【アカデミック英語力】大学留学に必要な英語スキルとは?
これから大学留学を目指している方へ向けて、今回はお話します。留学前に準備すべき事として、大学で必要な英語スキルについてお話したいと思います。
「実際に大学留学に必要な英語レベルってどのくらいなの?」や「どうやって準備・勉強すればいいの?」という部分は、非常に不安であり気になるところだと思います。
ちなみに、大学留学は少し特殊でワーキングホリデーや語学留学を目指している方からすると、少しストイックすぎる内容になってしまうかもしれないので、ご参考までに読んでいただけると幸いです。
大学留学には様々な目的があると思います。音楽を学びたい方、研究をしたい方、英語力を伸ばしたい方、海外に住んでみたい方。目的は十人十色ですが、海外大学で勉強するからには、講義も教材も論文もすべて英語です。そのため、大学で好成績を収めるためには、当然それなりの英語力が必要になります。
小さい頃から英会話を習っていて、スムーズに英会話ができる方、英語の成績はいつも10で、模試の偏差値もとても良いという方もいらっしゃるでしょう。
海外大学を目指す方の中には、元々英語には自信がある方も多くいらっしゃると思いますが、大学で必要となるのは英語力だけではなく、プラスアルファが必要となります。
ちなみに私は、大学留学を意識し始めた高校生2年生頃からやっと本気で英語勉強を始めましたが、それまではほとんど英語力ゼロでした。
帰国子女でもないし、インターナショナルスクール出身でないどころか、英会話スクールも行ったことがありませんでした。
いわゆる生粋の「純ジャパ」だった私ですが、そんな平凡一般な私でも成長できた勉強法のコツなどを参考にして頂けたらと思います。
必要不可欠なのは「Academic English Skills」
まず、英語に限らず、ある程度外国語の学習経験がある方は理解されているかと思いますが、英語力には種類があります。
英会話スクールにも、日常英会話、ビジネス英会話、TOEIC英語などコースが分かれていますよね。このように、自分の目的に適した英語力習得に的を絞らないと、的外れな勉強となってしまうかもしれません。
もちろん大前提として、基礎の正しい英文法・語彙力などは、いずれを勉強するにしても共通して必要最低限必要です。大学留学を目指す高校生の方なら、基礎レベルをきちんと勉強していると思うので、基本的にそれで十分です。
それでは「大学で必要とされる英語の種類って何?」というと、必要なのは「Academic English Skills」(アガデミック英語力)です。
上記スキルは、大学で勉強するに不可欠とされ、単なるツールとしての英語より、さらにもうワンステップ上のレベルに到達する必要があります。
まずReadingは、大学では毎回ほとんどの授業で大量のReading Assignment(読解の宿題)が課されるので、教科書を速読し理解するインプットの作業が必要になります。
Listeningは、大学講義やプレゼンを聴きながらポイントをつかんでノートテイキングします。課題やテスト対策では、講義で記録した自分のノートが頼みの綱なので、非常に重要になってきます。
Speakingは、アメリカの大学ではとても重要な授業評価のポイントとなるプレゼンやディスカッションです。加えて、授業内での意見の発言も評価ポイントとなることもあります。
Writingは、小論文(Short Essay)から、期末課題(Final Essay)として成績の評価基準の大部分を占める論文の執筆。毎回小テスト(Quiz)が課される授業もあります。
こうした全ての学習プロセスをこなせるようになることがAcademic Englishのレベルに到達するということです。
従って、いくらTOEICを勉強して満点を出しても、英検2級を持っていても、映画を字幕無しで理解出来ても、「大学でついていける英語力に直結するか?」というと疑問符がつきます。
よく「英語ペラペラ?」という表現がありますが、いくらネイティブライクな発音で、ペラペラとスラングを並べる会話力があっても、それがAcademic English Skillsには直結しません。
逆に言えば、冒頭でご説明したように、語学留学・ワーキングホリデー等では、そこまで必要のないスキルかもしれません。
アカデミックな英語力とは、外国語としての英語というよりテクニックや学習スキルに近いです。
大学では、English as a second language(第2言語としての英語)という概念を捨ててしまった方がいいかもしれません。なぜなら、これは母国語での学習と同じことだからです。
例えば、同じ日本語ネイティブの複数の学生に小論文を書かせた時、正しい文法・構成、豊かな語彙で、教養レベルが高いと思わせる文章を書ける学生がいる一方で、文章構成に統一性がなく、語彙も乏しい学生もいますよね。
では、これらのスキルを身に着けるためにどうすれば何を勉強すればいいのか?自分のレベルを測るにはどうすればいいのか?ここで登場するのがTOEFLです。
TOEFLってどんなテスト?
TOEFLはReading, Listening, Speaking, Writingの4部で構成されていて、実際の大学・大学院で使用するレベルの学術専門用語・内容がベースとなっています。
問題文では、大学の教科書から抜粋された文章が使用されていたり、リスニングでは実際の大学講義のような音声が使用されたりします。
TOEFLが大学の入学条件となっているため、留学生は必然的に勉強しなければなりません。
しかし、TOEFL は実際に大学で実用的に活かせる英語に直結するため、勉強した内容がそのまま大学生活でも役に立つと言えます。
従って、TOEFLでハイスコアを出せれば、大学の授業も問題なくついていけるレベルだと自信を持っていいと思います。
入学スコアをクリアするために、TOEFLを勉強するという事もそうですが、TOEFLに沿って勉強することが大学授業についていくための英語力アップに直結すると言えます。
インプットもアウトプットも必要
日本の義務教育英語は、基本的にインプット中心です。そのため、「日本人は実践的な英語力が低い、またスピーキングに弱い。」とよく言われています。
一方で、「インプットは要らない、まずアウトプットをたくさんするところから始めよう!」という英会話メソッドも最近は流行っているかと思います。
いろんな意見が飛び交う中、「どっちなんだろう?」と混乱してしまう方もいるかと思いますが、私が思うには大学で必要なのはズバリ両方です!
インプットの面においては、義務教育英語の範囲をはるかに越える量の語彙力が必要です。また、分厚い教科書・論文を速読し、理解するためには、正しい文法知識も必要です。これがなければ、まず授業を理解する面で苦戦します。
アウトプットの面では、講義内容について自分の意見を口頭で発言したり、ディスカッションをしたり、または論文形式の課題として提出することが多くあります。海外大学の授業では、ただ座って講義を聴いて、テストを受けるだけではないのです。
アメリカの大学ではとにかく皆積極的に発言しまくり、討論しまくります。授業内でのちょっとした発言も、教授へのアピールになりますし、実際に評価対象となることがあります。
加えて、論文形式の課題は大多数の授業で出されて、成績の大部分を占めることが多いです。これは、インプット重視で教育されて来た多くの日本人留学生にとっては、弱い部分だと思います。
ただ、アウトプットだけ出来ればいいということではありません。文法重視の日本人と違って、欧州・南米系の留学生はベラベラと早口で発言するので圧倒されます。しかし、彼らの英語は文法が結構適当で、記述ではそれがとても顕著に現れ、「スペルも文法も滅茶苦茶!」というのは結構目の当たりにします。
単なるコミュニケーションを目的とした英会話学習においては、「文法・スペルなどは気にせず、とにかく自信をもって話しましょう!」という理論も正しいと思いますが、大学ではそうはいきません。
大学では内容はもちろんのこと、「文法・文章構成が整っていること」や「豊かな語彙力・表現力での説明」が必要とされ、教養ある学生としてグレードの高い論文を要求されます。
つまり、まず文法や文章構成が整っていなければ、論文内容の評価以前の問題です。
例えば、素晴らしい発明をした学者でも、英語での論文発表を出来ない。または文章力・表現力の欠如等で、研究内容を十分に論文で伝えきれていなければ、世界の人に目を通してもらえず、評価すらしてもらえないのです。もったいないことですよね。
最初は大変なことですが、Academic English Skillsを身に着けることで、圧倒的に学びの可能性が広がるのです。
例えば、心理学を学びたいと思っていれば、心理学分野においてアメリカは圧倒的先進国です。日本語しか読めなければ、日本語の文献しか読めません。
しかし、英語で読み書きが出来れば、何倍以上もの文献へのアクセスが可能になりますし、学びの機会がぐっと広がります。
そして世界共通語である英語で論文が書ければ、それだけ多くの人へ自分の研究・情報を発信できるのです。
大学で結果を収めるためには、どちらか片方だけではなく、インプットもアウトプットも両方の力をつけるべきだと言えます。
英語学習は筋トレ!私のオススメ勉強法
それでは私が実践していた英語勉強方法についてご紹介したいと思います。
私も、日本で英語学習をしていたころは、TOEFLのスコアを上げるということで、市販のTOEFLのテキストを使用して一般的な問題演習をしたり、単語帳を覚えたりしていました。
しかし、それだけではベーシックすぎるので、市販のテキストを使用したテスト対策用勉強法以外の、プラスアルファの勉強法について触れたいと思います。
【Reading・Writing編】英字新聞・雑誌を活用してSummary&Opinionを書こう
私は、Wall Street Journal、Japan Times、Newsweekをよく読んでいました。これらは、いずれもウェブ上で無料購読できる記事も一部あります。(有料購読の場合もあります。)
時事に詳しくなれるし、受験英語では習わないボキャブラリー・表現が豊富なので英語勉強にはもってこいです。
ここで重要なのは、読んで終わりではなく、アウトプットすること。
速読して、要約(Summary)し、自分の意見(Opinion)を記述します。
このSummary&Opinionの作業を、ルーティーンワークのように毎日行っていました。
これは、実際に大学でもReading Assignmentと一緒に、課題として出されることがよくありました。
要約(Summary)をする意味は、自分が内容を理解しているか確かめるためです。
記事内容を理解し、自分の言葉で分かりやすく文章化することが出来て、初めて内容を理解したというになります。要約のパラフレーズの作業によって、語彙力も増やすことが出来ます。
また、要約だけに留まらず、その記事に対する自分の意見(Opinion)を書く作業を必ずセットで行います。ここでは、自分の知識・教養を総動員して、自らの立場・意見を考えて発信するCritical Thinkingのスキルが非常に重要です。
教科書を読んで、講義を聴いて終わりではなく、それに対する自分の意見・提案などを論じる力が大学では必要なのです。もちろん、正しい文章構成(English Composition)をきちんと身に着け、ルールに従って書くことが重要です。
新聞記事や経済誌のコラムには、世間で物議をかもしている時事トピックが豊富です。
例えば、「カリフォルニア州での大麻合法化について」「アメリカの移民問題について」などのトピックについて、知識人、コラムニストが個々の意見を書いています。
こういったトピックの内容を理解し、賛成意見と反対意見(Pros and Cons)を整理し、自分は賛成反対どちらの立場なのか、などを考えるプロセスを踏む練習はとても学習に効果的です。
【Listening編】Podcast、YouTubeなどを活用
今のネット社会は、豊富な英語音声・動画に無料でアクセスできるありがたい環境です。この環境を十二分に活用しましょう。
私はYouTubeで、ニュースを見たり、大学の無料公開講義を視聴したりしていました。Stanford大学や、Harvard大学など一流大学の講義なども、一時公開されていて視聴することができました。
また、世界中の著名なビジネスマン、文化人らの講演が視聴できるTED(https://www.ted.com/)もお勧めです。
しかし、ただ聴き流すだけでは英語力アップに繋がりません。ここでもアウトプット作業が重要です。
まずは、大学の授業と同じように、講義を聞きながら同時進行でノートテイキングをする練習をしてみましょう。知らなかった単語や表現があれば、しっかり書き留めておいてあとで調べましょう。
英語の音声が聴き取れない多くのケースは、発音や速さというよりも、分からない単語・表現が盛り込まれているからです。一度で聴き取りが出来なければ、何度でも聴き返します。聴き終えた後に、Reading時と同様にSummary&Opinionにまとめてみましょう。
【Speaking編】20分速読→即興でプレゼン
これは2人以上、自分以外のパートナーと組んで行うことをお勧めします。この方法は、Reading、Writing、Speaking、を合わせて鍛えることができる勉強方法です。
新聞記事など、1つの記事に対し時間を決めて速読し、お互いに即興でプレゼンをし合います。自分が理解するだけに終わらず、きちんと相手に伝わるように内容を要約し説明しなければいけません。
読んだ記事の内容・表現を自分の言葉でパラフレーズすることで、記事で使われている語彙や表現を自分のものにすることができます。
そして相手に伝えなければいけないということで、頭をフル稼働させて、分かりやすく説明するプレゼンスキルが身に着きます。
TOEFLのスピーキングセクションも、聴いた直後に設問に口頭で答えるという形式なので、十分TOEFLの練習にもなると思います。
実際に大学の授業でも、いきなり教授に指名されて発言したり、即興でプレゼンしたりする場面が多くあり、それが授業評価点にも繋がるので、こうして即興で発言する練習は重要です。
ただ、少し難易度が高めの勉強方法なので、最初は易しい内容のトピックから始めてみるといいかもしれません。
【Vocabulary編】日英辞書は封印する
分からない単語や表現に遭遇した時、英英辞書、または類語辞典(Thesaurus)で調べるようにしましょう。
私はOxfordのペーパーバック版を使用していましたが、今はスマホ上のアプリでも無料から有料なものまで、様々な種類のものがあるようですね。
単語を覚える上で重要なのは、文脈とセットで使い方を理解することです。
文脈の中で、その単語のニュアンスや適切な使い方を学ぶことができます。そうして初めて、脳に焼き付いて、自分のモノにすることができると思います。
単語の説明文を読むのと同時に、その単語を使用した例文を覚え、自分で英作文をしましょう。
加えて、類語辞典(Thesaurus)を活用すれば、1つの単語を覚える際、同時に他の表現や類義語(synonym)も覚えることができて一石二鳥です。
色々ご説明しましたが、英語学習は筋トレのようなものです。毎日ある一定の量と、継続することが大事です。
インプットもアウトプットも、バランスよく満遍なく演習しましょう。コツコツ毎日継続することにより、自分のものになっていきます。
個人差はあれど、努力すれば必ず身につきます。
重要なのは中身!「英語ペラペラ」人間になるな
大学に進学するにあたり、十分なトレーニングを重ねて英語力をつける事は必要です。しかし、あくまで大事なのは「内容」(Contents)という事を覚えておいてください。
私は大学時代、応用言語学(Applied Linguistics)を専攻しており、第2言語としての英語教育分野において素晴らしい研究をされている教授のもとで勉強していました。
その教授の言葉で印象的だったのは、「単なる”ペラペラ英語”には価値がない」という一言でした。
どういうことかというと、ペラペラと流暢にスラング混じりにトークが出来たり、ネイティブライクな発音で英語を話せたりしても、発信する内容・知識が薄っぺらいのでは意味が無く、話す「内容」(Contents)がより重要であるということです。
結局は、その人の「知識」・「学び」・「思考」を含めた中身が重要なのです。ひと昔前と比較すると、今や英語は世界共通語として、より多くの人々が当たり前のようにツールとして扱う事ができるような世の中になってきています。
つまり、現在のような国際社会では、その人自身の「真価」がより重要視されてくると言っても良いでしょう。
アメリカの大学のように、多様な人種・文化・価値観が共存する場所では、より一層「個」の価値が問われます。
アメリカに限らず、レベルの高い大学へ行けば、学業熱心、個性豊か、そしてバイタリティに溢れる学生達が、国内外から数多く集結しているはずです。
私のように純ジャパで、現地学生と比較すると最初は語学でハンデがあると思う方も、語学習得と同時に、自分の「個」を磨いてください。
留学において重要なのは、一生懸命学び、知識を蓄え、思考を育て、1人の国際人として、相手と正々堂々と向き合い、コミュニケーションをとることであると私は思います。