどう言おうと全く気にならないし、むしろマイナスなイメージを持たれても関係ない。

世の中にいる様々なジャンルのオタクと呼ばれる人たちは、きっと彼らの気付かないところで犠牲を払っている。

だから「コミュニケーション能力がない。」とか、「いつも同じものを着ている。」とか、そんなイメージを持たれる人たちもいる。

 

だけど、それは裏を返せば、気を遣って周りと話をしたり、毎朝服を選ぶ時間を惜しんでまで1つのことだけを考えたりしているとも言える。

 

だから、きっとスティーブジョブスはいつも同じものを着ていたんじゃないか。そして自分もオタクだと自負している。もちろんマイケルジャクソンオタクだ。

小学校や中学校の時の朝読書の時間は、決まってマイケルジャクソン関連の本や、彼の自伝を読み続けた。先生がなんと言おうと読み続けた。小学校高学年の時は、友達や家族からなんて言われようとマイケルの音楽をかけ続けていた。

そして、そんな調子で2年間を過ごしたら、家の中でマイケルをかけたら家族から嫌な顔をされるようになった。それは少なくとも、先生や家族からの目線という犠牲を図らずとも払ってしまっていたということだろう。

 

自分が逆の立場だったらひとたまりもないが、やっぱりやってしまったから自分はオタクだ。あなたには、そんな風に情熱を傾けられるものはあるだろうか?

これから話すすべての人たちは、音楽オタクである。彼らがどんな犠牲を払ったかは分からないが、その犠牲と一緒に素晴らしい作品を生み出したのは誰にも明らかだ。

そんな作品たちが毎年ジャンル毎にノミネートされ、その年の1番が審査員によって決められるのがグラミーアワード(グラミー賞)である。音楽界のアカデミー賞であり、音楽に関わる者には大きなイベントだ。毎年2月にこの式典は行われていて、他のアワードショーと同様に受賞者の発表だけではなく、アーティストのパフォーマンスも行われる。

 

→ 音楽オタクが注目するグラミー賞。

 

どのアーティストもこのパフォーマンスのために、そのアルバムのカラーを全面に出したベストなパフォーマンスを持ってくるから、テレビの中継にアメリカ国民は釘付けだ。今年で60回目となるグラミーは、全ての音楽オタクたちのための最高の式典である。

グラミーは彼らの目標であり、夢であり、祭りであり、希望である。その年の年末になると、各カテゴリーのノミネート作品/アーティストが発表される。

沢山のカテゴリーがある中で、主要となるのが Album of the Year(最優秀アルバム賞)、Record of the Year(最優秀レコード賞)、 Song of the Year(最優秀楽曲賞)、そしてBest New Artist(最優秀新人賞)の4部門である。

 

どれだけ多くのカテゴリーにノミネートされているかも重要だけど、この4部門にノミネートされているかどうかで、人々の注目度や感心も変わってくる。

アメリカに年末年始にステイしたことがある人であれば、グラミーに対する空気感や流れも肌で感じることができるだろう。やっぱり日頃ラジオでかかっていたあの曲はノミネートされているし、かと思ったらあのアルバムはこの間リリースされたばかりだから選考期間から漏れるのか…とかそんなことを毎年思う。

これは視聴者投票ではないから、必ずしも流行りの音楽が賞を受賞するとは限らないが、アメリカの空気を大いに反映するものであることに変わりない。自分は中学生頃からグラミーに関心を持ち出して、それからはネットのおかげでどこにいてもフォローすることができている。

 

高校留学中は、毎年中継を必ず見ていた。

まだ今年の結果が分かるのは少し先だけど、今週は、主要4部門のうち3つのノミニーズから自分の2019年を綺麗に彩ってくれたアーティストたちをアメリカでの流れと共に紹介していきたいと思う。

これは受賞予想でもないし、よくあるクオリティーの高いレビューでもないけれど、音楽から少しでもアメリカの空気感を感じ取って頂けたら幸いだ。

Album of the Year

2019年は、いつも以上に暗い話題が目立った気がしているのは自分だけじゃないと思う。トランプ大統領は相変わらずメキシコとの国境に壁を作ろうとしているし、スリランカでは連続爆破テロが起きるなど、スケールの大きな事件は後を経たない。

そして身の回りも相変わらずで、インターネットに踊らされている自分たちと、「いいね」の数やフォロワーの数に一喜一憂してしまう自分たちがいる。そして、それらに疲れているけど、立ち切れない現実もある。

今も10代、若い20代はどこかで悲しみを感じている。パーティーばかりもしていられないし、軽い、明るい歌だけではこのぽっかり空いた胸の穴は埋められない。

 

そんな気持ちを肯定して、その悲しみを受け入れてもいいんだよ、それも含めてあなただよ、そんなあなたは美しいんだよ、という考えが支持された1年が2019年であったように思える。

 

そんな流れを作り出して、一貫して発信し続けた10代のカリスマが、ビリーアイリッシュである。2001年生まれのバッチリインターネット世代の彼女は、学校に通わずに兄のフィネアスとホームスクールで育った。

地元の教会でコーラスをしたり、ダンスクラスに通ったりしながらもフィネアスと曲を作ることを楽しんでいたという。11歳から作曲を始め、16歳になった頃にインターネットに投稿したシングル、”Ocean Eyes”が世界中の目に留まり、そこからEPをリリースし出して、アーティスト活動を本格的に始めていった、というのが彼女の大まかな経歴だ。

彼女はこの2、3年で飛躍的な進化を遂げた。確かなファンベースに支えられながら、パフォーマンスやリリースを続けてきた。世間は彼女の創り出す世界観に虜になっていたし、この時点でまだアルバムをリリースしていないなんて信じられないくらいに完成されたアートがそこにはあった。

 

人々が彼女のアルバムを欲するのに十分すぎるこの状況で、彼女のファーストアルバムがリリースされた。日本では彼女がアルバムを出してからどっとヒットしたように思う人もいるかもしれないが、もう満を侍してリリースされた期待のアルバムだったのだ。

このアルバムも今までの彼女の作品と同じくフィネアスの部屋で録音、編曲、ミクシング、作曲等が行われた。シングル “bad guy”は人々の期待通りキャッチーで中毒性のあるダークな世界観がラジオDJを含めてみんなを離さなかったし、アルバムの途中に入るインタールード的なセリフなんかも、オフステージの彼女のユーモアやお茶目さを上手く表してアルバムのバランスを保っていた。

現在一部の若者の間で流行っているハイにもなれるが依存性が高く、薬局などで簡単に手に入るものながらも投与量が多いと死に至るザナックスという抗不安剤がある。そのザナックス題した”xanny”では、”I don’t need a xanny to feel better”とはっきり歌うことで、彼女がベッドルームにこもって自分の世界にしかいない訳ではなく、この自分たちと同じ時代に生きていることが分かる。

 

 

時代感で言うと、流行りのトラップ調の音も彼女は自在に乗りこなす。彼女のダークな世界観とアグレッシブなトラップビートが絶妙にマッチした”you should see me in a crown”もこのアルバムで存在感を発揮している。

独特のスタイルにビリー自身もファンだったという村上隆がミュージックビデオを製作していて、彼らのアートは誰とコラボレートしても唯一無二だと再確認する。他にも”all the good girls go to hell”や”bury a friend”といった身体を震えさせるビートが効いた曲が目白押しで、ヒットチャートを賑わせた曲ばかり。

だけど、そこで一辺倒にせずに”i love you”といったアコースティックに聴かせる、ビートやフィルターのかかっていない曲で、率直な彼女の今を表現しているのも流石としか言えない。

 

そんな具合にしっとりと、今まであれだけ鋭く力強かった氷がゆっくり溶けていくように、このアルバムは幕を閉じる。このコラムを書いている間に、グラミーでのパフォーマンスがアナウンスされ、そして更に史上最年少で映画007の主題歌を担当することもアナウンスされた。

本当に大変なプロセスだったというアルバム創りを終えて、世界中でソールドアウトのショーを行っている。自分のアートと可能性を誰より信じて、地元の教会だろうがスタジアムだろうが、彼女は彼女らしくい続けた。

そんな姿に勇気をもらった数え切れないファン達が、これからの未来を創っていくと思うと、そのダークな世界は実は希望に満ち溢れているんじゃないかと思わせてくれるアルバムだ。

 

New Artist of the Year

どの業界でもよく、”期待の新人”とか、”100年に一度の逸材”とか言う言葉がよく使われている。よく使われているということは、明らかに100年に一度の逸材ではないし、その期待もそれぐらいのレベルの期待だという見方もできるだろう。

そんな新人が、音楽界には沢山現れては消えていく。だけど誰もが最初は新人だ。そして、この賞を受賞して、アーティストキャリアをブーストさせることを願っていない人はほぼいないはず。

過去にはChance The RapperやMeghan Trainorといったスター達が受賞してきたが、今年もLizzo, Billie Eilish, Lil Nas Xといった既にビッグスターとなっているアーティスト達がノミネートされているから、本当に接戦になることが予想される。

 

この中の誰が受賞しても驚かないし納得するけれど、個人的にとても嬉しかったのがMaggie Rogers(マギーロジャース)のノミネートだった。自分が初めて彼女のことを知ったのは、日本のラジオから流れた彼女の代表曲、「Alaska」を聴いてからだった。

マギーが生徒として通っていた音楽大学のゲスト講師のファレルウィリアムスが、マギーがその授業の課題として披露した”Alaska”を聴いて大絶賛した、というエピソードをラジオDJが話していた。

そのエピソードはもちろん心に残ったけど、自分はもうアラスカにいた。彼女の音楽は、彼女の感情を通してその時や場所に連れて行ってくれるような、不思議な力があるようにずっと感じていた。

 

 

“Alaska”がリリースされたのが2016年で、その一年後にEPをリリースした。彼女は音楽学校を卒業した後に、世界中を飛び回ってパフォーマンスをする日々に生活が激変したという。この時点でアメリカのインディーポップリスナーたちの間で彼女は大きな存在だった。

有名な音楽サイトPitchfolkやNME、更にカルチャーメディアのi-D等も彼女のインタビューや記事などを掲載していて、少しずつだが確かに注目を集めていた。そしてゆっくりと確かなペースでリリースされるシングル曲は、彼女が一曲だけの一発屋なんかじゃないことを証明していた。

そんな中で書き上げられて完成した彼女のファーストアルバム、”Heard It in a Past Life”がリリースされたのが”Alaska”のリリースから3年が経った2019年だった。自分としても待ちに待ったアルバムだったので、本当にやっと、といった印象だった。

 

インディーポップリスナーはもちろん、ポップリスナーの注目も集めることとなった今作では、EPにあった素朴さは影を潜めて、期待通りの伸びやかで自然な歌声に、よりパワーを増したサウンドと壮大さが合わさった作品。

ポップというジャンルにとらわれず、うねるようにグルービーなベースと暗闇で踊り続けるような”The Knife”や、シンプルなメロディーと複雑なビートが見事に組み合わさった”On + Off”など、R&Bアプローチも見事だった。

彼女の魅力は音楽性だけではない。彼女は楽観的で、感受性が豊かで、素直で、ありのままでいることに美を見出す人だということが彼女の曲から分かる。その人間性が歌詞から滲みでるところも、彼女の大きな魅力だと思う。

 

彼女のアルバムの最後の曲、”Back In My Body”がすごくいい例。一気に有名になってしまって、気付いたら世界中でパフォーマンスをしていたような、大きな変化が一気に襲ってきたそう。

時には曲をプレイすることすら難しくなってしまうようなメンタリティーになってしまったことがあり、その時に自分は本当の自分に戻っていくために戦っているんだ、と気付いた時のことを書いた曲。

彼女の飾らない姿は我々の背中を押してくれる「芸術」だと心から思う。そんな彼女だからこそ、今回メインストリーム中のメインストリームであるグラミーに彼女がノミネートされたことが嬉しかった。彼女がそもそもメインストリームに興味があるか、それすらわからない。だけど、彼女の飛躍は正直でいることへの後押しになるに間違いない。

 

Song of the Year

あなたは「去年のヒット曲が何か?」と聞かれたらすぐに答えられるだろうか。自分は、自らこれを書いておきながらすぐには出てこなかった。毎年沢山のヒット曲が生まれるが、次の年には忘れ去られているものもあるし、10年経っても誰かの車から爆音で友達と熱唱しているのが聞こえてくる、普遍的なクラシックになる曲もある。

テイラースウィフトは、完全に後者のような作品を生むアーティストだということはもう誰も否定できないだろう。片想いのティーン女子の心を今もがっちり掴む名曲、”You Belong With Me”からもう12年。

日本ではテラスハウスの印象が強い”We Are Never Ever Getting Back Together”や、2パックと同郷のヒップホップ界のカリスマ、ケンドリックラマーを客演として迎える、異例かつ攻めな姿勢で送り出したヒット曲”Bad Blood”等、キャッチーなヒット達を挙げていったらキリがない。

 

今彼女の音楽を聴いている小学生の女の子達は、彼女がカントリーシンガーだったことすら知らないんじゃないだろうか。自分がアメリカに初めて行った6年前の2014年、テイラーは丁度当時の新作である「1989」からの先行シングル”Shake It Off”をリリースした頃だった。

その時は彼女にとっても大きな転換期の一つで、今までカントリーとポップの間を取ったようなスタイルだった彼女が、完全にポップな音楽を作ることを宣言した時期だった。そのことはシングルリリースと同時に、「テイラーがギターを置いた!」とアメリカで話題になった。

奇しくも当時自分が滞在していたのは田舎中の田舎、バージニア州だったこともあり、普段からカントリー(バンジョーと一緒に白人の中年男性が歌う、昔のカントリーミュージックではない。Carrie UnderwoodやFlorida Georgia Lineのような今風にアップデートされたカントリーミュージックだ。)を聴く同世代の女の子達はテイラーを無視することができなかった。

 

 

この状況は逆風になるかと思われたが、むしろそれは追い風だった。リリースする曲はチャートで大健闘、そしてアルバムもその年のチャートはおろかビルボード発表の2010年代のアルバムトップ200で2位に輝くという大成功を収めた。

それからもポップな音楽をブレることなくリリースし続けて、原点回避と言わんばかりに「1989」と同じかそれ以上のハッピーなムードを全面に押し出してリリースされたのが最新アルバム、「Lover」である。

すごく長くなってしまったが、今回この賞にノミネートされたのがアルバムのタイトルトラックである”Lover”。最近の流れには珍しく、この曲はビートが効いたアップテンポな曲でもなければ、流行りの誰かをフューチャーした曲でもない。

 

カントリー時代を彷彿とさせる、アコースティックギターの音が優しく響くシンプルかつキャッチーな曲になっている。”We could leave the Christmas lights up ‘til January/This is our place, we make the rules…(1月までクリスマスの灯りをつけておいてもいいじゃない/ここは私たちの場所、私たちがルールを作るの)”という歌い出しだけで親近感と憧れが同居するセンスしかない歌い出し。

絶妙な言葉のチョイスと、キャッチーなコーラスにはさすがとしか言いようがない。新しい彼女のレコードレーベルとの問題なども乗り越えて、今もちゃんとアートを表現し続ける。

ポップな出で立ちでケンドリックもびっくりのガッツを持ったテイラーの音楽は、きっとバージニアの友達が今も歌っているだろう。次会った時もいつもと同じように、テイラーの音楽を爆音で流しながら田舎道を走ることだろう。

 

音楽は当時の時間と場所に連れて行ってくれるもの

「なんでいつも音楽を聴いてるの?音楽って何がそんなにいいの?」と最近聞かれた。そして自分は「音楽はどんな場所、時間にも連れてってくれるから。」と答えた。

今もマイケルジャクソンの”Human Nature”を聴いたら、小学校の時に住んでいた近所の夜の風景をどこか思い出すし、トラヴィススコットの”Sicko Mode”を聴いたら渋谷のクラブを思い出して、P!nkの”Perfect”を聴くと友達が慰めてくれたバージニアの夕日が見えてくる。

何だか今までの思い出も持ち歩いてるみたいで、安心するし嬉しくなる。そんな自分の携帯に入っている曲たちを見ると、自分の人となりってこんなだよな…と思う。

 

そして今年のノミネート全体を見ると、「自分らしく」活躍したアーティストが目立っているように思う。

いかにユニークでいられるか、どれだけNOと言われても自分のアートを通している人たちの名前が心なしか例年よりも目立つように思う。

そんなユニークさを武器にできるのが、アメリカなんじゃないかと思わされた。

 

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